Last Updated on 2025-04-23 15:02 by admin
NTTコノキューは、ENEN株式会社、株式会社Forgersと共同で、XRグラス「MiRZA®(ミルザ)」を活用した家具の新たな購買体験実現をめざす実証実験を開始した。この取り組みは「MiRZA®」を店舗で活用した事例として家具業界初となる。
ENEN(エネン)は「気軽に家具を楽しむライフスタイルを創造する」というビジョンのもと、モジュラー家具を展開するD2C家具ブランドである。2023年5月に「自由が丘店」、2024年7月に「大阪店」をオープンしている。ENENの代表的なモジュラー家具「KUUM(クーム)」は、素材、カラー、サイズなど多彩なバリエーションを展開し、その組み合わせパターン数は何百通りにものぼる。しかし店舗における展示スペースには限界があり、全商品の展示が実現できていないという課題があった。
今回の実証実験では、株式会社NTTコノキューデバイスが開発・NTTコノキューが販売するXRグラス「MiRZA」とForgersの3D・XRプラットフォーム「RITTAI」を連携させ、XRグラスによる商品のAR体験を可能にした。店頭の商品展示近くにQRコードを設置し、MiRZAのカメラで読み取ることで該当商品の3Dモデルや商品情報を表示するアプリケーションを構築した。
MiRZAは約125gの軽量メガネ型デザインであるため、グラスをかけたまま店内を歩くことができ、回遊を妨げることなくXR体験が可能である。家具の3Dモデル表示に加え、ハンドジェスチャーによる操作でカラーの変更や商品説明動画の視聴なども可能となっている。
実証実験は東京都目黒区の「ENEN自由が丘店」と大阪市中央区の「ENEN大阪店」で実施される。体験者にはアンケートが実施され、商品や店舗体験に対する印象や購買意欲の変化などが検証される予定である。アンケート協力者にはENENから商品を特別価格で購入できるクーポンが提供される。
各社の役割としては、NTTコノキューが企画検討・プロジェクト管理と「MiRZA」の提供、Forgersが「RITTAI」の提供とMiRZAアプリケーション開発、ENENが顧客集客や店頭での案内・接客を担当している。
今後はさらにインタラクティブな商品情報の提供やパーソナライズされた店内ナビゲーションの表示など、店内での回遊・体験価値を高めるコンテンツを提供していく予定である。
from XRグラス「MiRZA®」を活用した、家具の新たな購買体験の実現をめざす実証実験を開始
【編集部解説】
NTTコノキューとENEN、Forgersの3社による実証実験は、リアル店舗とデジタル技術を融合させた新しい購買体験の創出という点で非常に注目すべき取り組みです。
特に重要なのは、「MiRZA®」というXRグラスの特性を活かした実装方法です。MiRZAは約125gという軽量設計と一般的なメガネに近い形状を持っており、来店客は違和感なくグラスを装着したまま店内を回遊できます。従来のVR/ARデバイスでは、重たいヘッドセットや操作の複雑さが障壁となっていましたが、この事例ではそうした問題を解決しています。
また、モジュラー家具という「カスタマイズ性」が魅力の商品と、「バリエーションを視覚的に体験できる」XR技術の組み合わせは理にかなっています。ENENの「KUUM」シリーズは何百通りもの組み合わせがあり、それらをすべて実物展示することは物理的に不可能ですが、XR技術によってこの制約を克服しています。
この実証実験の意義は、単なるテクノロジーのショーケースではなく、実際の商業環境における具体的な課題解決を目指している点にあります。ハーバードビジネスレビューの調査によると、「オンライン環境でのAR使用は、顧客エンゲージメント、顧客行動、そして売上に劇的な影響を与える」とされています。
一方で、XR技術の普及には課題もあります。セキュリティとプライバシーの問題は無視できません。XRデバイスは従来のオンラインプラットフォームよりも多くのデータを収集し、動きや視線のトラッキングデータは匿名化が非常に困難です。こうしたデータが悪意ある第三者に渡れば、個人情報の漏洩やなりすまし詐欺などのリスクが生じる可能性があります。
また、一般的なXRデバイスのバッテリー持続時間の制約も現実的な課題です。長時間の店舗体験には不向きかもしれません。
しかし、家具業界におけるXR活用の可能性は非常に大きいと言えます。特に日本の住宅事情を考えると、実際の部屋に家具を置く前にサイズ感や配置を確認できることは、消費者にとって大きな価値があります。
今回の取り組みは、日本発のXRグラスを活用した家具業界初の事例として、小売業のデジタルトランスフォーメーションの新たな方向性を示しています。将来的には、パーソナライズされた店内ナビゲーションやインタラクティブな商品情報提供など、より高度な体験が実現される可能性があります。
【用語解説】
XR(Extended Reality): 拡張現実の総称で、AR(拡張現実)、VR(仮想現実)、MR(複合現実)などを包括する概念である。現実世界とデジタル世界を融合させる技術全般を指す。
AR(Augmented Reality): 現実の環境に仮想的な情報を重ね合わせて表示する技術。MiRZAはこの技術を活用している。
モジュラー家具: パーツを組み合わせて自由にカスタマイズできる家具。ENENの「KUUM」シリーズはこの形式を採用している。
D2C(Direct to Consumer): メーカーが小売店などを介さず、直接消費者に商品を販売するビジネスモデル。ENENはこの形態で家具を販売している。
【参考リンク】
MiRZA公式サイト(外部)NTTコノキューデバイスが開発したXRグラス「MiRZA」の製品情報、仕様、活用事例などを紹介している公式サイト。
ENEN公式サイト(外部)モジュラー家具「KUUM」シリーズを展開するENENのオンラインストア。カスタマイズ可能な家具製品のラインナップを確認できる。
Forgers RITTAI(外部)3D・ARをECサイトに導入するためのサービス「RITTAI」の紹介サイト。今回の実証実験でも活用されている。
NTTコノキュー公式サイト(外部)XR事業を推進するNTTコノキューの企業サイト。ビジョンや事業内容を確認できる。