ファイアフライ・エアロスペース社の月着陸船「ブルーゴースト」が2025年3月2日(日曜日)に月面着陸を試みる。着陸予定地は月の表側にあるマレ・クリシウム地域だ。
ブルーゴーストは現在月周回軌道にあり、着陸に向けた準備を進めている。月面着陸の難しさに対応するため、ブルーゴーストには地形相対ナビゲーション技術が搭載されている。これは宇宙船底部のカメラで撮影した地形画像を機上マップと照合し、位置を特定するシステムだ。また、ハザード回避システムも搭載され、岩や火口などの危険を検出する。
着陸時の衝撃に備え、着陸船の脚には「潰れるハニカム」と呼ばれる特殊素材が組み込まれており、自動車のクランプルゾーンのように衝撃を吸収する設計になっている。
これまでに月面に成功裏に着陸した民間企業は、インテュイティブ・マシーンズ社の「オデッセウス」のみだが、その着陸も横向きになるなど完全なものではなかった。ファイアフライ社の未来システムアーキテクト、ケビン・ショルテス氏は「月に着陸することは信じられないほど難しい挑戦だ」と述べている。
現在、ブルーゴーストを含め3機の民間月着陸船が月に向かっており、さらに1機が来年打ち上げられる予定だ。これらの企業は競合しながらも情報を共有し、互いの成功を願っている。
from:‘Quite frankly terrifying’: how Firefly’s Blue Ghost engineers are preparing to land on the moon
【編集部解説】
ファイアフライ・エアロスペース社の月着陸船「ブルーゴースト」が、いよいよ明日(3月2日)に月面着陸に挑戦します。この挑戦は、民間企業による月面着陸としては史上2社目となる重要なミッションです。
月面着陸の技術的難しさ
月面着陸は、技術的に非常に困難な挑戦です。ファイアフライ社の未来システムアーキテクト、ケビン・ショルテス氏が「正直言って恐ろしい」と表現するように、月は地球から約38万キロメートル離れた場所にあり、通信遅延が発生するため、リアルタイムでの操作が不可能です。
着陸プロセスは完全に自律的に行われ、日本の宇宙機関JAXAが「恐怖の20分間」と呼ぶ時間帯に入ります。この間、地上からの介入はできず、すべてが機体に搭載されたシステムに委ねられるのです。
革新的な技術
ブルーゴーストが採用している「潰れるハニカム」技術は、特に注目に値します。この技術は、自動車のクランプルゾーンと同様の原理で、着陸時の衝撃を吸収する役割を果たします。
また、地形相対ナビゲーションシステムは、機体底部のカメラで撮影した月面の画像を機上のマップと照合し、正確な位置を特定します。これに加えて、ハザード回避システムが岩や火口などの危険を検出し、安全な着陸地点を選定します。
これらの技術は、コンピュータ処理能力の向上によって初めて実現したもので、月面探査の新時代を切り開くものと言えるでしょう。
月面着陸の難しさ
ショルテス氏によれば、「直感に反して、これを行う上での最大の課題の一つは、単純に自分がどこにいるかを知ることです」。GPSがなく、窓の外を見る宇宙飛行士も搭乗していない状況で、宇宙船は毎秒1マイルの速度から最終的に毎秒わずか1メートルまで減速しながら、メートルレベルの精度で自分の位置を把握しなければなりません。
さらに、月面は大小の火口で覆われており、異なる高度から見ると似ているため、大きな火口を近くで見ているのか、小さな火口を遠くから見ているのかを判断するのが難しいという課題もあります。
民間月探査の意義
現在、ファイアフライ社のブルーゴーストの他にも、2つの月着陸船が月に向かっており、さらに1つが来年打ち上げられる予定です。これらの企業は競合しながらも情報を共有し、互いの成功を願っています。
ショルテス氏は「彼らの成功は私たちの成功でもある」と述べ、「私たちが本当にしたいのは、アメリカの納税者と世界中の人々に、月が戻る価値があることを鼓舞することです」と強調しています。
明日の着陸成功に向けて、世界中の宇宙ファンが見守る中、ブルーゴーストの挑戦が月探査の新たな章を開くことを期待しています。