Last Updated on 2025-01-06 16:38 by admin
オープンソースCMSの代表格WordPressを巡り、開発元のAutomattic社とホスティング大手WP Engine社の対立が深刻化しています。この騒動は、オープンソースソフトウェアの商業利用における根本的な課題を浮き彫りにしています。
主要な当事者
- Automattic社:WordPressの開発元(評価額75億ドル)
- Matt Mullenweg氏:WordPress共同創設者、Automattic社CEO
- WP Engine社:WordPressホスティング企業(評価額5億〜10億ドル)
対立の経過
2024年9月17日
- MulenwegがWordCampでWP Engineを「WordPressのがん」と公に批判
- WordPressコミュニティ内で大きな波紋を呼ぶ
2024年9月23日
- 両社が相互に停止要請書を送付
- AutomatticがWP Engineに対し収益の8%のライセンス料を要求
2024年9月25日
- WordPress.orgリソースへのアクセス制限が開始
- プラグインの更新や機能に影響
2024年12月
- カリフォルニア地方裁判所がAutomatticに差し止め命令
- WordPress.orgリソースへのアクセス制限の停止を命令
影響と現状
- Automattic社の従業員159名(全体の8.4%)が退職
- WordCampシドニーでのWP Engineのスポンサーシップが取り消し
- BlackRockがAutomatticへの投資評価を10%引き下げ
- Advanced Custom Fields (ACF)がSecure Custom Fieldsに改名
この対立は、インターネットの約半数のウェブサイトを支えるWordPressエコシステムに大きな影響を与えており、オープンソースコミュニティ全体にとって重要な転換点となっています。
from:The Automattic vs WP Engine WordPress wars are getting really annoying
【編集部追記】
オープンソースとビジネスの対立から見えてくる課題
今回のWordPress騒動は、オープンソースソフトウェアの商業利用をめぐる根本的な課題を浮き彫りにしています。
WordPressは現在、インターネット上のウェブサイトの約半数を支えており、その影響力は計り知れません。この事態は、単なる企業間の争いを超えて、オープンソースコミュニティ全体に大きな波紋を投げかけています。
コミュニティと商業利用の均衡
オープンソースプロジェクトの持続可能性において、商業利用とコミュニティへの還元のバランスは常に課題となってきました。今回の対立は、その典型的な例と言えるでしょう。
Automatticが要求した収益の8%という数字は、オープンソースの商業利用における適正な対価とは何かという本質的な問いを投げかけています。
中央集権化のリスク
WordPress.orgへのアクセス遮断という事態は、中央集権化されたインフラストラクチャーへの依存リスクを明確に示しました。これは、オープンソースプロジェクトのガバナンスモデルを見直す契機となる可能性があります。
技術コミュニティへの影響
Automatticの従業員159名が退職したことは、技術コミュニティにおける価値観の対立が、実際の人材流出につながることを示しています。これは、オープンソースプロジェクトの運営において、リーダーシップの在り方を問い直す機会となっています。
今後の展望
この騒動は、オープンソースソフトウェアの将来に関する重要な示唆を含んでいます。特に以下の点に注目が集まっています:
- コミュニティガバナンスの再構築
- 商業利用のライセンスモデルの見直し
- 分散型インフラストラクチャーの重要性
- オープンソースの持続可能性
読者への影響
WordPressを利用している企業や個人は、今後のプラットフォームの安定性や、セキュリティアップデートの提供体制について、より慎重な検討が必要になるかもしれません。
また、オープンソースプロジェクトへの依存度が高い企業は、リスク分散の観点から、代替ソリューションの検討も視野に入れる必要が出てくるかもしれません。