月までの距離に対し、火星までは833倍の距離がある。火星への最適な打ち上げウィンドウは18ヶ月ごとに訪れ、最短でも6ヶ月の航行時間が必要となる。一方、月への打ち上げは毎月可能だ。
SpaceXは2026年に5機の無人スターシップを火星に送る計画を発表。これに対しNASAは、アルテミス2号の有人飛行を2026年に予定している。ルナー・ゲートウェイの運用開始は2027年以降となる見込みだ。
from:Moon or Mars? The US Might Face a Tough Choice for Future Missions
【編集部解説】
NASAのアルテミス計画とSpaceXの火星計画が重要な転換点を迎えています。両者の進展状況と今後の展望について、innovaTopiaの視点から解説させていただきます。
アルテミス計画の現状
アルテミス計画は、当初の予定から大幅な遅延を重ねています。2024年12月の発表では、有人月周回飛行のアルテミス2号が2026年4月に、月面着陸のアルテミス3号が2027年半ばに延期されました。この遅延の主な理由は、オリオン宇宙船の熱シールドの問題です。
SpaceXの野心的な火星計画
一方、SpaceXは2026年の火星移動の機会を利用して、5機の無人スターシップを火星に送る計画を発表しています。この計画が成功すれば、早ければ4年後には有人火星ミッションも可能になるとしています。
技術的な課題
スターシップの開発は着実に進んでいますが、まだいくつかの重要な技術的課題が残されています。特に、軌道上での燃料補給技術と火星着陸技術の確立が不可欠です。これらの技術なしには、火星への往復飛行は実現できません。
月か火星か、それが問題
現在のNASAは、月面基地を経由して火星を目指す段階的なアプローチを取っています。しかし、この方針には効率性の観点から疑問の声も上がっています。月と火星では環境が大きく異なるため、月での経験が必ずしも火星探査に直接活かせるとは限らないためです。
今後の展望
2025年は、スターシップの開発において重要な年となります。SpaceXは最大25回の試験飛行を計画しており、これらの成功が火星探査の実現可能性を大きく左右するでしょう。
この状況は、宇宙開発の新しい時代の幕開けを示唆しています。政府機関と民間企業の役割分担が変化し、より効率的で野心的な宇宙探査が可能になるかもしれません。特に、スターシップの再利用可能技術は、宇宙への移動コストを劇的に下げる可能性を秘めています。
潜在的なリスクと課題
しかし、火星探査には依然として大きな技術的・人的リスクが存在します。特に放射線防護や長期滞在時の生命維持システムなど、解決すべき課題は山積みです。また、火星での資源利用(ISRU)技術の確立も不可欠です。