bilibiliが外した本人確認の壁|YouTubeが入口を2倍にした同じ月に

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Googleで優先するソースとして追加するボタン

アイコンの左上に、小さな地球儀が乗りました。ただ、今回変わったのはそこではありません。bilibiliが国際版アプリで外したのは、海外から投稿者として参加するときの本人確認です。YouTubeが収益化の入口を2倍に引き上げると発表した、同じ月のことでした。


中国の動画共有サービスbilibiliは2026年8月19日、グローバル版アプリの提供を開始したと同社のXアカウントで発表した。今回配信が始まったのはAndroid版のみで、日本のGoogle Playからもダウンロードできる。iOS版は近日中に提供する予定としている。

グローバル版の特徴として同社は、世界中の動画を視聴できること、各国のユーザー向けの最適化、本人確認書類の提出が不要な簡易なサインアップの3点を挙げた。アイコンは従来のアプリと同じピンク色だが、左上に地球儀のマークが入る点が異なる。不具合や要望のフィードバックは公式Discordサーバで受け付ける。

対応国は順次拡大し、ローカライズの改善や機能追加も続けるとしている。

From: 文献リンクbilibili Creator Hub(@bilibili_create)の投稿(2026年8月19日)

【編集部解説】

外れたのは、アイコンの地球儀ではない

新しいアイコンは、これまでと同じピンク色の左上に小さな地球儀が乗っただけです。見た目の変更としては、ほとんど気づかれない程度のものでしょう。

けれど今回、変わったのはアイコンだけではありません。bilibili Creator Hubを名乗る海外クリエイター向けのXアカウントは、国際版では本人確認なしでサインアップできると案内しています。

ここは正確に読む必要があります。これまで「動画を見るだけでパスポートが必要だった」わけではありません。bilibiliは現在も、検索と閲覧だけなら登録不要としています。2017年に海外ユーザーへ身分証類の提出を求めた制度も、対象は動画を投稿する側で、視聴やコメントのみの利用者は対象外とされていました。

つまり今回動いたのは、視聴の解禁ではなく、アカウントを作り、投稿者として参加するまでの摩擦のほうです。本体側には2026年1〜3月期で月間平均3億7600万人超の利用者がいます。そのコミュニティへ海外から参加する手続きが軽くなった、と捉えるのが実態に近いでしょう。

「新登場」ではなく「再登場」である

Google Playの表示を見ると、このアプリは真新しいものではありません。累計ダウンロードは8月21日の報道時点で500万以上、8月24日の確認時点で1000万以上です。これは段階的な閾値表示なので、数日間の純増数を意味するものではありません。同じパッケージには2021年からの旧版履歴も残っており、新しいパッケージを一から公開したわけではないことがわかります。

Semaforは今回を、以前に提供を終えた国際版アプリの再投入と報じています。ただし、2025年に提供を終えたアプリと現行パッケージが同一であると、bilibili自身が告知した資料までは見当たりません。ここは報道として受け取っておくのが妥当です。

紛らわしいのが、東南アジアで少なくとも2021年から提供されてきた青いアイコンのアプリです。こちらはライセンス取得済みのアニメを前面に出しつつ、UGCも扱う別系統でした。今回のピンク+地球儀とは、分けて考える必要があります。

アプリ1本の話ではなかった

Semaforによれば、英語版ウェブサイトの準備に加え、ロサンゼルス、ロンドン、メキシコシティ、サンパウロ、イスタンブール、東京でコミュニティ運用の人材を募集しているとのことです。このうち東京のCreator & Community Operations Manager職と、シンガポールの多言語・多文化対応AIモデレーションを担う職は、bilibili Group自身の求人としても確認できます。

日本は、Google Playの配信対象国の一つであると同時に、現地運用の拠点として名前が挙がった都市の一つです。ただし、この採用がアプリの日本語ローカライズとどう結びつくかまでは公表されていません。

同じ月に、方向の違う二つの改定があった

2026年8月10日、YouTubeがパートナープログラムの改定を発表しました。2027年2月1日から、新規参加者に求める条件が登録者1,000人に加えて長尺は年4,000時間から8,000時間へ、ショートは90日1,000万回から2,000万回へ、いずれも2倍になります。

既存の参加者に新基準は適用されませんが、ショートだけは別で、直近90日に1,000万回の視聴がないと広告とサブスクの分配が止まります。YouTubeは2027年のクリエイターへの総支払額が2026年を上回ると見込んでいます。総額は増やしつつ、分配に加わる入口は厳しくする、という改定です。

その9日後に、bilibiliは参加の入口を下げました。同じ月に、二つのプラットフォームが違う向きの操作をしたことになります。

比べるべきは「あるかないか」ではない

YouTubeは分配の比率を公開しています。動画再生ページ広告は純広告収入の55%、ショートはクリエイタープールから割り当てられた額の45%。Premium系はまず所定の割合(Premiumは純サブスク収益の30%、Premium Liteは60%)を専用プールに拠出し、その割当額に長尺55%・ショート45%が適用されます。どこからどう計算されるかが、外から追える形になっているわけです。

bilibiliにも、投稿動画に付くプラットフォーム広告からUP主へ収益を分ける仕組みがあります。動画枠下の広告分成は以前からあり、さらに2026年4月10日には「再生ページ一時停止広告」が加わりました。視聴者が手動で停止したときにプレーヤー下部へ表示されるもので、UP主は管理画面から自分でオフにできます。その広告分成は動画激励収益の一部として扱われ、基礎激励と合算して表示されます。

2026年5月の公式説明によれば、動画の激励収益は基礎激励と広告分成で構成されます。基礎激励には、直近およそ6か月のプラットフォーム収入が月平均5,000元未満という対象条件と、月2,000元の上限があります。一方、広告分成にはこの上限が適用されません。上限つきの下支えと、上限なしの分配が同居する二階建ての設計です。

ここに、bilibiliが2014年から掲げてきた約束が効いています。「bilibiliが購入した正規版の新作アニメには、動画の貼片広告を入れない」というものです。2016年に権利者側の要求による例外はあったものの、その後も新作アニメに一般的なプレロール広告を置かない方針を掲げてきました。2025年通期でbilibiliは初の通年黒字となり、広告収入は100.6億元、年間総収入の約33%を占めています。プレロール広告を避けながら、動画の周辺や一時停止時に広告面を広げてきた形です。

したがって両者の違いは、広告分配の有無ではありません。YouTubeが55%・45%という共通の率を明示するのに対し、bilibiliは基礎激励、広告分成、ブランド案件、ライブ、充電といった複数の経路を組み合わせ、確認できる公式資料の範囲では一律の分配率を示していない。比較すべきは単価ではなく、この設計と開示の違いのほうです。

入口と出口は、並行して動いている

海外クリエイター向けの受け皿は、まだ整備の途中にあります。ブランドとクリエイターをつなぐマーケットプレイスは、Semaforが確認した資料で開発中とされており、開始時期も条件もこれから示されることになります。海外のユーザー数も、海外向けの収益原資の規模も公表されていないため、その市場がどれくらいの大きさになるのかは、現時点では外から測れません

一方で、人が集まったあとに向き合うことになる制度もあります。EUのデジタルサービス法では、域内の月間平均アクティブ利用者4,500万人以上が超大規模プラットフォームの指定基準となり、欧州委員会から指定を受けると原則4か月以内にリスク評価などの追加義務への対応が必要になります。シンガポールで多言語・多文化対応のモデレーション基盤を担う人材を探していることは、その種の体制づくりが始まっていることを示す材料ではあります。ただし、この採用が特定の規制対応を目的としているとは公表されていません。

日本から見ると、これは往復である

画面をコメントが流れていく弾幕は、ニコニコ動画が広めた形式を受け継いだものです。bilibiliが育ったのは、日本のアニメ・マンガ・ゲーム文化の土壌の上でした。日本のカルチャーが海を渡って中国で独自の共同体を作り、その共同体が今度は日本語のアプリストアに戻ってきた。往復に十数年かかったことになります。

MrBeastのように、本体サイトへ動画を出した欧米のクリエイターもすでに現れています。今回はその流れを、制度として通しやすくする動きです。日本のクリエイターにとっては、視聴者を一から集め直す先が一つ増えたことを意味します。そこで何をどう受け取れるのかは、これから示される設計を待つことになります。

まずは入りやすくなった。それが今回の一番大きな変化です。iOS版と対応国の拡大、そして8月27日に控えるQ2決算で、この試みがどのくらいの本気度で語られるのか。地球儀のマークがついた小さなアイコンの中身は、これから数か月で埋まっていきます。

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動画プラットフォームの原点をたどった記事。弾幕という形式がどこで分かれたのかを考える手がかりになる。

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アプリ配信をめぐる欧州の制度変更を扱った記事。国境をまたぐ配信の条件がどう設計されるかという点で通じる。

【編集部後記】

Google Playの開発者情報を開くと、この国際版の提供元はシンガポールの法人でした。上海で生まれ、中国の若者文化を育ててきた会社が世界へ出るとき、その窓口はシンガポールに置かれる。ByteDanceがTikTokで通ったのと同じ形です。

この配置が、これから欧州や日本の制度と向き合うときにどう働くのか。アプリにどんな機能が加わるかよりも、そちらのほうが長く効いてくるはずです。


【用語解説】

弾幕(だんまく)
動画の画面上を右から左へ流れていく視聴者のコメント。再生位置に同期して表示されるため、時間差で見ている人どうしが同じ場面で反応を共有しているように見える。bilibiliを象徴する機能である。

UP主(ユーピーぬし)
bilibiliの動画投稿者を指す呼称。「アップロード主」に由来する。YouTuberにあたる存在だが、収益の得方はYouTubeとは異なる仕組みになっている。

UGC
User Generated Contentの略。企業ではなく一般の利用者が作って投稿したコンテンツを指す。ライセンスを取得して配信するアニメや映画とは区別される。

貼片広告(プレロール広告)
動画の本編が始まる前に再生される広告。bilibiliは2014年から、購入した正規版の新作アニメにこの形式を用いない方針を掲げてきた。

創作激励/基礎激励
bilibiliがUP主へ直接支給する収益支援の枠組み。このうち基礎激励には、直近およそ6か月のプラットフォーム収入が月平均5,000元未満という対象条件と、月2,000元の上限がある。

広告分成
動画に付随するプラットフォーム広告から、UP主へ収益を分ける仕組み。動画枠下の広告に加え、2026年4月からは再生ページの一時停止広告も対象になった。基礎激励のような上限は設けられていない。

YouTubeパートナープログラム
YouTubeの収益化制度。英語の頭文字からYPPと略される。参加すると広告収益やサブスクリプション収益の分配を受けられる。2027年2月1日から、新規参加者に求める視聴実績が2倍に引き上げられる。

クリエイタープール
YouTubeショートの収益分配で用いられる仕組み。ショートの合間に表示された広告の収益をいったん一つの原資にまとめ、視聴回数のシェアに応じてクリエイターへ割り当てる。

超大規模プラットフォーム
EUのデジタルサービス法に基づく区分で、英語ではVLOPと呼ばれる。域内の月間平均アクティブ利用者が4,500万人以上であることが指定の基準となり、欧州委員会から指定を受けると、リスク評価などの追加義務への対応が求められる。

【参考リンク】

bilibili(外部)
上海発の動画共有サービス。2009年に開設され、アニメやゲームから技術、生活文化まで幅広い分野の動画を扱っている。

bilibili 国際版アプリ(Google Play)(外部)
今回配信が始まった国際版アプリのAndroid向け掲載ページ。開発者情報はBILIBILI SINGAPORE PTE. LTD.。

bilibili Investor Relations(外部)
決算リリースと開示資料の一覧。2026年第2四半期の決算は8月27日、米国市場の取引開始前に発表される。

bilibili Studio(外部)
海外クリエイターに向けた管理画面。投稿の管理に加え、動画を中国語へ自動で翻訳する機能を提供している。

YouTube パートナー プログラムの新しい収益機会と変更点(外部)
2026年8月10日公開の公式ブログ。2027年2月から適用される収益化制度の変更点と、その狙いを説明している。

YouTube パートナーの収益の概要(外部)
広告収益の分配率を示す公式ヘルプ。長尺は純広告収入の55%、ショートはプール割当額の45%と明記されている。

【参考記事】

Exclusive: China’s YouTube, Bilibili, plans global expansion, English-language site(外部)
今回が提供を終えた国際版の再投入であること、英語版サイトの準備、東京を含む6都市での人材募集を報じた独自記事。

Chinese video platform Bilibili is going global(外部)
本人確認の撤廃を最大の変更点と位置づけたうえで、TikTokと同種の論点が浮上しうると指摘している記事。

Bilibili Launches New Global Android App In Major International Push(外部)
ピンク地に地球儀のアイコンが今回の国際版であり、同国で以前から配信されてきた青いアイコンとは別物だと整理する。

Bilibili Inc. Announces Fourth Quarter and Fiscal Year 2025 Financial Results(外部)
2025年通期の総収入303.5億元、広告収入100.6億元、純利益11.9億元と、初の通年黒字を示した決算リリース。

YouTube、収益化基準を2027年に大幅引き上げへ 新規参加条件が従来の2倍に(外部)
長尺8,000時間、ショート2,000万回という引き上げ幅に加え、既存参加者に及ぶ維持基準まで整理している記事。

中国の動画サイト「bilibili」にグローバル版アプリ 日本でも配信開始 まずはAndroidから(外部)
グローバル版アプリの日本での配信開始を伝えた記事。本記事の要約は、この記事の内容にもとづいて作成している。

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山本 達也 代表社員
合同会社デジタルの窓口 代表。ウェブ解析士。生成AI・サイバーセキュリティ・ 宇宙開発領域を中心に執筆。

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