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Aircela、空気からガソリン製造する冷蔵庫サイズマシンを発表|直接空気回収技術で1日1ガロン生産

Aircela、空気からガソリン製造する冷蔵庫サイズマシンを発表|直接空気回収技術で1日1ガロン生産 - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-05-31 07:04 by admin

ニューヨーク拠点のスタートアップAircelaが、空気中の二酸化炭素と水、再生可能エネルギーのみを使用してガソリンを製造する装置を開発した。同社のCEOエリック・ダールグレン氏は2025年5月15日に製品を発表し、5月22日にマンハッタンのガーメント地区で実機デモンストレーションを実施した。

装置は業務用冷蔵庫サイズで、直接空気回収技術により1日10キログラムの二酸化炭素を回収し、1ガロンのガソリンを生産する。最大17ガロンまで貯蔵可能である。製造されるガソリンは硫黄、エタノール、重金属を含まず、既存のエンジンに改造なしで使用できる。

同社は2019年にエリック・ダールグレン氏とミア・ダールグレン氏夫妻により設立され、リップル創設者クリス・ラーセン氏、エクソンモービル取締役ジェフ・ウベン氏、海運大手マースクから投資を受けている。2025年秋から量産開始予定で、住宅、商業、産業向けに展開する計画である。

From: 文献リンクCrazy new machine can make gasoline out of thin air

【編集部解説】

Aircelaの技術は、直接空気回収(DAC)と燃料合成を組み合わせた革新的なアプローチです。従来のDACは炭素を回収して地下貯蔵することが主目的でしたが、同社は回収したCO₂を水素と結合させてガソリンを製造する点で差別化を図っています。

この技術の核心は、フィッシャー・トロプシュ合成と呼ばれる化学プロセスにあります。大気中のCO₂を水酸化カリウム溶液で回収し、再生可能エネルギーによる電気分解で水から水素を生成、両者を触媒反応で結合させて炭化水素を作り出す仕組みです。

製造されるガソリンは硫黄、エタノール、重金属を含まない高品質な燃料で、既存エンジンとの完全互換性を実現しています。これは従来の石油精製プロセスで混入する不純物がないためで、むしろ従来のガソリンより純度が高いとも言えるでしょう。

ただし、現在の生産能力は1日1ガロン(約3.8リットル)と限定的です。一般的な乗用車の燃料タンク容量が50-70リットルであることを考えると、個人利用には相当な時間を要します。トヨタタコマの燃料タンク容量21.1ガロンと比較すると、満タンにするには約3週間が必要となります。

この技術が真価を発揮するのは分散型エネルギーシステムとしての活用です。ガソリンスタンド、工業施設、離島や僻地での燃料供給など、従来の石油流通網に依存しない燃料調達が可能になります。モジュラー設計により複数台の並列運用も可能で、スケールアップによる生産量増加が期待できます。

潜在的なリスクとして、再生可能エネルギーへの依存度の高さが挙げられます。化石燃料由来の電力を使用すれば、CO₂削減効果は大幅に減少してしまいます。また、装置の製造コストや耐久性、メンテナンス性についても長期的な検証が必要でしょう。

規制面では、合成燃料の品質基準や安全性認証、税制上の扱いなど、新たな法的枠組みの整備が求められます。特に日本では石油税や揮発油税の適用範囲について議論が必要になるかもしれません。

長期的には、この技術は炭素循環型社会の実現に向けた重要な一歩となる可能性があります。大気中のCO₂を燃料として再利用することで、理論上はカーボンニュートラルな交通システムの構築が可能になるからです。

【用語解説】

直接空気回収(DAC:Direct Air Capture)
大気中に薄く拡散した二酸化炭素を直接捕獲する技術。工場の排煙などの濃縮源ではなく、大気から直接CO₂を取り除く。液体溶媒方式と固体吸着剤方式の2つのアプローチがある。

フィッシャー・トロプシュ合成
一酸化炭素と水素の混合ガス(合成ガス)を金属触媒の存在下で液体炭化水素に変換する化学反応プロセス。1925年にドイツで開発され、石炭液化や天然ガス液化技術として利用される。

カーボンニュートラル燃料
燃焼時に排出するCO₂と製造時に大気から回収するCO₂が等量となり、正味の炭素排出量がゼロとなる燃料。大気中の炭素を循環利用することで気候変動対策に貢献する。

水酸化カリウム溶液
Aircelaが使用するCO₂捕獲技術の核心となる水ベースの溶液。大気中の二酸化炭素と化学反応を起こし、効率的にCO₂を分離・回収する。

モジュラー設計
装置を標準化された部品やユニットで構成し、用途や規模に応じて組み合わせや拡張が可能な設計手法。Aircelaの装置は複数台の並列運用により生産能力を向上させることができる。

【参考リンク】

Aircela公式サイト(外部)
空気、水、再生可能電力のみを使用してガソリンを製造する技術を開発するニューヨーク拠点のスタートアップ。

Aircela技術詳細ページ(外部)
水酸化カリウム溶液を使用したCO₂捕獲から燃料合成までの技術プロセスを詳細に解説。

国際エネルギー機関(IEA)直接空気回収ページ(外部)
直接空気回収技術の現状と課題について詳細な分析を提供。技術的アプローチや経済性を解説。

【参考動画】

【編集部後記】

空気からガソリンを作る技術、いかがでしたでしょうか。電気自動車の普及が進む一方で、既存の内燃機関車をカーボンニュートラル化する選択肢も生まれつつあります。みなさんは、合成燃料と電気自動車、どちらが未来のモビリティの主役になると思われますか?また、この技術が実用化されたら、ガソリンスタンドの概念も変わるかもしれませんね。ぜひSNSで、この技術への期待や疑問をお聞かせください。

【参考記事】

Popular Science – Refrigerator-sized machine makes gasoline out of thin air(外部)
Aircelaの技術について詳細な技術解説と市場への影響を分析。電気自動車普及の課題と合成燃料の可能性について論じている。

Globe Newswire – First U.S. Machine to Turn Air into Gasoline Debuts in NYC(外部)
2025年5月22日のマンハッタンでの実機デモンストレーションの詳細レポート。参加者のコメントと投資家の反応について報告。

Yanko Design – This Machine Extracts Gasoline From Thin Air(外部)
デザイン業界の視点からAircela技術を評価。モジュラー設計の利点と分散型燃料生産の可能性について詳述。

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TaTsu
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