Last Updated on 2025-04-16 19:08 by admin
Bloombergのマーク・ガーマン氏が2025年4月13日に報じたところによると、Appleは販売不振だったVision Proの開発を継続し、現在2つの新モデルの開発を進めているという。
1つ目のモデルは、初代Vision Proの最大の2つの欠点である重量(約580g)と価格(3,500ドル、約52万円)を改善した軽量・低価格版だ。
2つ目のモデルは、ユーザーのMacに接続してディスプレイコンテンツをストリーミングし、エンタープライズアプリケーションを使用できるようにするモデルである。このMac接続モデルは有線接続による低遅延を実現し、精密な操作が求められる専門的な用途に適していると考えられる。
現行のVision Proでも無線接続でMacの画面をミラーリング表示できるが、遅延が発生する可能性がある。また、開発者向けに提供されているUSB-C接続の「Developer Strap」(299ドル)は存在するものの、開発目的に限定されている。
新しいMac接続モデルは、単なる画面表示にとどまらず、Macとの間でより高度な双方向データ通信を可能にし、Mac本体の処理能力を活用することでヘッドセット自体の負荷や重量を軽減する可能性がある。
これらの開発は、ティム・クックCEOの最終目標である「一日中着用できる軽量AR(拡張現実)グラス」への過程と位置づけられている。
from Apple reportedly working on a Vision Pro that plugs into your Mac
【編集部解説】
Apple Vision Proの今後の展開について、複数の信頼性の高い情報源が一致した見解を示しています。Bloombergのマーク・ガーマン氏の報道を中心に、この新たな展開を深掘りしてみましょう。
Vision Proは2024年2月に米国で発売されましたが、3,500ドル(約52万円)という高価格と600g前後(バッテリー除く)という重量が普及の大きな障壁となっていました。販売は当初の期待を下回っており、Appleは生産計画の見直しを迫られたとされています。
今回報じられた2つの新モデル開発は、Appleがこれらの課題を認識し、製品戦略を見直していることを示しています。特に注目すべきは、Macに接続するモデルの開発です。これは単なる画面ミラーリングの進化ではなく、低遅延システムを実現するための有線接続モデルとなる可能性があります。
現行のVision Proでも無線でMacの画面を表示することは可能ですが、遅延が発生する可能性があります。また、開発者向けに299ドルの「Developer Strap」というUSB-C接続アクセサリーが存在しますが、これは開発目的に限定されています。新モデルはこれらとは一線を画す製品になると考えられます。
このMac接続モデルは、極めて低い遅延が求められる専門的な用途を想定していると推測されます。例えば、精密な3D設計作業や高度なデータ可視化など、リアルタイム性が重要な分野での活用が考えられるでしょう。
企業向け市場を重視するこの戦略は、Appleが一般消費者向けの普及に苦戦する中で、プロフェッショナル市場でのニッチな価値提供を模索していると解釈できます。医療、航空、建築、製造など、高度な視覚化ツールを必要とする産業分野では、高価格でも明確な業務上の価値があれば導入が進む可能性があります。
技術的には、Mac接続によりヘッドセット側の処理負荷を軽減できるため、ヘッドセット自体の軽量化やバッテリー効率の改善も期待できます。現行のVision Proは公式情報によるとバッテリー駆動時間が約2時間とされており、有線接続で長時間使用できるようになれば大きなメリットとなるでしょう。
一方で、もう一つの軽量・低価格モデルについては、具体的な価格や重量の目標値は明らかにされていません。しかし、競合するMetaのQuest 3が399ドルであることを考えると、少なくとも1,000ドル以下を目指す必要があるでしょう。ただし、トランプ政権の対中関税政策の変動により、製造コストの予測が難しい状況にあることも報じられています。
これら2つの新モデルは、ティム・クックCEOが長年追求している「一日中着用できる軽量ARグラス」という最終目標への中間ステップと位置づけられています。ガーマン氏の報道によれば、クックCEOは「製品開発の観点では、これ以外のことには関心がない」ほどARグラスの実現に注力しているとのことです。
Vision Proの進化は、AR/VR技術の将来に関する重要な示唆を与えています。現在のヘッドセット型デバイスから、将来的には眼鏡型のARデバイスへと移行していく過程で、Macとの連携モデルは興味深い中間形態と言えるでしょう。コンピューティングパワーを外部に委託することで、装着デバイスの軽量化と長時間使用を可能にする方向性は、今後のウェアラブルデバイスの発展において重要な示唆を含んでいます。
【用語解説】
複合現実(Mixed Reality/MR): 現実世界とデジタル世界を融合させる技術。Vision Proは現実の映像を取り込みながら、その上にデジタルコンテンツを重ねて表示する。スマホのARよりも没入感が高く、完全に現実を遮断するVRとも異なる中間的な体験を提供する。
空間コンピューティング: 3次元空間をコンピュータの操作環境として利用する技術。従来の平面的な画面の制約から解放され、空間内のどこにでもアプリやコンテンツを配置できる。部屋全体をワークスペースとして使えるイメージだ。
visionOS: Vision Pro専用に開発されたオペレーティングシステム。目線、手のジェスチャー、音声による直感的な操作を可能にする。macOSやiOSとは異なる、空間操作に最適化されたインターフェースを持つ。
低遅延: 入力から表示までの時間差が短いこと。通常の無線接続では数十ミリ秒の遅延が発生するが、有線接続ではより応答速度が向上する。精密操作が必要な用途では、この「遅れのなさ」が重要となる。
エンタープライズアプリケーション: 企業や組織で使用される業務用ソフトウェア。例えば、3D設計ソフト、データ可視化ツール、遠隔会議システムなど。Vision Proの新モデルは、これらの専門的なアプリケーションをMacと連携して使用できるようになる。
【参考リンク】
Apple Vision Pro 公式サイト(外部)Appleによる公式製品ページ。Vision Proの機能や特徴、技術仕様を詳しく紹介している。
Apple Mac 公式サイト(外部)Mac製品ラインナップの公式ページ。Vision Proと連携する可能性のあるMacモデルの情報が掲載されている。
Bloomberg(外部)マーク・ガーマン氏が所属する経済・金融メディア。Apple関連の独自情報に定評がある。
TechCrunch(外部)テクノロジー専門ニュースサイト。今回の記事の元ソース。最新のテクノロジートレンドや製品情報を提供している。