Appleは2024年10月10日、Apple Vision Pro向けの初のスクリプト付き短編映画「Submerged」を公開した。この作品は、Apple Immersive Videoフォーマットで撮影された17分間の没入型体験だ。
「Submerged」は、第二次世界大戦中の潜水艦を舞台にしたスリラーで、アカデミー賞受賞監督のエドワード・ベルガーが脚本と監督を担当した。8K解像度の3D映像と180度の視野角、空間オーディオを活用し、視聴者を物語の中心に引き込む。
撮影はプラハ、ブリュッセル、マルタで3週間かけて行われた。ベルガー監督は、Apple Vision Proを使用して各シーンを事前に視覚化し、撮影中も装着してショットを確認した。
「Submerged」は、Apple Vision Proを所有するユーザーのみが視聴可能で、Apple TVアプリを通じて無料で提供される。対象国は日本、オーストラリア、カナダ、中国本土、香港、フランス、ドイツ、シンガポール、イギリス、アメリカの10か国・地域だ。
Appleは今後も、Apple Immersive Videoで撮影された新しいシリーズ、映画、コンサート、スポーツコンテンツを順次公開する予定だ。これには、歌手ザ・ウィークエンドの没入型音楽体験や、2024年NBAオールスターウィークエンドの舞台裏を捉えた短編映画なども含まれる。
from Submerged is everything impressive and isolating about the Vision Pro
【編集部解説】
Appleの新作短編映画「Submerged」は、空間コンピューティングの可能性を示す画期的な作品と言えるでしょう。従来の映画やゲームとは一線を画す特徴がいくつか見られます。
まず、視聴体験の没入感が格段に高まっています。従来の映画では、スクリーンという「窓」を通して物語を覗き見る形でしたが、「Submerged」では文字通り潜水艦の中に入り込んだような感覚を味わえます。例えば、艦内の金属製の壁や機器を360度見渡せるだけでなく、俳優の顔の毛穴まで見えるほどの高解像度で描写されています。
次に、視聴者の主体性が大きく向上しています。従来の映画では監督が決めたアングルでしか見ることができませんでしたが、「Submerged」では視聴者が自由に視線を動かせます。例えば、主人公に注目するだけでなく、背景にある細部まで自由に観察できるのです。空間コンピューティングの技術を活用した点も特筆すべきです。Apple Immersive Videoフォーマットは、8K解像度の3D映像、180度の視野角、空間オーディオを組み合わせています。これにより、視聴者は潜水艦内の狭い空間を本当にそこにいるかのように体感できます。例えば、パイプが破裂する音や蒸気が漏れる音が、まるで自分の周りで起こっているかのように聞こえるのです。
さらに、この技術は従来のVRゲームとも異なります。VRゲームでは物理的な動きが必要でしたが、「Submerged」では座ったままで深い没入感を味わえます。これは、より幅広い層に受け入れられる可能性を示唆しています。
一方で、この新しい映像体験にはまだ課題もあります。例えば、地面レベルのショットやクローズアップショットが不快感を引き起こす可能性が指摘されています。これは、従来の撮影技法がそのまま通用しないことを示しており、新たな映像文法の確立が必要となるでしょう。
【参考情報】
用語解説:
1. Apple Immersive Video: Appleが開発した没入型映像フォーマット。8K解像度の3D映像と180度の視野角、空間オーディオを組み合わせて、視聴者を映像の中心に置くような体験を提供します。
2. 空間コンピューティング: 現実世界とデジタル世界を融合させ、3次元空間を計算処理の対象とする技術。従来の2次元ディスプレイを超えた新しいインターフェースを実現します。
関連ウェブサイト:
関連YouTube動画:
Apple Vision Pro – 紹介動画
Submerged – 公式トレーラー