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Intel、EMIB-T技術でAI向けチップパッケージング革新 – 10,000平方ミリメートルのシリコン統合を実現

Intel、EMIB-T技術でAI向けチップパッケージング革新 - 10,000平方ミリメートルのシリコン統合を実現 - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-06-09 08:13 by admin

Intelは2025年6月3日から6日にかけて開催されたIEEE電子部品・パッケージング技術会議(ECTC)で、AI向けの大型プロセッサを可能にする新しいチップパッケージング技術3つを発表した。

第1の技術はEMIB-T(埋め込み型マルチダイ相互接続ブリッジ-T)で、従来のEMIBにシリコン貫通ビア(TSV)と銅グリッドを追加し、38個以上のEMIB-Tブリッジを使用して12個以上のフルサイズシリコンダイに相当する10,000平方ミリメートルのシリコンを単一パッケージに統合できる。

第2の技術は低熱勾配熱圧縮接合で、シリコンと基板の熱膨張差を管理し、EMIBへの接続密度を25マイクロメートルごとに1つまで向上させる。第3の技術は分割型統合ヒートスプレッダーで、大型パッケージの熱除去効率を向上させる。

これらの技術により21,000平方ミリメートル(クレジットカード4.5枚分)を超えるパッケージサイズが実現可能となる。

Intel基板パッケージング技術担当副社長のRahul Manepalliは、これらの技術は現在R&D段階にあり、Intel FoundryがTSMCの先進パッケージング技術と競争するため今後数年以内の実用化が必要だと述べた。

From: 文献リンクIntel Upgrades Chip Packaging for Bigger AI A triple-tech combo can pile 10,000 square millimeters of silicon into one package

【編集部解説】

今回のIntelの発表は、単なる技術改良ではなく、半導体業界の構造的変化を象徴する重要な転換点です。ムーアの法則の限界が現実となる中、「More than Moore」時代の主戦場は先進パッケージング技術に移行しています。

EMIB-T技術の核心は、従来のEMIBが抱えていた電力供給の根本的な問題を解決した点にあります。従来の水平配線による電力供給では電圧降下が発生していましたが、TSV(シリコン貫通ビア)による直接電力供給でこの制約を克服しました。これにより、次世代HBMメモリとの高速通信が実現可能となります。

この技術革新が持つ意味は、AI計算の性能向上だけにとどまりません。21,000平方ミリメートルという巨大パッケージサイズの実現により、従来は不可能だった規模のシステム統合が可能になります。これは、データセンターの設計思想そのものを変える可能性を秘めています。

一方で、潜在的なリスクも存在します。パッケージサイズの巨大化は製造歩留まりの低下を招く可能性があり、コスト上昇要因となりかねません。また、大型パッケージの発熱制御は、システム全体の信頼性に新たな課題をもたらします。

競争環境の観点では、TSMCのCoWoS技術との直接対決が本格化します。Intel Foundryの成否は、これらの技術を今後数年以内に量産レベルで実用化できるかにかかっています。先進パッケージング市場の急成長が見込まれる中、この分野での優位性確保は各社の生存戦略に直結します。

長期的には、この技術進歩がチップレット設計の標準化を加速し、半導体エコシステム全体の再編を促進するでしょう。設計から製造、パッケージングまでの価値連鎖において、システムレベル統合能力を持つ企業が主導権を握る時代の到来を告げています。

【用語解説】

EMIB(Embedded Multi-die Interconnect Bridge)
複数のチップダイを高密度で接続するIntelの2.5Dパッケージング技術。有機基板内に小さなシリコンブリッジを埋め込み、隣接するダイ間の接続密度を向上させる。

TSV(Through-Silicon Via)
シリコンウェハーやダイを垂直に貫通する電気接続。3Dチップスタッキングや電力供給の効率化に使用される高性能相互接続技術。

熱圧縮接合(Thermal Compression Bonding)
マイクロメートルスケールのはんだバンプを加熱・加圧してシリコンダイを基板に接合する技術。大型パッケージでの歩留まり向上が課題。

ヒートスプレッダー
チップから発生する熱を効率的に除去するための金属製放熱部品。大型パッケージでは平坦性の維持が重要。

チップレット
単一機能に特化した小型チップ。複数のチップレットを組み合わせて大型プロセッサを構成する設計手法。

ECTC(Electronic Components and Technology Conference)
IEEE主催の電子部品・パッケージング技術に関する国際会議。毎年最新の技術動向が発表される。

【参考リンク】

Intel Corporation(外部)
半導体大手。プロセッサやファウンドリサービスを提供し、EMIB技術の開発元として先進パッケージング分野をリード

Intel Foundry(外部)
Intelのファウンドリ事業部門。顧客向けに先進プロセス技術とパッケージングサービスを提供

IEEE Spectrum(外部)
IEEE発行の技術メディア。半導体、AI、エンジニアリング分野の最新技術動向を専門的に報道

TSMC(外部)
世界最大の半導体ファウンドリ。CoWoS技術でIntelと先進パッケージング分野で競合

【参考動画】

【参考記事】

Intel details new advanced packaging breakthroughs(外部)
Tom’s Hardware記事。EMIB-T技術の詳細と熱管理技術について技術的観点から解説

Intel Foundry Gathers Customers and Partners(外部)
Intel公式プレスリリース。2025年4月のDirect Connectイベントでの技術ロードマップ発表内容

Intel Unveils EMIB-T Advanced Packaging Technology(外部)
EMIB-T技術の電力供給改善とHBM4サポートについて詳細に分析した記事

【編集部後記】

AI向け大型チップの進化は、私たちの生活や産業にどのような変化をもたらすでしょうか?

クレジットカード4枚半もの巨大なチップパッケージが実現する未来のコンピューティングに、皆さんはどんな可能性を感じますか?この記事をきっかけに、半導体技術の最前線に目を向けていただければと思います。

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TaTsu
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