innovaTopia

ーTech for Human Evolutionー

ロケットラボ、米空軍と提携:ニュートロンロケットで地球規模の超高速貨物輸送を2026年に実証へ

ロケットラボ、米空軍と提携:ニュートロンロケットで地球規模の超高速貨物輸送を2026年に実証へ - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-05-13 07:17 by admin

ロケットラボUSA(Nasdaq: RKLB)は2025年5月8日、米国空軍研究所(AFRL)と提携し、新型の中型再利用可能ロケット「ニュートロン」を使用した地点間貨物輸送実証ミッションを2026年に実施すると発表した。

このミッションは、AFRLの「グローバルアジャイル物流のためのロケット実験(REGAL)」プログラムの一環として実施される。REGALは、国防総省(DoD)が商業打ち上げ事業者と協力して、世界中に迅速に貨物を輸送するためのロケットベースの地点間輸送システムを構築する取り組みである。

ニュートロンロケットは、地球低軌道に最大13,000kg(13トン)のペイロードを運搬する能力を持ち、特徴的な「ハングリーヒポ」メカニズムを採用した再利用可能なフェアリングシステムと再利用可能な第一段階を備えている。高さは43メートル(141フィート)、直径は7メートル(22.9フィート)で、第一段階には9基のアルキメデスエンジン、第二段階には1基の真空最適化された再点火可能なアルキメデスエンジンを搭載している。

ロケットラボのCEOであるピーター・ベック卿は、「このミッションは物を地球に持ち帰ることに関するものなので、AFRLは2026年までに地球帰還型ニュートロンに搭乗する予定です」と述べた。また、「ロケットの再突入と再利用性は、DoDが強く支持する宇宙技術における重要な進歩であり、そのためニュートロンは最初から再利用と頻度のために設計されています」と説明している。

このミッションはマルチマニフェストミッションとして機能する予定だが、具体的なペイロードの詳細は現時点では公表されていない。

ニュートロンロケットの初飛行は2025年後半に予定されており、バージニア州ウォロップス島にあるロケットラボの発射施設「ローンチコンプレックス3」から打ち上げられる。ニュートロンの開発、製造、テストは、カリフォルニア州ロングビーチ、ミシシッピ州ハンコック郡のNASAジョン・C・ステニス宇宙センター、メリーランド州ミドルリバー、バージニア州ウォロップス島など、米国内のロケットラボの複数の施設で行われている。

このミッションの成功により、軍事物資や人道的物資の配送に必要な時間を大幅に短縮できる可能性があり、国防総省の物流能力を大きく向上させることが期待されている。

References:
文献リンクRocket Lab’s Groundbreaking Mission to Deliver Cargo Across the Globe Using Space Rockets

【編集部解説】

ロケットラボの今回の発表は、宇宙開発の世界に新たな可能性を切り開くものです。従来、ロケットといえば「地球から宇宙へ」という上方向への輸送手段でしたが、今回のニュートロンロケットを使った実証実験は「地球上の地点から別の地点へ」という水平方向の移動を宇宙経由で行うという画期的な試みになります。

この技術が実用化されれば、現在の航空機による輸送と比較して、輸送時間を劇的に短縮できる可能性があります。例えば、ニューヨークから東京まで通常の航空機では13時間以上かかりますが、弾道飛行を利用した地点間輸送では理論上1時間程度まで短縮できるとされています。

REGALプログラム(Rocket Experimentation for Global Agile Logistics)は、米国防総省が推進する「ヴァンガード・イニシアチブ」の一環として2021年6月に発表されたもので、戦略的に重要な取り組みとして位置づけられています。軍事物資の迅速な輸送だけでなく、災害救援や人道支援にも活用できる技術として期待されています。

ニュートロンロケットの特筆すべき点は、その再利用性と独自の「ハングリーヒポ」メカニズムにあります。このメカニズムでは、ペイロードを保護するフェアリングがロケット本体に固定されたまま開閉する設計となっており、使い捨て部品を減らすことでコスト削減と運用効率の向上を実現しています。従来のロケットでは、フェアリングは使い捨てでしたが、ニュートロンではこれを再利用することで、打ち上げコストを大幅に削減できる可能性があります。

また、ニュートロンは9基のアルキメデスエンジンを搭載し、低地球軌道に最大13,000kgのペイロードを運搬する能力を持っています。これは、大型の軍事物資や人道支援物資を運ぶのに十分な能力です。

この技術の実用化には、いくつかの課題も存在します。まず、安全性の確保です。ロケットの打ち上げと着陸には常にリスクが伴いますが、特に人口密集地域での着陸を想定する場合、厳格な安全基準をクリアする必要があります。

また、コスト面での課題もあります。再利用可能とはいえ、従来の航空輸送と比較して経済的に見合うかどうかは、運用実績を積み重ねる中で検証していく必要があるでしょう。

環境への影響も無視できません。ニュートロンロケットは液体酸素とメタンを燃料としており、従来のロケット燃料と比較して環境負荷は低いものの、頻繁な打ち上げが行われた場合の大気への影響は慎重に評価する必要があります。

一方で、この技術が民間にも応用されれば、国際物流の概念を根本から変える可能性を秘めています。緊急医療物資の輸送や、災害時の迅速な支援など、時間が命を左右するシチュエーションでの活用が期待できます。

ロケットラボは2025年後半にニュートロンの初飛行を予定しており、その成功如何によっては、宇宙輸送の新時代が幕を開ける可能性があります。私たちinnovaTopiaは、この技術の進展を引き続き注視していきます。

宇宙開発は、単に宇宙空間での活動にとどまらず、地球上の私たちの生活をも変革する可能性を秘めています。ロケットラボとAFRLの取り組みは、その可能性の一端を示す重要な一歩と言えるでしょう。

【用語解説】

地点間貨物輸送(Point-to-Point Cargo Transportation)
地球上の2地点間を宇宙空間を経由して移動させる輸送方式。従来の航空機による水平移動と異なり、ロケットで大気圏外まで上昇し、弾道飛行後に目的地に降下する。新幹線が停車駅を経由せず、トンネルを掘って直線的に目的地に向かうようなイメージだ。

REGALプログラム(Rocket Experimentation for Global Agile Logistics)
米国空軍研究所が推進する、ロケットを使った地球規模の機動的物流実験プログラム。軍事物資や人道支援物資を迅速に世界中に輸送するための技術開発を目指している。

ヴァンガード・イニシアチブ(Vanguard Initiative)
米国防総省が推進する先端技術開発プログラムの枠組み。戦闘能力向上のための革新的技術を迅速に開発・実証することを目的としている。REGALはその第4のプログラムとして2021年6月に発表された。

ニュートロンロケット(Neutron Rocket)
ロケットラボが開発中の中型再利用可能ロケット。低地球軌道に最大13,000kgのペイロードを運搬可能。特徴的なのは「ハングリーヒポ」メカニズムと呼ばれる、ペイロードを保護するフェアリング(先端カバー)がロケット本体に固定されたまま開閉する設計で、使い捨て部品を減らしている。

アルキメデスエンジン(Archimedes Engine)
ニュートロンロケットに搭載される液体酸素とメタンを燃料とするエンジン。第一段階に9基、第二段階に1基搭載される。再利用を前提とした設計になっている。

マルチマニフェストミッション(Multi-manifest Mission)
一度の打ち上げで複数の目的やペイロード(搭載物)を運ぶミッション。コスト効率を高めるために採用される方式。

【参考リンク】

ロケットラボ公式ウェブサイト外部)宇宙打ち上げサービス、宇宙機、衛星コンポーネントなどを提供するエンドツーエンドの宇宙企業。

米国空軍研究所(AFRL)公式情報(外部)米国の航空宇宙軍のための手頃な戦闘技術の発見、開発、統合をリードする研究所。

【参考動画】

【編集部後記】

地球上の2地点間を宇宙経由で結ぶ輸送技術は、SF映画の世界から現実へと近づいています。もし東京からニューヨークまで1時間で移動できるとしたら、あなたの生活や仕事はどう変わるでしょうか?また、この技術が一般化した未来では、国際物流や旅行の概念が根本から変わるかもしれません。宇宙技術の進化が私たちの日常にもたらす変革について、ぜひ想像を巡らせてみてください。皆さんはこの技術にどんな可能性を感じますか?

【関連記事】

スペーステクノロジーニュースをinovatopiaでもっと読む

投稿者アバター
TaTsu
デジタルの窓口 代表 デジタルなことをまるっとワンストップで解決 #ウェブ解析士 Web制作から運用など何でも来い https://digital-madoguchi.com
ホーム » スペーステクノロジー » スペーステクノロジーニュース » ロケットラボ、米空軍と提携:ニュートロンロケットで地球規模の超高速貨物輸送を2026年に実証へ