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AI関連求人が過去最高125,000件に、専門技術者より「AIツール活用スキル」が主流

AI関連求人が過去最高125,000件に、専門技術者より「AIツール活用スキル」が主流 - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-07-01 07:57 by admin

CompTIAが2025年6月30日に発表した年次Cyberstates労働力レポートによると、AIスキルを求める求人が2025年6月に過去最高の125,000件に達した。

しかし専門的なAI職種の採用は前年比75%増にとどまり、大企業での限定的な採用が中心である。求められるAIスキルはChatGPTを使ったマーケティング文章作成やコード生成・デバッグ支援といったユーザーレベルの活用が主流で、LLM構築やモデル開発といった高度な技術は少数である。

CompTIAは今後10年間で技術職が全米雇用全体の約2倍の成長率で拡大すると予測し、データサイエンス・分析、サイバーセキュリティ分析・エンジニアリング、ソフトウェア開発・エンジニアリングが主要な成長分野になるとしている。別の月次レポートでは、AI関連求人が年初来で前年同期比117%増となっていることも明らかになった。

From: 文献リンクWant a job? Just put ‘AI skills’ on your resume

【編集部解説】

今回のCompTIAレポートが示すデータは、AI人材市場の構造的変化を浮き彫りにしています。注目すべきは、AI関連求人が過去最高の125,000件という急激な伸びを見せる一方で、その大部分が高度な技術者ではなく「AIツールを使える人材」を求めている点です。

これは従来の「プログラマー不足」とは根本的に異なる現象といえるでしょう。ChatGPTやCopilotといったツールが普及したことで、企業が求めるAIスキルのハードルが大幅に下がったのです。マーケティング担当者がAIで文章を生成したり、開発者がコード補完ツールを活用したりする程度の「実用レベル」で十分な求人が圧倒的多数を占めています。

一方で、真の専門家である機械学習エンジニアやAIアーキテクトの需要は75%増にとどまっています。これは絶対数が少ないためで、高度な専門性を持つ人材は依然として希少価値が高く、「時には驚異的な給与」で雇用されているのが実情です。

CompTIAの月次データを見ると、2025年年初来でAI関連求人が前年同期比117%増となっており、この傾向が継続していることが確認できます。特に金融・保険業界では新規技術職求人が21%増、小売業界では16%増となるなど、従来の技術企業以外でもAI人材の需要が急拡大しています。

この二極化は労働市場に興味深い影響をもたらしています。従来であれば数年かけてプログラミングを学ぶ必要があった分野で、今では数週間のAIツール習得で参入可能な職種が急増しているのです。実際、技術職求人の約半数が4年制大学学位を必須とせず、実務経験や業界認定資格を重視する傾向が続いています。

ただし、この変化には潜在的なリスクも存在します。AIツールに依存しすぎることで、基礎的な技術理解が不足した「表面的なAI人材」が量産される可能性があります。また、企業側も「AI経験必須」と記載しながら、具体的に何を求めているのか明確でないケースが多いという指摘もあります。

長期的な視点では、この傾向は技術職の民主化を促進する一方で、真の専門性を持つ人材とツール利用者の格差を拡大させる可能性があります。今後10年間で技術職が全米平均の2倍の成長率を示すと予測される中、継続的な学習能力こそが最も重要なスキルになるでしょう。

【用語解説】

CompTIA(Computing Technology Industry Association)
米国に本部を置く非営利のIT業界団体。ベンダーニュートラル(特定企業に依存しない)なIT認定資格を提供し、世界的に認知されている。A+、Security+、Network+などの資格で知られる。

Cyberstates労働力レポート
CompTIAが毎年発表する米国の技術労働市場に関する包括的な調査報告書。雇用動向、給与水準、スキル需要などを分析し、IT業界の現状と将来予測を提供する。

LLM(Large Language Model)
大規模言語モデルの略称。膨大なテキストデータで訓練された人工知能モデルで、自然言語の理解と生成を行う。ChatGPTやGPT-4などが代表例。

プロンプト
AI(特にChatGPTなどの言語モデル)に対する指示や質問文。効果的なプロンプトを作成するスキルは「プロンプトエンジニアリング」と呼ばれる。

ベンダーニュートラル
特定のメーカーや企業の製品に依存しない技術や認定資格のこと。CompTIA認定資格は特定のソフトウェアやハードウェアに縛られない汎用的なスキルを証明する。

Lightcast
労働市場データ分析を専門とする企業。求人情報、給与データ、スキル需要などの分析サービスを提供し、CompTIAのレポートでもデータソースとして活用されている。

【参考リンク】

CompTIA公式サイト(外部)
米国の非営利IT業界団体CompTIAの公式サイト。各種IT認定資格の詳細情報、試験スケジュール、学習リソースを提供している。

ChatGPT公式サイト(外部)
OpenAI社が開発したAIチャットボットChatGPTの公式サイト。無料版と有料版があり、テキスト生成、質問応答、コード作成などが可能。

GitHub Copilot公式サイト(外部)
Microsoft傘下のGitHubが提供するAIコーディングアシスタント。コード補完、デバッグ支援、プログラミング学習支援機能を提供する。

CompTIA日本支社(外部)
CompTIAの日本法人サイト。日本語での資格情報、学習教材、試験会場情報を提供している。

【参考動画】

【参考記事】

AI Jobs 2025: Top Roles, Skills & Hiring Trends Reshaping Work(外部)
2025年のAI関連職種の動向を分析し、ソフトウェア開発職の9.5%がAI関連となり、金融、保険、マーケティング業界でのAI人材需要が急増していることを報告。

2025 technology industry outlook – Deloitte(外部)
デロイトによる2025年技術業界展望レポート。生成AIとサイバーセキュリティの統合、量子コンピューティングへの対応、地政学的リスクへの対処などを分析。

Uneven tech jobs report clouded by a confluence of factors, CompTIA finds(外部)
CompTIAの2025年6月レポートで、AI関連求人が年初来117%増となり、技術職求人の約半数が4年制大学学位を必須としていないことを報告。

【編集部後記】

みなさんは普段、どのようなAIツールを使っていますか?ChatGPTで文章を書いたり、Copilotでコードを補完したりする経験があるかもしれません。

今回のレポートを見ると、そうした「普通の使い方」こそが、実は最も求められているスキルなのかもしれません。高度な機械学習の知識がなくても、AIを日常業務に活かせる人材が重宝される時代。みなさんの現在のAI活用レベルは、転職市場でどう評価されるでしょうか?また、今後身につけたいAIスキルがあれば、ぜひコメントで教えてください。

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TaTsu
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