宇宙探査の進展とともに、ISS内での微生物の役割について改めて注目が集まっている。
2024年2月27日、学術誌「Cell」に発表された研究で、地球の微生物が宇宙飛行士の健康維持に重要な役割を果たす可能性が明らかになった。
カリフォルニア大学サンディエゴ校のRob Knight教授らの研究チームは、国際宇宙ステーション(ISS)の米国セグメントから803の表面サンプルを分析した。その結果、ISSの微生物多様性が地球上の高度に消毒された環境と類似していることが判明した。
研究チームは、土壌や水から慎重に選んだ有益な微生物を宇宙居住環境に導入することで、宇宙飛行士の免疫系を強化し、長期ミッション中の健康リスクを軽減できる可能性があると提案している。
この研究結果は、宇宙環境は完全に無菌でなければならないという従来の考えに挑戦するものであり、将来の宇宙居住環境の設計方法を変える可能性がある。
ただし、宇宙に微生物を導入することにはリスクも伴う。微生物が宇宙環境で予期せぬ変異を起こす可能性があるため、研究者たちは宇宙に微生物を導入する前に地球上で厳密なテストを行う必要性を強調している。
この研究は、NASAや他の宇宙機関が計画している地球軌道を超える数年にわたるミッションにおいて、宇宙飛行士の健康維持に新たな視点を提供する可能性がある。
from:Earth’s Microbes Could Be the Key to Keeping Astronauts Healthy in Deep Space
【編集部解説】
従来、宇宙環境は極力無菌状態に保つべきだと考えられてきました。しかし、この研究は逆に、地球の微生物を宇宙に持ち込むことで宇宙飛行士の健康を守れる可能性を示唆しています。
この発見は、宇宙医学に大きな影響を与える可能性があります。私たちの体は地球上の微生物と共に進化してきました。そのため、完全に無菌の環境に長期間滞在することは、むしろ健康にとってマイナスになる可能性があるのです。
研究チームは、ISSの米国セグメントから803もの表面サンプルを分析しました。その結果、ISSの微生物多様性が地球上の高度に消毒された環境と類似していることが判明しました。これは、宇宙飛行士の免疫系に悪影響を及ぼす可能性があります。
この研究結果は、将来の宇宙居住環境の設計に革命をもたらす可能性があります。例えば、土壌や水から有益な微生物を慎重に選んで宇宙環境に導入することで、宇宙飛行士の免疫系を強化できるかもしれません。
しかし、この方法にはリスクも伴います。微生物が宇宙環境で予期せぬ変異を起こす可能性があるため、慎重な検討と実験が必要です。研究者たちは、地球上での厳密なテストの必要性を強調しています。
この研究は、宇宙探査の未来に大きな影響を与える可能性があります。月や火星への長期ミッション、さらには宇宙植民地化を視野に入れた場合、宇宙飛行士の健康維持は最重要課題の一つです。微生物を味方につけることで、人類の宇宙進出の可能性が大きく広がるかもしれません。
今後は、この研究結果を基に、さらなる実験や長期的な観察が行われることが期待されます。宇宙環境における微生物の挙動や、人体への影響を詳細に調べることで、より安全で効果的な方法が確立されていくでしょう。