Last Updated on 2024-10-11 17:18 by admin
2024年9月25日、MetaのCTOアンドリュー・ボズワースは、InstagramでのAMAセッションにおいて、Quest向けのMRゲームをOrionなどのARグラスに移植することの難しさについて説明した。
ボズワースによると、以下の理由から移植は容易ではないという:
1. 制御方式が大きく異なる(コントローラーがない、ハンドトラッキングの範囲が狭い)
2. 計算能力がQuest 3の10分の1程度
3. 仮想化されたシーングラフ構造へのアクセスがない
特に注目すべきは、Orionの計算能力がQuest 3の10分の1という点だ。Orionはワイヤレスの計算ユニットを使用しており、これにより眼鏡を薄く軽くすることができる。しかし、ポケットや鞄の中で使用することを想定しているため、熱対策の観点から性能を抑えている可能性がある。
ボズワースは、移植が不可能ではないとしつつも、開発者側で多くの工夫と労力が必要になると述べている。この説明は、ARグラスがVRヘッドセットの代替にはならず、別の形態として共存していくことを示唆している。
from Meta’s CTO Explains Why Porting Games From Quest To AR Glasses Won’t Be Easy
【編集部解説】
今回は、MetaのCTOアンドリュー・ボズワースが説明したOrionARグラスと、既存のMeta Quest 3の比較を通じて、ARとVRの技術的な違いや将来の展望について解説いたします。
OrionとQuest 3の最大の違いは、その用途と設計思想にあります。Quest 3は没入型VR体験を提供するデバイスで、PCMagによると「$499.99で高性能なハードウェアを搭載」しています。一方、Orionは日常生活に溶け込むARグラスとして設計されており、Tom’s Guideによれば「70度の視野角と100グラムの軽さ」を実現しています。
性能面では、Quest 3が高性能な「Snapdragon XR2 Gen 2」を搭載しているのに対し、Orionの計算能力はQuest 3の10分の1程度です。これは、Orionが軽量化と長時間使用を重視しているためです。
操作方法も大きく異なります。Quest 3が主に専用コントローラーを使用するのに対し、Orionは音声コマンド、視線追跡、ハンドジェスチャー、EMGリストバンドを組み合わせた操作方式を採用しています。
プライバシーの観点からも、両者には違いがあります。Quest 3は主に屋内での使用を想定していますが、Orionは公共の場での使用も視野に入れており、新たなプライバシー上の課題を生み出す可能性があります。
発売時期と価格については、Quest 3は既に$499.99で購入可能です。一方、OrionはXRToday.comによると「2027年頃」の発売が予想され、価格は「高級スマートフォン並み(約1,000ドル)」になる可能性が示唆されています。
このように、OrionとQuest 3は同じMetaが開発しているデバイスでありながら、その目的や技術的アプローチが大きく異なります。Orionの開発は、Metaが長期的にARの日常生活への統合を目指していることを示唆しており、今後のテクノロジーの進化と社会の変化に大きな影響を与える可能性があります。私たちinnovaTopiaは、これらの技術の発展を注意深く見守り、その影響について考察を続けていきます。
【参考情報】
用語解説:
1. AR(拡張現実):現実世界にデジタル情報を重ねて表示する技術。Orionはこの技術を使用しています。
2. シリコンカーバイド:Orionのレンズに使用されている高性能な半導体材料。通常のガラスよりも高い屈折率を持ち、広い視野角を実現しています。
3. EMG(筋電図)リストバンド:筋肉の電気信号を読み取る装置。Orionの操作に使用されます。
関連ウェブサイト:
Orionスマートグラスの機能や可能性について解説した動画。