2024年12月25日、チリのNASA自動望遠鏡システム(ATLAS)により、新たな小惑星「2024 YR4」が発見された。質量2億2000万キログラム、直径40~90メートルの岩石質小惑星で、秒速17.32キロメートルで移動している。
この小惑星は2032年に地球に接近し、衝突確率は1.3%とされている。現在、トリノ衝突危険度階級でランク3(現在最高ランク)に位置付けられている。
衝突した場合、TNT火薬800万トン相当(広島原爆の約500倍)の爆発が予測され、被害範囲は半径約50キロメートルに及ぶ可能性がある。予想される通過経路は、東太平洋、南米北部、大西洋、アフリカ、アラビア海、南アジアの上空とされている。
from:Asteroid as wide as 886 cans of spam may hit Earth in 2032
【編集部解説】
小惑星2024 YR4の発見と観測状況について、より詳しく解説させていただきます。
まず注目すべきは、この小惑星の観測履歴です。2024年12月25日に最初の前発見(プリカバリー)観測がなされ、その2日後の12月27日にチリのATLAS望遠鏡によって正式に発見されました。この発見のタイミングは、小惑星が地球に最接近した直後だったことが分かっています。
衝突確率の評価については、観測が進むにつれて精度が向上しています。当初は1860分の1だった衝突確率が、観測期間が34日に延びた2025年1月28日時点で83分の1(約1.2%)まで上昇しました。これは決して高い確率ではありませんが、現在知られている小惑星の中で最も高い衝突確率となっています。
小惑星の物理的特徴についても興味深い点があります。NASAの推定によると、表面の反射率(幾何アルベド)を0.154と仮定した場合、直径は約55メートルとされています。また、密度を立方センチメートルあたり2.6グラムと仮定すると、質量は約2.3億キログラムと計算されています。
潜在的な影響については、衝突した場合、TNT火薬換算で約809万トンの爆発エネルギーを放出する可能性があります。これは広島原爆の約500倍に相当しますが、地球規模の破壊をもたらすものではありません。
現在、この小惑星は地球から離れつつあり、2025年4月までは観測可能ですが、その後は2028年まで観測できなくなる見込みです。この期間、世界中の天文台が協力して観測を続け、軌道の精密な計算を行っています。
今後の展望と対策
重要なのは、これまでも同様の「リスク」が指摘された小惑星が多数存在し、追加観測によってそのほとんどが危険性なしと判定されてきた点です。2004年に発見されたアポフィスの例のように、当初は危険とされた小惑星も、観測データの蓄積により安全であることが確認される可能性が高いと考えられます。
国際的な対応体制も整っており、国際小惑星警戒ネットワーク(IAWN)や宇宙ミッション計画諮問グループ(SMPAG)が協力して監視を続けています。必要に応じて、小惑星の軌道を変更するための対策も検討される可能性があります。
このような事例は、人類の宇宙監視能力と国際協力体制の重要性を改めて示すものといえるでしょう。