Last Updated on 2025-01-02 18:39 by admin
米航空宇宙企業ブルーオリジン(Blue Origin)は2024年12月27日、新型大型ロケット「ニューグレン(New Glenn)」のエンジン始動テストを実施し、成功しました。
テスト概要と成果
フロリダ州ケープカナベラル空軍基地 発射台36(LC-36)において、BE-4エンジン7基による24秒間の燃焼試験が行われ、うち13秒間は100%推力での運転を達成。地上システムとの完全統合状態での試験により、全ての目標を達成しました。
ニューグレンの仕様
全長98メートルの機体に、第1段にBE-4エンジン7基(総推力380万ポンド)、第2段にBE-3Uエンジン2基(真空中推力32万ポンド)を搭載。7メートルのペイロードフェアリングを備え、第1段は最低25回の再使用が可能な設計となっています。
今後の予定
初号機(NG-1)は2025年1月6日に打ち上げを予定しており、ブルーリング・パスファインダーと呼ばれる技術実証機を搭載します。
from:Blue Origin’s New Glenn Rocket Completes Integrated Launch Vehicle Hotfire
【編集部解説】
ニューグレンの開発は、宇宙開発における重要な技術的進歩を示しています。BE-4エンジンは液化天然ガス(LNG)を燃料とする酸素過剰ステージド燃焼サイクルエンジンとして、世界最強クラスの性能を誇ります。7基のBE-4エンジンは合計で約380万ポンド(約172万kg)の推力を生み出すことができます。
このエンジンの特筆すべき点は、従来のケロシン系燃料と比べてLNGがより環境に優しく、高性能という点です。また、BE-4エンジンはすでにULAのヴァルカンロケットにも採用されており、信頼性の高さが実証されています。
打ち上げ準備状況
今回のホットファイアテストは、単なるエンジン点火試験以上の意味を持ちます。地上システムとの完全統合状態での試験であり、打ち上げ当日の運用手順の確認も含まれていました。24秒間の燃焼のうち13秒間は100%推力での運転を達成し、自己加圧システムの検証にも成功しています。
FAAからの打ち上げライセンス取得も完了し、初号機の打ち上げは2025年1月6日が予定されています。初飛行では「ブルーリング・パスフファインダー」と呼ばれる実証機が搭載される予定です。
市場への影響
ニューグレンの運用開始は、商業宇宙輸送市場に大きな影響を与えると予想されます。SpaceXのファルコン9に対する強力な競合となり、打ち上げサービスの選択肢が広がることで、市場の活性化が期待できます。
特に注目すべきは、ペイロード能力が地球低軌道で45トン以上という大型ロケットであることです。これは将来の宇宙ステーション建設や月・火星ミッションにおいて重要な役割を果たす可能性があります。
今後の展望
ブルーオリジンは、ニューグレンを最低25回再使用可能なロケットとして設計しています。この再使用性は打ち上げコストの大幅な削減につながり、宇宙アクセスの民主化をさらに推し進めることが期待されます。
また、ブルーリング・プラットフォームの実証は、将来の宇宙インフラ整備に向けた重要なステップとなります。これは宇宙での輸送機能や宇宙ステーション、衛星バスなど、多様な用途に展開される可能性を秘めています。