小惑星2024 YR4、地球衝突回避も月への衝突リスク1.7%に上昇 — NASAが最新観測結果を発表

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小惑星「2024 YR4」は2024年12月27日にチリのATLAS(小惑星地球衝突最終警報システム)望遠鏡によって発見された。この小惑星は当初、2032年12月22日に地球に衝突する可能性があるとして注目を集めた。

発見から約1か月後の2025年1月27日の時点で、衝突確率は1%を超え、その後2025年2月17日には2%、さらに2月18日には3.1%(NASA評価)、2.8%(ESA評価)にまで上昇した。これは小惑星衝突のリスク指標である「トリノスケール」において19年ぶりにレベル2以上の評価を受けるほどの高い確率だった。

この小惑星の推定直径は40~90メートルで、もし衝突した場合、放出されるエネルギーは8メガトン(広島原爆の約500倍)に達し、1つの都市に大規模災害をもたらす可能性があった。

しかし、世界中の天文台による追加観測や過去の観測データの見直しが進むにつれ、衝突確率は徐々に低下。2025年2月19日には1.5%、2月20日には0.3%、2月25日には0.0017%(NASA評価)、0.001%(ESA評価)にまで下がり、現在では「事実上ゼロ」となっている。NASAの地球近傍天体研究センターのディレクター、ポール・チョーダス氏は「これは我々が最初から予想していた結果です」と述べている。

一方で、この小惑星が月に衝突する確率は現在1.7%と報告されており、月面に新たなクレーターが形成される可能性が出てきている。

from:Earth Dodges ‘City-Killer’ Asteroid — But NASA Says The Moon Might Not Be So Lucky

【編集部解説】

小惑星2024 YR4の地球衝突リスクについて、最新の観測データにより大きな進展がありました。当初懸念されていた2032年の地球衝突の可能性は、現在ではほぼゼロになったことがNASAと欧州宇宙機関(ESA)から発表されています。

この小惑星は2024年12月27日にチリのATLAS望遠鏡によって初めて発見されました。発見当初から2032年12月22日に地球に衝突する可能性が指摘され、その確率は徐々に上昇。2025年2月18日には、NASAの評価で3.1%、ESAの評価で2.8%という過去20年で最も高い衝突確率を記録しました。

しかし、世界中の天文台による継続的な観測と軌道計算の精緻化により、わずか数日のうちに衝突確率は急激に低下。2月19日には1.5%に、2月20日には0.3%に下がり、2月25日の最新データではNASAの評価で0.0017%(約59,000分の1)、ESAの評価で0.001%まで低下しました。

NASAの地球近傍天体研究センター長ポール・チョーダス氏は「これは我々が最初から予想していた結果です」と述べています。

一方で興味深いことに、この小惑星が月に衝突する確率は現在1.7%と報告されており、月面に新たなクレーターが形成される可能性があります。

小惑星2024 YR4の大きさは推定で直径40〜90メートル(約130〜300フィート)とされており、もし地球に衝突した場合、都市規模の局所的な被害をもたらす可能性がありました。

NASAは今後も観測を継続し、3月にはジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡を使用して小惑星のサイズをより正確に把握する予定です。小惑星2024 YR4は4月末までに地球からの視界から隠れ、次に観測できるのは2028年になると予想されています。

【用語解説】

  • 地球近傍天体(NEO)
    地球に接近する軌道を持つ天体(彗星、小惑星、流星体など)の総称です。地球との距離が近いため、潜在的な衝突リスクがある一方で、宇宙探査の対象としても注目されています。
  • トリノスケール
    小惑星や彗星が地球に衝突する可能性と、衝突した場合の被害を0〜10の11段階で示す指標です。日本の台風や地震の警戒レベルに似た、宇宙からの脅威を評価する「宇宙版警戒レベル」と考えるとわかりやすいでしょう。
  • 小惑星地球衝突最終警報システム(ATLAS)
    地球に接近・衝突する可能性のある小惑星を発見するための観測システムです。現在は世界4カ所(ハワイ2カ所、南アフリカ、チリ)に設置された望遠鏡で全天を監視しています。日本の気象衛星「ひまわり」が常に地球を監視しているように、ATLASは宇宙から地球に迫る危険を常に監視していると考えるとわかりやすいでしょう。
  • ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)
    NASAが中心となって開発した最新の宇宙望遠鏡で、主に赤外線観測を行います。ハッブル宇宙望遠鏡の後継機として2021年12月に打ち上げられました。人間の目では見えない赤外線で宇宙を観測することで、これまで見えなかった宇宙の姿を明らかにしています。

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