「暗号資産ウォレット」MetaMask、最新アップデートで機能強化と対応チェーン拡大

MetaMask新ロードマップ発表:スマートコントラクト機能とマルチチェーン対応で暗号資産ウォレットが進化 - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-03-03 10:18 by admin

MetaMaskが新ロードマップを発表:スマートコントラクト機能や複数チェーンのサポートを追加

暗号資産ウォレット「MetaMask」を運営するConsensys社は2025年2月27日(木)、北米最大のイーサリアムカンファレンス「ETHDenver」において、ウォレットのユーザー体験向上を目指した新ロードマップを発表した。

新ロードマップの主な特徴は以下の通り

スマートコントラクト機能の追加
現在のMetaMaskは外部所有アカウント(EOA)として機能しているが、コントラクトアカウント(CA)の特性を追加することで、秘密鍵紛失時のリカバリーメカニズムやトランザクション検証のセキュリティチェックが可能になる。

バッチトランザクション(ERC-5792)の実装
「承認+スワップ」などの複数の操作を1クリックで実行できるようになり、ユーザーは時間とガス代を節約できる。

MetaMaskデビットカードの米国展開
3月中旬から米国の一部の州でMetaMaskデビットカードが利用可能になる。このカードは既に英国とEUで提供されており、ユーザーのウォレットと連携してMastercardが使える場所ならどこでも暗号資産を使用できる。

ビットコイン(BTC)とソラナ(SOL)のサポート追加
イーサリアム以外のブロックチェーンもサポートすることで、ユーザーは様々な暗号資産を一箇所で管理できるようになる。

MetaMaskの共同創設者Dan Finlay氏は、バッチトランザクション機能について「ユーザーは一連のイベントに対して1回のガス代を支払い、一連の操作全体が1つのブロックで処理される」と説明している。

MetaMaskは現在、世界で最も普及している暗号資産ウォレットの一つであり、2023年時点で月間アクティブユーザー数は約3,000万人に達している。

from:Popular Crypto Wallet MetaMask Unveils New Roadmap

【編集部解説】

MetaMaskの新ロードマップ発表は、暗号資産ウォレットの進化において重要な転換点となる可能性があります。今回の更新は単なる機能追加ではなく、暗号資産の利用における根本的な課題を解決しようとする試みと言えるでしょう。

特に注目すべきは、外部所有アカウント(EOA)からスマートコントラクト機能を持つコントラクトアカウント(CA)への移行です。これまで暗号資産の普及における最大の障壁の一つは「秘密鍵を紛失したら資産が永久に失われる」というリスクでした。この問題はブロックチェーンの本質的な特性から来るものであり、多くの一般ユーザーが暗号資産の利用を躊躇する理由となっていました。

MetaMaskがCAの特性を取り入れることで、リカバリーメカニズムが実装され、このリスクが大幅に軽減されます。これは暗号資産の大衆採用に向けた重要なステップと言えるでしょう。

また、ERC-5792に基づくバッチトランザクション機能も見逃せません。イーサリアムネットワークでは、特に混雑時にガス代(取引手数料)が高騰することが問題となっていました。複数の操作を一度にまとめて実行できるようになれば、ユーザーの操作負担が減るだけでなく、経済的なコスト削減にもつながります。

例えば、DeFiプロトコルでトークンをスワップする際、通常は「トークン使用の承認」と「実際のスワップ」という2つの操作が必要でしたが、これが1クリックで完了するようになります。これにより、DeFiの利用ハードルが下がり、より多くのユーザーがブロックチェーン上の金融サービスにアクセスしやすくなるでしょう。

さらに、ビットコインとソラナのサポート追加は、MetaMaskがマルチチェーンウォレットへと進化する重要な一歩です。これまでMetaMaskはイーサリアムとその互換チェーンに特化していましたが、暗号資産市場最大のビットコインと、高速・低コストで注目を集めるソラナをサポートすることで、ユーザーはより多様な資産を一元管理できるようになります。

MetaMaskデビットカードの米国展開も見逃せません。暗号資産の実用性を高めるこの取り組みは、オンチェーン(ブロックチェーン上)の資産をオフチェーン(現実世界)で簡単に使用できるようにするものです。これにより、暗号資産は投機的な資産から、日常的な決済手段へと一歩近づくことになります。

ただし、これらの新機能にはいくつかの潜在的な課題も存在します。スマートコントラクトベースのウォレットは、コードの脆弱性によるハッキングリスクが生じる可能性があります。また、マルチチェーン対応により、セキュリティモデルが複雑化し、新たなリスクが生まれる可能性もあるでしょう。

規制の観点では、MetaMaskデビットカードの展開は、暗号資産と従来の金融システムの融合を促進するものであり、規制当局の注目を集める可能性があります。特に資金洗浄防止(AML)やテロ資金供与対策(CFT)の観点から、新たな規制枠組みが必要になるかもしれません。

長期的には、MetaMaskのこうした取り組みは、Web3エコシステム全体の成熟と大衆採用を加速させる可能性があります。ユーザー体験の向上とセキュリティの強化が進めば、ブロックチェーン技術は金融だけでなく、アイデンティティ管理やデジタル所有権など、より広範な領域での応用が期待できるでしょう。

MetaMaskは月間アクティブユーザー数が約3,000万人と言われており、その動向は暗号資産業界全体に大きな影響を与えます。今回の新ロードマップは、テクノロジーの複雑さを隠し、ユーザーフレンドリーなインターフェースを提供することで、暗号資産とブロックチェーン技術の大衆化を促進する重要な一歩と言えるでしょう。

【用語解説】

  • MetaMask(メタマスク)
    イーサリアムなどのブロックチェーンネットワークに接続するためのウォレット(財布)アプリ。ブラウザ拡張機能やスマートフォンアプリとして利用でき、暗号資産の保管や送受信、分散型アプリケーション(DApps)との連携が可能です。
  • Consensys(コンセンシス)
    MetaMaskを開発する企業。2014年にイーサリアムの共同創設者Joseph Lubin氏によって設立されたブロックチェーン技術企業で、イーサリアムエコシステムの発展に貢献しています。
  • EOA(外部所有アカウント)
    秘密鍵と公開鍵のペアで管理される従来型の暗号資産ウォレット。銀行口座の暗証番号のように、秘密鍵を忘れると資産にアクセスできなくなります。
  • CA(コントラクトアカウント)
    プログラムコードによって制御されるスマートコントラクトベースのアカウント。リカバリー機能など追加機能を実装できます。
  • バッチトランザクション(ERC-5792):
    複数の操作を一度にまとめて実行できる機能。例えると、銀行で複数の手続きを一度に済ませられるような仕組みです。
  • ガス代
    イーサリアムネットワーク上でトランザクション(取引)を実行する際に必要な手数料。混雑時には高騰することがあります。

【参考リンク】

  • MetaMask公式サイト(外部)
    暗号資産ウォレットMetaMaskの公式サイト。ダウンロードやサポート情報が掲載されています。
  • Consensys公式サイト(外部)
    MetaMaskを開発するConsenSys社の公式サイト。企業情報や製品・サービスの紹介があります。
  • イーサリアム公式サイト(外部)
    イーサリアムブロックチェーンの公式サイト。技術情報や開発者向けリソースが提供されています。

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