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AMD Radeon RX 9060 XT・Threadripper 9000シリーズ発表:COMPUTEX 2025で次世代ゲーミング&AIワークステーションを刷新

AMD Radeon RX 9060 XT・Threadripper 9000シリーズ発表:COMPUTEX 2025で次世代ゲーミング&AIワークステーションを刷新 - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-05-22 09:09 by admin

AMDは2025年5月21日、台湾・台北市で開催されたCOMPUTEX 2025において、次世代のゲーミングとAI体験を実現する新製品を発表した。主な製品は以下の通りである。

Radeon RX 9060 XT

RDNA 4アーキテクチャを採用した新型GPUで、32コンピュートユニット搭載。8GBモデル(299ドル)と16GBモデル(349ドル)の2種類が用意され、発売日は2025年6月後半を予定している。ブーストクロック最大3.13GHz、TBP 150W(8GBモデル)/160W(16GBモデル)という仕様だ。

前世代と比較してレイトレーシングのスループットが2倍に向上しており、AMDのベンチマークによると、NVIDIAのRTX 5060 Tiと比較して40ゲーム平均で約6%高いパフォーマンスを発揮するという(フレーム生成技術を使用しない場合)。

FSR 4による機械学習対応のアップスケーリング機能を搭載し、FP8データタイプとstructured sparsityをサポート。今年後半には「FSR Redstone」という新技術も投入予定である。

Radeon AI PRO R9700

AIパワードワークステーション向けに設計されたプロフェッショナル向けGPU。RDNA 4アーキテクチャと第2世代AMDのAIアクセラレータを搭載し、32GBのGDDR6メモリとPCIe Gen 5に対応している。

前世代のRadeon PRO W7800と比較して最大4倍のAIスループットを実現。Linux上でのAMD ROCmをサポートし(Windows対応は近日公開予定)、最大4枚のGPUを1台のワークステーションに搭載可能だ。

発売時期は2025年7月、価格は未発表。ASRock、ASUS、GIGABYTE、PowerColor、Sapphire、XFX、Yestonなどのパートナー企業からモデルが発売される予定である。

Ryzen Threadripper 9000シリーズ

Ryzen Threadripper PRO 9000 WXシリーズ(ワークステーション向け)

Zen 5アーキテクチャを採用し、4nmプロセスで製造。最上位モデルThreadripper PRO 9995WXは96コア/192スレッド、ベースクロック2.5GHz、ブーストクロック5.4GHz、TDP 350Wという仕様だ。

その他のモデルとして、9985WX(64C/128T)、9975WX(32C/64T)、9965WX(24C/48T)、9955WX(16C/32T)、9945WX(12C/24T)がラインナップされている。

使用可能PCIeレーン数は128(PCIe 5.0)、オクタチャネル(8チャネル)DDR5-6400メモリに対応し、L3キャッシュは最大384MB。AMD PRO Technologiesを搭載している。

Cinebench 2024のベンチマークでは、前世代のThreadripper PRO 7995WXより10〜20%、IntelのXeon W9-3595Xより約220%高速という結果が出ている。

Ryzen Threadripper 9000シリーズ(エンスージアスト向け)

最上位モデルThreadripper 9980Xは64コア/128スレッド。その他のモデルとして、9970X(32コア)、9960X(24コア)が用意されている。

クアッドチャネル(4チャネル)DDR5-6400メモリに対応し、使用可能PCIeレーン数は48(PCIe 5.0)となっている。

両シリーズとも2025年7月発売予定で、価格は未発表である。前世代の7995WXが約10,000ドルであったことから、同程度の価格設定になると予想される。

References:
文献リンクAMD unveils new Threadripper CPUs and Radeon GPUs for gamers at Computex 2025

【編集部解説】

今回のAMDの発表は、ハイエンドからミッドレンジまで幅広い市場を対象とした総合的な製品戦略の一環と言えます。特に注目すべきは、AMDがゲーミング市場とプロフェッショナル市場の両方で攻勢をかけている点です。

まず、Radeon RX 9060 XTについて見てみましょう。AMDはこの製品を「350ドル未満で入手可能な最速のグラフィックスカード」と位置づけていますが、これはNVIDIAのRTX 5060 Tiと直接競合するポジションです。AMDの主張によると、AIアップスケーリングやフレーム生成を使用しない場合、40ゲーム平均で約6%高いパフォーマンスを発揮するとのことですが、この数値は独自のベンチマーク結果であることに留意する必要があります。

RDNA 4アーキテクチャの採用により、前世代と比較してレイトレーシング性能が2倍になったことは大きな進化です。これにより、より現実的な照明効果や反射、影の表現が可能になり、ゲーム体験の質が向上することでしょう。また、FSR 4による機械学習対応のアップスケーリング技術は、NVIDIAのDLSSに対抗する技術として期待されています。

価格設定も興味深いポイントです。8GBモデルが299ドル、16GBモデルが349ドルという価格は、現在のグラフィックスカード市場では比較的リーズナブルと言えるでしょう。特に16GBモデルは、NVIDIAのRTX 5060 Ti(8GB、379ドル)と比較して、メモリ容量が2倍でありながら30ドル安いという点が魅力です。

また、今年後半に導入予定の「FSR Redstone」は、FSRのレイトレーシング品質向上やアップスケール、フレーム生成などを、DLSSのようにAI機械学習ベースで効率化する新技術です。これはRDNA 4世代のAIアクセラレータのハードウェアに最適化された機能であり、AMDのAI戦略の重要な一部と言えるでしょう。

次に、Radeon AI PRO R9700についてです。この製品は、ローカルでのAI処理能力を求めるプロフェッショナル向けに設計されています。32GBの大容量メモリとPCIe Gen 5対応により、大規模言語モデル(LLM)の推論やファインチューニングといった、従来はクラウドでしか実行できなかった処理をローカル環境で行うことが可能になります。

Threadripper 9000シリーズに関しては、AMDがハイエンドワークステーション市場でのリーダーシップを強化する動きと見ることができます。最上位モデルの9995WXは96コア/192スレッドという圧倒的なスペックを誇り、Cinebenchのベンチマークでは、IntelのXeon W9-3595Xと比較して約220%のパフォーマンスを発揮するとされています。

Zen 5アーキテクチャの採用により、前世代と比較して10〜20%のパフォーマンス向上を実現していますが、コア数やキャッシュ容量は前世代と同じであることから、アーキテクチャの改良による効率化が主な進化点と言えるでしょう。

価格については公式発表はまだありませんが、前世代の7995WXが約10,000ドルであったことを考えると、同程度の価格設定になると予想されます。これは一般消費者には手が届かない価格ですが、プロフェッショナル向けワークステーションとしては、提供される性能を考慮すると妥当な範囲と言えるかもしれません。

これらの製品が市場に与える影響としては、まずゲーミング市場では、Radeon RX 9060 XTによりミッドレンジセグメントでの競争が活性化することが予想されます。NVIDIAが長らく独占してきたこの市場に、AMDが競争力のある製品を投入することで、消費者にとっては選択肢が増え、価格競争が促進される可能性があります。

プロフェッショナル市場では、Threadripper 9000シリーズとRadeon AI PRO R9700の組み合わせにより、ローカルでのAI開発環境の構築が容易になります。これまでクラウドに依存していたAI開発やトレーニングの一部をオンプレミスで行えるようになることで、データプライバシーの向上やレイテンシの削減といったメリットが生まれるでしょう。

長期的な視点では、AMDがCPUとGPUの両方で競争力のある製品を提供し続けることは、市場全体の技術革新を促進する効果があります。特にAI処理能力の向上は、今後のコンピューティング環境において重要な要素となるでしょう。

ただし、潜在的なリスクとしては、これらの高性能プロセッサやGPUの消費電力の問題が挙げられます。Threadripper 9000シリーズは350Wという高いTDPを持ち、複数のGPUを搭載したシステムでは、電力消費と発熱管理が大きな課題となるでしょう。

総じて、AMDの今回の発表は、同社がIntelやNVIDIAといった競合他社に対して、幅広い市場セグメントで積極的に挑戦する姿勢を示すものと言えるでしょう。特にAI処理能力の強化は、今後のコンピューティング環境において重要な差別化要因となることが予想されます。

【用語解説】

RDNA 4アーキテクチャ:
AMDの最新グラフィックスプロセッサアーキテクチャ。前世代と比較してレイトレーシング性能が2倍になり、AI処理能力も強化された。

Zen 5アーキテクチャ:
AMDの最新CPUアーキテクチャ。前世代のZen 4と比較して10〜20%のパフォーマンス向上を実現している。

レイトレーシング:
光の反射や屈折をシミュレートしてリアルな映像を生成する技術。従来の描画方法と比べて、より自然な影や反射を表現できる。現実世界の光の動きを忠実に再現するため、ゲームの世界がより現実的に見える。

FSR (FidelityFX Super Resolution):
AMDの画像アップスケーリング技術。低解像度で描画した画像を高解像度に引き上げることで、パフォーマンスを向上させる。低価格の眼鏡でも高級レンズのような視界を得られるようなイメージである。

FSR Redstone:
FSR 4を拡張する新技術。DLSSのようにAI機械学習ベースでレイトレーシング品質向上やアップスケール、フレーム生成などを効率化する。RDNA 4世代のAIアクセラレータのハードウェアに最適化された機能である。

TOPS (Trillion Operations Per Second):
1秒間に実行できる兆単位の演算回数。AI処理性能を表す指標として使用される。1秒間に何兆回の計算ができるかを示す数値である。

NPU (Neural Processing Unit):
ニューラルネットワーク処理に特化したプロセッサ。AI処理を効率的に行うための専用ハードウェア。スマートフォンの音声認識や画像処理などのAI機能を支える。

PCIe Gen 5:
コンピュータの内部接続規格の最新世代。前世代のPCIe Gen 4と比較して2倍の帯域幅を提供する。

TBP (Total Board Power):
グラフィックスカード全体の消費電力。冷却設計や電源の選定に影響する重要な指標である。

【参考リンク】

AMD公式サイト(外部)
AMDの製品情報、サポート、企業情報などを提供する公式サイト。

AMD Radeon RX 9060 XT製品ページ(外部)
AMDのRadeon RX 9060 XTの詳細情報を提供する公式ページ。

【参考動画】

【編集部後記】

皆さんは次期PCアップグレードの計画はありますか?AMDの新製品発表を見ると、ミッドレンジからハイエンドまで選択肢が広がっています。特にRadeon RX 9060 XTは、16GBモデルがNVIDIAのRTX 5060 Tiより30ドル安くてメモリ容量は2倍という価格と性能のバランスが魅力的ですね。普段どのようなワークロードでPCを使用されていますか?ゲームなのか、クリエイティブ作業なのか、あるいは最近注目のAI関連の処理なのか。用途によって最適な選択は変わってきます。SNSでぜひ皆さんの次期構成プランや、これらの新製品に対する期待をシェアしていただければ嬉しいです。

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TaTsu
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