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アメリカ政府による”言葉狩り”の実態 ー 子育て支援プログラムから消される”差別”や”ジェンダー”の文字

 - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-02-07 11:19 by admin

アメリカ政府が管理するデータベースから、多様性や公平性に関する言葉が意図的に削除されている実態が、プログラミングの共有プラットフォーム「GitHub」の作業記録から明らかになりました。特に米国保健福祉省が運営する「Head Start」という大規模な子育て支援プログラムのデータベースで、「差別」「ジェンダー」といった社会的な課題を表す言葉が次々と削除され、それらの情報を検索する機能まで使えなくされています

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【背景】

2024年11月、トランプ氏は政権移行計画「Project 2025」を発表し、続く12月にはHeritage Foundationが連邦政府機関からのDEI(多様性・公平性・包括性)関連プログラムの撤廃を提言しました。2025年1月20日の大統領就任直後、トランプ大統領は「過激で無駄な政府DEIプログラムの終了」に関する大統領令(EO 14151)を発令。翌21日には「違法な差別の終了とメリットベースの機会の回復」に関する大統領令(EO 14173)を発令しました。これらの大統領令により、連邦政府機関におけるDEIプログラムは即時停止となり、総額260万ドル以上のDEI関連の研修・サービス契約が解除されました。また、政府文書からDEI関連用語を削除する指示が出されました。この政策変更は、年間予算約120億ドルのHead Startプログラムにも影響を及ぼし、GitHubの作業記録から確認できる「Remove-DEI」プロジェクトを通じて、データベースからの関連用語の削除と検索機能の改変が実施されています。これらの一連の政策は、メリットベース(実力主義)への回帰を目的として実施されたことが、大統領令の文面から確認できます。

【編集部解説】

私たちが目にするウェブサイトやアプリの裏側では、プログラマーたちが日々システムを改良しています。その作業記録は通常、一般の人々の目に触れることはありません。しかし今回、政府のプログラマーたちによる「言葉狩り」とも言える作業が、GitHubという公開プラットフォームで行われていたことで、その実態が明るみに出ました。
特に懸念されるのは、この削除作業が単なる言葉の書き換えにとどまらず、システムの根幹にまで及んでいることです。例えば「体系的な差別を受けている家族」という情報を探そうとしても、検索機能自体が無効化されているため、必要な支援情報にたどり着けなくなっています。

【編集部追記】

「言葉自体がデータから削除される」というのは、私は非常に深刻な出来事だと解釈しています。人間の世界に対する認識は言語に現れ一つの言葉が消えることは世界に対する人間の認識が変わることを意味していると考えています。今回の事例はデジタル化によって編集や削除が容易なプラットフォームが確立された結果とも考えられます。また、今後生成AIの学習データにもこのような言葉そのものが無くなることは非常に大きな影響を与えると考えられます。人間にとって言語とは世界の認識の体系であり、なおかつ次世代に向けたメッセージであり人間の文化的活動の根幹とも呼べるものです。個人としてはこのような事例はポリティカルコレクトレスが重視される社会の中でさらに増えてくるものと筆者は考えております。

 

【用語解説】

Head Startプログラムの概要

Head Startプログラムは、アメリカ全土で展開される包括的な子育て支援制度です。年間約1.8兆円(120億ドル)の予算を投じ、以下のような多岐にわたる支援を提供しています:

主な支援内容

  • 教育支援
    3歳から5歳児への就学前教育を提供し、子どもの認知能力や社会性を育てます。
  • 健康管理
    定期的な健康診断や歯科検診、栄養バランスの取れた給食の提供など、子どもの健康を総合的にサポートします。
  • 家族支援
    専門スタッフが各家庭に寄り添い、子育ての悩みや生活上の課題解決を支援します。
  • 特別支援
    移民家庭、ホームレス家庭、先住民コミュニティなど、特別なニーズを持つ家族向けの支援も行っています。
  • 早期支援
    妊婦への出産前ケアから3歳までの乳幼児の発達支援まで、早期からの包括的なサポートを提供します。

【参考リンク】

  1. GitHubが明かす連邦データベースの言葉狩りの実態(外部)
    404 Mediaによる調査報告。GitHubのコミットログから明らかになった政府による組織的な情報削除の詳細
  2. Head Startプログラム公式サイト(外部)
    米国保健福祉省による子育て支援プログラムの概要と詳細な支援内容の説明

このプログラムの特徴は、支援を必要とする全ての子どもと家族に平等な機会を提供することにあります。しかし、今回の「言葉狩り」により、特に支援を必要とする人々の存在が見えにくくなり、結果として適切な支援が届かなくなる可能性があります。さらに、他の政府機関でも同様の削除作業が行われている可能性を示す報告が複数あり、社会支援システム全体への影響が懸念されています。

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野村貴之
理学と哲学が好きです。昔は研究とかしてました。
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