Google Taara:光ビームで実現する次世代インターネット通信 – 秒速20Gbps・設置わずか数時間の革新技術

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Last Updated on 2025-03-02 07:13 by admin

GoogleのX部門が開発中の「Taara」は、光ビームを使って空中でデータを伝送するシリコンフォトニックチップである

最新の情報によると、屋外環境において1kmの距離で10Gbpsの速度を達成しており、最終目標として最大20Gbpsの速度で最大20kmの距離をカバーできる可能性がある。

初期バージョンの「Taara Lightbridge」は約76cmの高さがあり、ビームの方向を調整するために複雑な鏡とハードウェアが必要だったが、新世代のチップでは高度なソフトウェアによるビーム制御が可能になり、サイズも13mmほどの爪程度にまで小型化された。

Taaraは赤外線と可視光の間のスペクトル領域を利用し、既存の無線通信とは干渉せずに「ほぼ無限の帯域幅」を確保できるとされている。

既に12カ国以上で数百のリンクが展開されており、アフリカのコンゴ川を挟んだブラザビルとキンシャサの間では、キンシャサ側のインターネットコストを5分の1に削減することに成功している。Taaraの新チップは2026年に利用可能になる予定だが、一般消費者への普及にはさらに時間がかかる見込みである。

from:Google Taara could deliver internet at the speed of light

【編集部解説】

皆さんは、インターネット接続のために地面に埋められた光ファイバーケーブルや、空中を飛び交う電波に頼っていることをご存知でしょうか。しかし、GoogleのX部門(旧Google X)が開発中の「Taara」は、そんな常識を覆す可能性を秘めています。

Taaraの革新性は、目に見えない光ビームを使って空中でデータを伝送するという点にあります。これは単なるSF的アイデアではなく、既にアフリカのコンゴ川を挟んだブラザビルとキンシャサの間で実用化され、キンシャサ側のインターネットコストを5分の1に削減することに成功しています。

最新のブレークスルーは、従来の「信号機サイズ」から「爪サイズ」への小型化です。初期のTaara Lightbridgeは2.5フィート(約76cm)の高さがあり、ビームの方向を調整するために複雑な鏡やセンサーを必要としていました。しかし、新しいTaaraチップは13mmほどの大きさに縮小され、物理的な部品ではなくソフトウェアによってビームを制御します。

この小型化によって、設置の容易さとコスト削減が実現します。現在のTaara Lightbridgeシステムは1セットあたり約3万ドル(約450万円)かかりますが、新チップによってこのコストは大幅に削減される見込みです。

Taaraが使用しているのは「自由空間光通信(Free Space Optical Communication)」と呼ばれる技術です。赤外線と可視光の間のスペクトル領域を利用することで、既存の無線通信とは干渉せず、「ほぼ無限の帯域幅」を確保できるとされています。

特筆すべきは、この技術が従来の5Gなどの無線通信と比較して、都市部などの人口密集地域で「10倍、場合によっては100倍の帯域幅」を提供できる可能性があるという点です。X部門のアストロ・テラー氏は、電波帯域が混雑する中、この技術が将来の「7G」ネットワークの基盤となる可能性も示唆しています。

Taaraはすでに様々な場所で実証実験が行われています。海底ケーブルが切断されたカリブ海の島々や、5Gサポートを待つインドの都市部での利用に加え、2024年のCoachellaミュージックフェスティバルでは、過負荷になりがちな携帯ネットワークを補強するためにも使用されました。

Taaraの最大のメリットは、従来の光ファイバーケーブルの敷設が困難な地域でも高速インターネットを提供できる点です。山間部や離島、紛争地域など、物理的なインフラ構築が難しい場所でのデジタルデバイド解消に貢献する可能性があります。

一方で課題もあります。光ビームを使用する通信は、霧や雨などの気象条件に影響を受けやすく、鳥が通過するだけでも一時的に接続が中断する可能性があります。これらの課題に対して、Taaraチームは機械学習を活用したビーム調整技術や冗長性の確保などで対応を進めているとされています。

【用語解説】

  • シリコンフォトニックチップ
    電子回路と光回路を同一のシリコン基板上に集積した半導体チップ。従来の電子回路より高速でデータを伝送でき、消費電力も少ないのが特徴です。一般的な電子回路が「電気」でデータを伝えるのに対し、「光」を使ってデータを伝えると考えるとわかりやすいでしょう。
  • 自由空間光通信(Free Space Optical Communication)
    光ファイバーケーブルを使わず、空気中や宇宙空間などの「自由空間」を通して光でデータを伝送する通信技術。簡単に言えば、「ケーブルなしの光ファイバー」のようなものです。
  • 光学位相アレイ
    複数の小さな光エミッター(発光素子)を配列し、それぞれの発光タイミングをソフトウェアで制御することで、光の方向や形を操作する技術。
  • X(旧Google X)
    Googleの親会社Alphabetが運営する研究開発機関で、革新的な「ムーンショット」プロジェクトを手がけています。自動運転車のWaymoなど、従来の常識を覆す技術開発を行っています。

【参考リンク】

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