Last Updated on 2024-12-21 17:32 by admin
米民間宇宙企業Axiom Spaceは、2023年12月19日、自社の商業宇宙ステーション建設計画の組立順序を変更することを発表した。
主な変更点と事実関係は以下の通り:
- 当初計画:居住モジュール1(AxH1)を最初に設置
- 変更後計画:ペイロード電力熱制御モジュール(AxPPTM)を最初に設置
設置予定モジュールの順序:
- ペイロード電力熱制御モジュール(AxPPTM)
- 居住モジュール1(AxH1)
- エアロック
- 居住モジュール2(AxH2)
- 研究製造施設(AxRMF)
重要な日程:
- AxPPTMの構造体完成:2025年秋以降
- Axiomステーション独立運用開始目標:2028年
- ISS軌道離脱モジュール準備期限:2029年
- ISS退役予定:2030年
関連する企業・機関:
- 製造担当:ターレス・アレニア・スペース(イタリア・トリノ)
- 内部装備担当:Axiom Space(米国・ヒューストン)
- 軌道離脱モジュール担当:SpaceX
この計画変更は、ISSの早期退役の可能性や、ロシアが2028年以降のISS運用継続を未確約であることを考慮したものである。現在ISSではロシア区画で空気漏れが発生しており、2024年に入って漏洩率が上昇している。
from:Axiom Space shuffles space station assembly sequence – to get it standalone sooner
【編集部解説】
商業宇宙ステーション開発の新たな展開
Axiom Spaceの今回の計画変更は、民間宇宙ステーション開発における重要な転換点となる可能性があります。
この変更の背景には、ISSの老朽化問題があります。特にロシア区画での空気漏れの深刻化は、ISSの運用期間に大きな不確実性をもたらしています。
技術的な意義
新しい組立順序では、電力・熱制御モジュール(AxPPTM)を先行させることで、早期の独立運用を可能にします。これは単なる順序の変更以上の意味を持っています。
AxPPTMは宇宙ステーションの「心臓部」とも言える存在です。このモジュールを最初に設置することで、独自の電力供給システムと熱制御機能を確保し、ISSへの依存度を大幅に低減することができます。
商業宇宙開発への影響
この計画変更は、商業宇宙ステーション市場に大きな影響を与える可能性があります。2028年という早期の独立運用開始は、他の民間企業の宇宙開発計画にも影響を与えるでしょう。
特に注目すべきは、研究開発施設としての機能です。AxPPTMには8つのサイエンスラックが搭載される予定で、これにより微小重力環境での実験や製造が可能となります。
リスクと課題
しかし、この計画には課題もあります。モジュール間のドッキングや、独立飛行時の安定性確保など、技術的なハードルは依然として高いものがあります。
また、イタリアのターレス・アレニア・スペースによる製造から、ヒューストンでの内部装備まで、国際的なサプライチェーンの管理も重要な課題となります。
将来への展望
この計画変更は、より広い意味で宇宙の商業利用の加速を示唆しています。ISSの退役後も継続的な軌道上の人間の存在を確保することは、宇宙開発の持続可能性という観点から極めて重要です。
特に、研究開発や製造の場としての利用は、地上では実現できない新素材の開発や医薬品の製造など、産業界に新たな可能性をもたらす可能性があります。
日本への影響
日本の宇宙開発にとっても、この動きは重要な意味を持ちます。JAXAはISSでの「きぼう」運用で培った技術や知見を、今後の商業宇宙ステーションでどのように活かしていくのか、新たな戦略の検討が必要となるでしょう。