Last Updated on 2025-02-25 12:15 by admin
2025年2月20日、SpaceX CEOのイーロン・マスクは自身のSNSプラットフォームXで、国際宇宙ステーション(ISS)の早期廃棄を提言した。
主な要点は以下の通り
- マスクは「ISSはその目的を果たし、段階的な有用性がほとんどない」と述べ、2年後(2027年)での廃棄を推奨した。
- 現在のISSの廃棄計画:
- NASAは2030年に太平洋上での制御された廃棄を予定
- SpaceXが8億4300万ドルで廃棄用宇宙機の開発契約を獲得
- ロシアは2028年までの参加を表明
- ISSの現状:
- 1998年に運用開始
- 重量約43万kg
- サイズはフットボール場程度
- これまでに19カ国から200人以上の宇宙飛行士が滞在
- 後継計画:
- Blue Origin、Nanoracks LLC、Northrop Grumman Systems Corporationが商業宇宙ステーションを開発中
- Axiom Space、Sierra Space、Vast Spaceなども独自の宇宙ステーションを計画
マスクは月面探査を「気を散らすもの」と評し、直接火星を目指すべきだと主張している。一方でNASAは、月面探査計画(アルテミス計画)を火星到達への重要なステップと位置付けている。
from:Elon Musk Says the ISS Should Be Deorbited “As Soon as Possible”—And Pushes for Mars Instead
【編集部解説】
イーロン・マスク氏のISSに関する発言について、innovaTopiaの視点から詳しく解説させていただきます。
発言の背景と意図
マスク氏の発言は、単なるISSの早期廃棄提案ではなく、より大きな宇宙開発の方向性に関する議論を投げかけています。SpaceXは既にISSの廃棄船開発契約(8億4300万ドル)を獲得しており、この提案には利害関係が絡んでいることにも注目する必要があります。
マスク氏が提案する2027年での廃棄は、NASAの計画より3年早いタイムラインです。これは単なる時期の問題ではなく、宇宙開発の優先順位に関する根本的な考え方の違いを示しています。
技術的な課題と実現可能性
ISSの廃棄は極めて複雑な技術的オペレーションを必要とします。43万kgもの巨大構造物を制御しながら大気圏に再突入させる作業は、人類がこれまでに経験したことのない規模の宇宙工学的チャレンジとなります。
早期廃棄には、現在進行中の科学実験や研究プログラムの中断リスクも伴います。特に微小重力環境での実験は、地上では再現できない貴重なデータを提供しています。
商業宇宙ステーションへの移行
現在、複数の民間企業が商業宇宙ステーションの開発を進めていますが、2027年までの運用開始は極めて困難とされています。ISSの早期廃棄は、低軌道での実験・研究に大きな空白期間を生む可能性があります。
国際協力への影響
ISSは国際協力の象徴的存在です。早期廃棄の決定は、日本を含む参加国との関係に影響を与える可能性があります。特に、既に2028年までの参加を表明しているロシアとの調整も必要となります。
火星探査への展望
マスク氏が主張する「直接火星へ」というアプローチは、魅力的ではありますが、技術的・生物学的な課題が山積しています。ISSでの長期滞在実験から得られるデータは、火星移住計画においても重要な意味を持っています。
今後の展望
この提案は、宇宙開発の方向性に関する重要な議論のきっかけとなっています。低軌道活動と深宇宙探査のバランス、国際協力と商業化の両立など、私たちは多くの選択肢を慎重に検討する必要があります。