Metaは2025年3月、研究用ARグラス「Aria Gen 2」を発表した。これは2020年9月に発表された初代Project Ariaの後継モデルだ。
Aria Gen 2の主な特徴は以下の通り:
内蔵型トラッキング機能:ヘッド、アイ、ハンドトラッキングを搭載
オーディオ機能:オープンイヤースピーカーとマイクを搭載
高効率カスタムチップセット:オンデバイス処理を実現
連続使用時間:6〜8時間
重量:75グラム(Ray-Ban Metaグラスより25グラム重い)
心拍数測定用PPGセンサー:鼻パッドに組み込み
コンタクトマイク:着用者の声を周囲の音から区別
Metaは視覚支援技術企業Envisionと提携し、Aria Gen 2を活用した視覚障害者向けナビゲーションシステムの開発を進めている。このシステムは空間的な「ビーコン」音を使用して、視覚障害者の室内移動を支援する。
Aria Gen 2は現在、研究目的でのみ使用可能で、一般消費者向け製品ではない。Metaは今後数ヶ月以内に、外部での利用可能性について詳細を発表する予定だ。
from Aria Gen 2 Adds Built-In Head, Hand, Eye Tracking & Audio To Meta’s Research Glasses
【編集部解説】
Metaが発表したAria Gen 2は、AR(拡張現実)とAI(人工知能)研究のための画期的なデバイスです。この新しい研究用スマートグラスは、2020年に発表された初代Project Ariaの後継機として位置付けられています。
Aria Gen 2の最も注目すべき特徴は、高度なセンサー技術と処理能力の大幅な向上です。特に、鼻パッドに組み込まれた心拍数測定用のPPGセンサーと、着用者の声を周囲の音から区別するコンタクトマイクは、ウェアラブルデバイスの新たな可能性を示しています。
このデバイスは、Metaが独自に開発した高効率カスタムチップセットを搭載しており、オンデバイスでの高度な処理を可能にしています。これにより、SLAMやアイトラッキング、ハンドトラッキング、音声認識などの機能をデバイス上で実行できるようになりました。
Aria Gen 2は、研究目的に特化して設計されており、一般消費者向けの製品ではありません。しかし、このデバイスが収集するデータや実現する機能は、将来のAR技術の発展に大きく貢献する可能性があります。
特に注目すべきは、視覚障害者支援への応用です。Metaのパートナー企業であるEnvisionは、Aria Gen 2を活用して、空間的な「ビーコン」音を用いた室内ナビゲーションシステムの開発を進めています。これは、視覚障害者の日常生活における自立支援に大きな影響を与える可能性があります。
長期的な視点では、Aria Gen 2のような研究用デバイスは、将来のAR技術の基盤となる可能性があります。人間の行動や環境をより深く理解し、それに基づいて適切な情報や支援を提供するAIの開発に貢献することが期待されます。
また、このような技術の進歩は、ヘルスケアや教育、エンターテインメントなど、様々な分野に革新をもたらす可能性があります。例えば、心拍数測定機能は、ストレス管理や健康モニタリングに活用できるかもしれません。
Aria Gen 2は、まだ研究段階のデバイスですが、その技術的な可能性と社会的な影響力は非常に大きいと言えます。
【用語解説】
SLAM (Simultaneous Localization and Mapping):
同時位置推定と地図作成の略。ARグラスがリアルタイムで周囲の環境を認識し、自身の位置を把握する技術です。例えるなら、目隠しをした人が部屋を歩き回りながら、触った物の位置を記憶し、自分の位置を把握するようなものです。
オープンイヤースピーカー:
耳を完全に塞がずに音を伝える技術。通常のイヤホンが耳栓のように耳を塞ぐのに対し、オープンイヤーは耳を開けたまま音楽を聴けるイメージです。
チップセット:
複数の集積回路(IC)を組み合わせて特定の機能を実現する部品群。スマートフォンの頭脳のような役割を果たします。
PPGセンサー(PhotoPlethysmoGraphy):
光を用いて血流量の変化を測定するセンサー。心拍数や血中酸素濃度の測定に使用されます。
【参考リンク】
Project Aria公式ページ(外部)MetaのProject Ariaに関する詳細情報と最新アップデートを提供する公式ページ。
Envision公式サイト(外部)視覚障害者向けAIアシスタント技術を開発する企業Envisionの公式サイト。英語