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SpaceX、テキサス州スターシップ打ち上げ回数を年間25回に拡大許可を取得 – 宇宙開発の新時代へ

SpaceX、テキサス州スターシップ打ち上げ回数を年間25回に拡大許可を取得 - 宇宙開発の新時代へ - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-05-07 08:04 by admin

2025年5月6日、米連邦航空局(FAA)はSpaceXに対し、テキサス州ボカチカのスターベース施設からのスターシップロケット打ち上げ回数を年間最大25回まで増加させる許可を与えた。これは従来の年間5回の上限から5倍の増加となる。

この決定はFAAの最終環境評価に基づくもので、打ち上げ頻度の増加が「人間環境の質に重大な影響を与えない」と判断された。許可にはスターシップ上段とスーパーヘビーブースターの両方について、それぞれ年間最大25回の着陸も含まれている。

SpaceXはバイデン政権時代に打ち上げ頻度増加の提案を提出していたが、最終決定はトランプ大統領の任期開始から3ヶ月以上経過した現在になって発表された。イーロン・マスク氏はトランプ政権において中心的な人物となり、連邦政府と規制機関の縮小を主導している立場にある。

環境保護団体「生物多様性センター」の上級弁護士ジャレド・マーゴリス氏は、「FAAが生態学的に重要な地域での打ち上げ回数と関連する害を大幅に増加させることをSpaceXに許可したことは非常に失望させられる」とコメントした。

この決定は、SpaceXが週末の選挙でスターベースを独自の都市として法人化することに成功した直後に下された。約283人の有権者のうち212人が賛成、6人が反対票を投じ、ボビー・ペデン氏が市長に、ジェンナ・ペトルカ氏とジョーダン・B氏が市委員に選出された。いずれもSpaceXの従業員である。

スターシップは現在までに8回の試験飛行を実施しており、2025年には既に1月と3月の2回の飛行が行われている。第8回試験飛行では、スーパーヘビーブースターは発射塔の「箸」アームによるキャッチに成功したものの、上段のシップは問題が発生し10分以内に破壊された。SpaceXはさらに将来的には年間100回の打ち上げを目指しており、最終的には毎日の打ち上げを実現したいとしている。

from:SpaceX gets FAA permission for fivefold increase in Starship launches from Texas

【編集部解説】

SpaceXがテキサス州ボカチカからのスターシップ打ち上げ回数を年間25回まで増やせるようになったことは、宇宙開発の新たな時代の幕開けを意味します。この決定は単なる数字の変更ではなく、人類の宇宙進出計画を大きく加速させる可能性を秘めています。

まず注目すべきは、この許可がトランプ政権下で下されたタイミングです。イーロン・マスク氏はトランプ大統領の選挙キャンペーンに約3億ドル(約450億円)を投じ、現政権で規制緩和を推進する立場にあります。この関係性が今回の決定にどう影響したかは明確ではありませんが、政治と宇宙ビジネスの密接な関係を示す一例と言えるでしょう。

環境面では、FAAは「重大な影響はない」と結論づけましたが、これには条件が付いています。SpaceXは従業員シャトルの導入や水輸送トラックの日中運行制限など、野生生物への影響を最小限に抑える措置を講じる必要があります。年間のトラック運行数は約6,000台から23,771台へと大幅に増加する見込みであり、地域環境への配慮が求められています。

過去には環境問題も発生しています。2023年4月の初回統合飛行試験後には、ボカチカ州立公園の土地で3.5エーカー(約14,000平方メートル)の火災が発生し、絶滅危惧種の巣や卵、生息地が破壊されたと報告されています。また、2024年8月にはテキサス州と連邦の環境規制当局がSpaceXに対し、清浄水法違反で罰金を科しています。

スターシップの環境への影響については、燃料面でも議論があります。メタンと液体酸素を燃料とするラプターエンジンは、従来のRP-1燃料(ケロシン系)を使用するファルコン9やファルコンヘビーと比較すると、打ち上げ1回あたりの温室効果ガス排出量は相対的に少ないとされています。しかし、グラスゴー・カレドニアン大学のアンドリュー・ウィルソン助教授によれば、1回の打ち上げで約76,000トンの二酸化炭素相当量が排出されるとの試算もあります。

打ち上げ頻度の増加はSpaceXの火星有人ミッション計画を大きく前進させるものです。マスク氏は将来的には年間100回、最終的には毎日の打ち上げを目指しており、今回の許可はその第一歩と位置づけられます。

また見逃せないのが、スターベースが新たに「市」として法人化されたことです。選挙では約283人の有権者のうち212人が賛成、6人が反対票を投じ、ボビー・ペデン氏が市長に、ジェンナ・ペトルカ氏とジョーダン・B氏が市委員に選出されました。いずれもSpaceXの従業員であり、同社の地域における影響力が強まっています。テキサス州議会では、現在カメロン郡が持つ公共ビーチの閉鎖権限をSpaceXに移譲する法案も審議されており、地域社会との関係も注目点です。

この決定は宇宙開発と環境保護、企業の成長と地域社会のバランスなど、多くの課題を浮き彫りにしています。今後のスターシップ開発の進展とともに、これらの課題にどう対応していくかが注目されるでしょう。

【用語解説】

スターシップ/スーパーヘビー
SpaceXが開発中の完全再利用可能な超大型ロケットシステム。スーパーヘビーは第一段階(ブースター)、スターシップは第二段階(宇宙船)を指す。高さ123m、直径9m、積載能力は再利用時で150トン、使い捨て時で250トンに達する世界最強のロケット。

FAA(連邦航空局)
米国運輸省の一部門で、民間航空の安全規制や航空交通管制を担当する政府機関。商業宇宙輸送の規制・許認可も管轄している。

スターベース
テキサス州ボカチカにあるSpaceXの産業施設とロケット発射場。スターシップの主要な試験・製造拠点であり、SpaceXの本社も置かれている。

「箸」アーム(チョップスティック)
スターベースの発射塔に設置された機械アームで、帰還するスーパーヘビーブースターを空中でキャッチするために使用される。日本の箸に似ていることから、この愛称で呼ばれている。

生物多様性センター
環境保護を目的とした非営利団体。絶滅危惧種の保護や生態系の保全に取り組み、必要に応じて法的手段も用いる活動で知られている。

【参考リンク】

SpaceX公式サイト(外部)
SpaceXの公式ウェブサイト。同社の製品、ミッション、最新情報を提供している。

スターシップページ(外部)
スターシップの詳細な仕様や目的、技術情報を掲載したSpaceXの公式ページ。

FAA公式サイト(外部)
米連邦航空局の公式サイト。航空規制や宇宙商業輸送に関する情報を提供している。

生物多様性センター(外部)
環境保護団体「生物多様性センター」の公式サイト。絶滅危惧種保護や環境訴訟に関する情報を提供。

【参考動画】

【編集部後記】

宇宙開発の加速は、私たちの未来をどう変えていくのでしょうか?スターシップの打ち上げ頻度増加は、宇宙旅行や火星移住計画を身近なものにするかもしれません。皆さんは宇宙に行くとしたら何を持っていきますか?また、環境保全と宇宙開発の両立についてどう思われますか?ボカチカの住民たちの生活と宇宙港の共存は可能でしょうか?SNSでぜひ皆さんの考えをシェアしてください。宇宙開発の最前線を、これからもinnovaTopiaでお届けします。

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TaTsu
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