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ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が太陽系外で初の水氷検出 – HD 181327恒星系で生命の起源に迫る発見

ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が太陽系外で初の水氷検出 - HD 181327恒星系で生命の起源に迫る発見 - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-05-28 15:46 by admin

ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)が、太陽系外で初めて水氷を検出した。観測対象は望遠鏡座に位置する恒星HD 181327で、地球から155光年離れている。

この恒星は年齢2300万年のF型主系列星で、太陽よりやや大きく高温である。恒星周囲には幅約25天文単位のデブリ円盤が存在し、氷の天体同士の衝突により水氷の微粒子が生成されている。

ジョンズ・ホプキンス大学のチェン・シエ研究員らが主導した研究で、JWSTの近赤外分光器NIRSpecを使用して3.0マイクロメートルの波長で水氷を確認した。水氷は恒星から85天文単位の距離で0.1%、113天文単位で21%の濃度で検出された。この円盤は太陽系のカイパーベルトと類似しており、惑星形成初期段階の太陽系を再現している。

この発見により、生命に必要な水が宇宙の他の惑星系にどのように分布するかの理解が進展した。

From: 文献リンクWebb Spots Frozen Water Around a Star That Mirrors Our Sun

【編集部解説】

今回のジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡による発見は、宇宙生物学において極めて重要な意味を持ちます。これまで太陽系外の惑星系で水氷の存在を確実に証明した例はなく、今回が史上初の快挙となりました。

この発見の技術的な意義を理解するには、ウェッブ望遠鏡の観測能力について知る必要があります。近赤外分光器NIRSpecは3.0マイクロメートルの波長で水氷特有の吸収スペクトルを検出し、さらに3.1マイクロメートルでフレネルピークを確認しました。このピークは結晶性の大きな氷粒子(1ミリメートル以上)の存在を示す決定的な証拠となります。

興味深いのは、この系が太陽系のカイパーベルトと驚くほど類似している点です。恒星から85天文単位の距離で水氷濃度0.1%、113天文単位で21%という分布は、太陽系形成初期の状況を再現していると考えられます。実際に、研究者らは「このデータは太陽系のカイパーベルト天体の観測結果と酷似している」と述べています。

この発見が示唆する長期的な影響は計り知れません。水氷を含む「汚れた雪玉」が衝突により岩石惑星に水を供給するプロセスが、他の惑星系でも起こっている可能性が実証されたからです。地球の海の起源についても、このような外部からの水の供給が重要な役割を果たしたとする仮説を強く支持する結果となりました。

一方で、この発見には技術的な限界も存在します。ウェッブ望遠鏡が検出できるのは微細な氷粒子のみで、より大きな天体内部に閉じ込められた水氷は観測できません。また、恒星に近い領域では紫外線により氷が昇華するため、生命居住可能領域での水の存在については別途検証が必要です。

今後の展望として、この観測手法を他の若い恒星系に適用することで、惑星形成過程における水の役割をより詳細に解明できると期待されています。特に、地球型惑星が形成される領域への水の輸送メカニズムの解明は、系外惑星における生命探査の重要な指針となるでしょう。

【用語解説】

ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)
2021年12月25日に打ち上げられたNASAの赤外線観測用宇宙望遠鏡。ハッブル宇宙望遠鏡の後継機で、主鏡口径6.5メートルと史上最大。地球から150万キロメートル離れたラグランジュ点L2に位置する。

近赤外分光器(NIRSpec)
ウェッブ望遠鏡に搭載された4つの観測装置の一つ。0.6-5.3マイクロメートルの波長域で天体のスペクトル(光の成分分析)を行う装置である。今回の水氷検出では3.0マイクロメートルでの吸収と3.1マイクロメートルでのフレネルピークを捉えた。

デブリ円盤
恒星の周囲に存在する塵や小天体の円盤状構造。惑星形成の材料となる領域で、太陽系のカイパーベルトに相当する。小天体同士の衝突により微細な塵が生成される。

フレネルピーク
結晶性の大きな氷粒子(1ミリメートル以上)が存在する際に3.1マイクロメートルの波長で現れる特徴的な吸収スペクトル。水氷の確実な証拠となる。

HD 181327
望遠鏡座に位置するF型主系列星。地球から155光年離れ、年齢は約1850万年の若い恒星である。太陽よりやや質量が大きく高温で、太陽の1.3倍の質量を持つ。

【参考リンク】

NASA ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡公式サイト(外部)
ウェッブ宇宙望遠鏡の最新観測結果、技術仕様、ミッション概要を提供するNASAの公式サイト

宇宙望遠鏡科学研究所(STScI)(外部)
ジョンズ・ホプキンス大学内にあり、ウェッブ望遠鏡の運用を担当する機関のサイト

ジョンズ・ホプキンス大学(外部)
1876年設立の米国私立研究大学。今回の研究を主導したチェン・シエ研究員の所属機関

Nature誌(外部)
1869年創刊の国際的な科学雑誌。今回の研究成果が2025年5月14日に掲載された権威ある学術誌

【参考動画】

【編集部後記】

今回のウェッブ宇宙望遠鏡による発見は、私たちが住む地球の水の起源について新たな視点を与えてくれました。もしかすると、あなたが今飲んでいる水も、遥か昔に宇宙の彼方から届いた贈り物かもしれません。この発見を機に、夜空を見上げた時の感じ方は変わるでしょうか?また、生命探査技術の進歩により、私たちは宇宙における「孤独」から解放される日が来るのでしょうか?皆さんはこの宇宙規模の物語をどのように受け止められますか?

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TaTsu
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