AI検索エンジンを提供するPerplexity社が、データ接続プラットフォームのCarbon社を買収したことを2024年12月20日に発表した。買収金額は非公開。
Perplexityは2023年から2024年にかけて複数回の資金調達を実施し、最新の評価額は90億ドル(約1.3兆円)に達している。DeepMindとOpenAIの元研究者であるAravind Srinivas氏が創業した同社は、2024年にPages、Spaces、ショッピング機能など複数の新機能をリリースしている。
買収されたCarbon社は、企業の内部データをLLM(大規模言語モデル)に接続するためのフレームワークを開発。同社の技術は、Google Drive、Microsoft 365、Notion、Confluenceなど20種類以上のデータコネクタと、テキスト、音声、動画を含む20以上のファイル形式に対応している。
この買収により、PerplexityのユーザーはGoogle Docs、Notion、Hubspot、Slackなどの社内データソースを直接AI検索に接続できるようになる。Carbonの既存サービスは2025年3月31日に終了し、現在のユーザーは別のサービスへの移行が必要となる。
【編集部解説】
Perplexityによるこの買収は、AIサーチエンジンの進化における重要な転換点を示しています。
従来のAI検索は、主にウェブ上の公開情報を対象としていましたが、企業内で発生する膨大な非公開データへのアクセスができないという大きな課題がありました。
Carbonの技術を統合することで、企業の社内文書、チャット履歴、データベースなどを横断的に検索できるようになります。これは単なる検索機能の拡張ではなく、企業における知識管理の在り方を根本から変える可能性を秘めています。
技術的な特徴
特筆すべきは、Carbonが開発した「RAG(検索拡張生成)」と呼ばれる技術です。この技術により、LLMは外部データソースから必要な情報を取得し、より正確で文脈に即した回答を生成できるようになります。
従来のエンタープライズサーチでは、ユーザーが検索したい情報がどこに保存されているかを把握している必要がありました。しかし、この新しいアプローチでは、システムが自動的に適切なデータソースを特定し、必要な情報を抽出します。
市場への影響
この買収は、エンタープライズAI市場における重要な動きを示しています。OpenAIが最近の66億ドルの資金調達で、競合のGlean Searchへの投資を制限したという報道からも、エンタープライズサーチ市場の重要性が伺えます。
セキュリティと課題
一方で、企業の機密データを扱うことによる新たな課題も浮上しています。Perplexityは、すべての内部データと通信を暗号化し、許可されていないユーザーのアクセスを防ぐセキュリティ対策を実装すると表明していますが、企業の知的財産保護という観点では、さらなる検証が必要でしょう。
今後の展望
2025年初頭からの本格展開が予定されており、これによって企業のワークフローは大きく変化する可能性があります。特に、カスタマーサービス、ドキュメント処理、画像処理、レコメンデーションエンジンなどの分野で、革新的な活用が期待されています。
この技術革新は、企業における情報アクセスの民主化をもたらす可能性があります。従来は専門家しかアクセスできなかった情報や知見が、より多くの従業員に開放されることで、組織全体の生産性向上につながるかもしれません。
ただし、この変革を成功させるためには、適切なガバナンス体制の構築と、従業員のデジタルリテラシー向上が不可欠となるでしょう。