Last Updated on 2025-05-07 11:17 by admin
Huaweiが開発した独自OS「HarmonyOS」は、2019年6月に発表されて以来、着実に成長を続けている。Counterpoint Researchによると、HarmonyOSは現在、世界第3位のスマートフォンプラットフォームとなり、世界市場シェアの約4%を獲得している。
特に中国市場では2025年3月時点で17%のシェアを持ち、Appleの16%を上回って第2位のプラットフォームとなった。ただし、Androidは依然として64%のシェアで首位を維持している。
HarmonyOSの最新バージョン「HarmonyOS Next」は、従来版と大きく異なる。以前のHarmonyOSはAndroidライブラリがプリインストールされていたが、HarmonyOS NextはAndroidカーネルを搭載せず、完全に独自開発されたマイクロカーネルベースのシステムとなっている。これにより、Androidアプリとの互換性はなくなったが、Huaweiは独自のエコシステム構築を進めている。
HarmonyOS Nextは2024年10月22日に正式リリースされ、Huawei Mate 60シリーズ、Mate X5シリーズ、MatePad Pro 13.2インチシリーズなどから順次展開されている。2025年にはMate XT Ultimate、Pura Xなど多くの機種に拡大される予定だ。さらにHuaweiは2025年に発売するすべての新デバイスでHarmonyOS Nextを採用すると発表している。
※「2025年から主要な新デバイスに搭載を開始し、順次対象を拡大予定」との見方も
アプリ対応状況については、Google Maps、Chrome、YouTube、Facebook、Instagram、WhatsAppなどの主要アプリが利用可能だが、銀行アプリや多くのストリーミングサービスなどは利用できない状況だ。HarmonyOS Nextは現在10億台以上のデバイスで稼働し、200万人以上の開発者が参加していると報告されている。
Huaweiの消費者向け事業を率いてきたRichard Yu(余承東)CEOは、2023年5月に同部門の会長に就任し、He Gang(何剛)COOが新CEOに就任した。Yuは2012年から消費者向け事業を率い、米国の制裁による打撃からの回復を主導してきた人物である。
from:I tried HarmonyOS. Can it compete with iOS and Android?
【編集部解説】
HarmonyOSの進化は、テクノロジー業界における地政学的緊張の影響と企業の適応力を象徴しています。米国の制裁という逆境から生まれたこのOSは、わずか数年で世界第3位のモバイルプラットフォームに成長しました。特に中国市場では、最新の情報によると、HarmonyOSは17%のシェアを獲得し、Appleの16%を上回る第2位のプラットフォームとなっています。
注目すべきは、HuaweiがHarmonyOS Nextで完全に独自路線に舵を切ったことです。これはAndroidへの依存から脱却し、真の意味での「第3のモバイルOS」を確立しようとする野心的な試みと言えるでしょう。2025年にリリースされるすべてのHuawei製デバイスにHarmonyOS Nextを搭載するという決断は、この方向性を明確に示しています。
HarmonyOS Nextの開発は、単なるAndroidの代替品ではなく、マイクロカーネルベースの独自アーキテクチャを採用することで、デバイスの流暢性を30%向上させ、消費電力を20%削減したと報告されています。これにより、ユーザーインターフェースの応答性や滑らかさが向上し、一部のベータテスターからは「iOSよりも優れている」という評価も出ています。
アプリエコシステムについては、Huaweiは2025年までに10万のネイティブアプリ開発を目標としています。これは同社の回転議長であるXu Zhijun(徐直軍)氏が明言したもので、現在の1.5万アプリから大幅な拡大を目指す野心的な計画です。この目標が達成されれば、ユーザーの基本的なニーズをカバーできるレベルに達するとHuaweiは考えています。
しかし、HarmonyOS Nextへの移行には課題もあります。一部のユーザーは、アプリの互換性の問題から、以前のAndroid互換バージョンに戻すケースも報告されています。特に国際市場では、Googleモバイルサービスなしでのエコシステム構築は依然として大きな障壁となっています。
Huaweiのこの取り組みは、単にスマートフォンOSの開発にとどまらず、IoT、スマートホーム、自動車など幅広いデバイスをカバーする統合プラットフォームを目指しています。これはAppleのエコシステム戦略と類似していますが、中国市場という巨大な基盤を持つ点が強みです。
技術的な観点からは、HarmonyOS Nextはセキュリティ面でも強化されており、アプリに対する9つの権限制限を設けるなど、ユーザーデータの保護に力を入れています。これは、プライバシーへの関心が高まる現代において重要な差別化要因となる可能性があります。
長期的には、HarmonyOSの成功は中国のテクノロジー自立政策の成否を占う重要な指標となるでしょう。また、グローバルなOS市場における競争激化は、AppleやGoogleにとっても革新を促す圧力となり、結果的にユーザーにとってより良いサービスや機能の開発につながる可能性があります。
私たちinnovaTopiaは、この「第3のモバイルOS」の進化を注視し続け、テクノロジーの多様化がもたらす新たな可能性について、読者の皆様と共に考えていきたいと思います。
【用語解説】
HarmonyOS(ハーモニーOS):
中国語では「鸿蒙OS(ホンモンOS)」とも呼ばれる、ファーウェイが開発した独自のオペレーティングシステム。2019年に発表され、スマートフォンだけでなく、IoTデバイス、自動車など幅広いデバイスに対応する統合プラットフォームとして設計されている。
マイクロカーネル:
OSの核となる部分(カーネル)を最小限の機能に限定し、他の機能はユーザー空間で実行する設計思想。家の電気配線に例えると、配線(マイクロカーネル)は基本的な電力供給のみを担当し、各家電(機能)はその上で独立して動作する。これにより安定性とセキュリティが向上する。
MicroG:
GoogleのPlay Serviceの代替となるオープンソースプロジェクト。Androidの基本機能は使えるがGoogleサービスが利用できない端末で、位置情報やプッシュ通知などの機能を実現するためのライブラリ。
エンティティリスト:
米国政府が安全保障上の懸念から取引を制限する企業や団体のリスト。2019年5月にファーウェイが追加され、米国企業との取引が制限された。
【参考リンク】
HUAWEI公式サイト(日本)(外部)
ファーウェイの日本向け公式サイト。スマートフォン、タブレット、ウェアラブルなどの製品情報を提供している。
HarmonyOS公式サイト(外部)
HarmonyOSの公式サイト。開発者向け情報や技術仕様、エコシステムに関する情報を提供している。
ファーウェイ・ジャパン(法人向け)(外部)
ファーウェイの日本法人サイト。企業情報やICTソリューションに関する情報を提供している。
YouTube関連動画
【編集部後記】
モバイルOSの世界は長らくiOSとAndroidの二強時代が続いてきましたが、HarmonyOSという新たな選択肢が着実に力をつけています。皆さんは、スマートフォン以外のデバイスも含めた統合エコシステムの可能性についてどう考えますか?日本ではまだ体験する機会は限られていますが、第3のプラットフォームが生まれることで、私たちのデジタルライフはどう変わるでしょうか。テクノロジーの多様化が進む中、理想的なデジタル環境とは何か、一緒に考えていければ幸いです。