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Google Glass失敗を認めるブリン氏、Android XRスマートグラスで再挑戦へ

 - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-05-22 13:22 by admin

Googleは2025年5月20日(現地時間、日本時間5月21日)に開催された年次開発者会議「Google I/O 2025」において、Android XRプラットフォームを搭載したスマートグラスを発表した。このスマートグラスはカメラ、マイク、スピーカーを搭載し、スマートフォンと連携して動作する。オプションのレンズ内ディスプレイにより、必要な情報をプライベートに表示することが可能だ。

Google共同創業者のセルゲイ・ブリン氏は同イベントで登壇し、約10年前に失敗した「Google Glass」について言及。「Google Glassで多くの間違いを犯した」と認め、特に「消費者向け電子機器のサプライチェーンについて何も知らなかった」ことを挙げた。

新しいAndroid XRグラスはGoogleのAIアシスタント「Gemini」と連携し、ユーザーの視点から世界を見ることができる。デモではメッセージの送信、予約の作成、ターンバイターン方式のナビゲーション、写真撮影などの実用シーンが紹介された。また、二人の間でリアルタイム言語翻訳を行うデモも実施され、言語の壁を取り除く可能性を示した。

Googleはスタイリッシュなデザインを重視し、Gentle MonsterやWarby Parkerといったアイウェアブランドと提携。特にWarby Parkerとは最大1億5000万ドルの提携を結んだ。また、中国のXrealとはProject Auraと呼ばれる軽量光学シースルーグラスの開発で協力しており、このグラスは70度の視野角とSnapdragon XRチップセットを特徴としている。

さらに、GoogleはSamsungとの提携を拡大し、ヘッドセットだけでなくグラスにもAndroid XRを展開する計画だ。両社はソフトウェアとリファレンスハードウェアプラットフォームを共同開発し、開発者は2025年後半からこのプラットフォーム向けの開発を開始できるようになる。

Googleは現在、信頼できるテスターとともにプロトタイプのフィードバックを収集している段階であり、今後数ヶ月でさらなる進捗を共有する予定だ。これらの製品の多くは2025年以降の発売となる見込みである。

References:
 - innovaTopia - (イノベトピア)Sergey Brin admits missteps with Google Glass at I/O 2025

【編集部解説】

Google I/O 2025で発表されたAndroid XRスマートグラスは、約10年前に失敗した「Google Glass」の教訓を踏まえた新たな挑戦と言えるでしょう。今回の発表で特に注目すべきは、Google共同創業者のセルゲイ・ブリン氏が率直に過去の失敗を認めた点です。「消費者向け電子機器のサプライチェーンについて何も知らなかった」という発言は、テクノロジー業界のリーダーでさえも盲点を抱えていることを示しています。

Google Glassが2013年に1,500ドルという高価格で発売された際、その革新性は評価されたものの、一般消費者向け製品としては普及しませんでした。当時はプライバシー懸念も大きな障壁となり、装着者は「Glasshole(グラスホール)」と揶揄されるほどでした。レストランやバー、カジノ、病院などの施設では使用が禁止され、社会的受容性の壁に直面したのです。

今回のAndroid XRグラスでは、Googleはこれらの教訓を活かし、戦略を大きく転換しています。最も重要な変化は、ハードウェア開発を自社で完結させるのではなく、Samsung、Xreal、Warby Parker、Gentle Monsterなど、それぞれの分野で専門性を持つパートナー企業と協力する点です。特にWarby Parkerとは最大1億5000万ドルの提携を結び、スタイリッシュなデザインの実現を目指しています。

この戦略はMetaのRay-Ban Metaグラスの成功例を参考にしたものと考えられます。実際、今回のハンズオンレポートによると、Google Android XRグラスはRay-Ban Metaグラスと同等かそれ以下の軽さで、装着感も良好だったとのことです。また、Ray-Ban Metaグラスにはない写真プレビュー機能も搭載されており、撮影時のフレーミングが容易になるという利点があります。

Android XRグラスの最大の特徴は、Googleの最新AI「Gemini」との連携です。Project Astraと呼ばれるこの技術により、スマートグラスはユーザーの視点から世界を見て理解し、リアルタイムで情報を提供できるようになります。例えば、外国語の会話をリアルタイムで翻訳したり、道案内をユーザーの視界に直接表示したりすることが可能です。

ハードウェア面では、Google Android XRグラスは片目(右目)のみにディスプレイを搭載する「モノキュラー方式」を採用しています。これは両目に表示する方式と比べて初めは違和感があるものの、慣れれば問題なく使用できるようです。このデザイン選択は、バッテリー寿命の延長やコスト削減、軽量化などの利点をもたらす可能性があります。

中国のXrealと共同開発しているProject Auraは、「光学シースルーXR」デバイスとして紹介されています。これは透明なレンズを通して現実世界を見ながら、その上に仮想コンテンツを重ねて表示する技術です。Apple Vision ProやSamsungのProject Moohanのような重いXRヘッドセットとは異なり、Xrealの以前のデバイスに似た軽量グラス形状を採用しています。

しかし、新たな課題も見えてきています。特に「プロアクティブAI」の概念は、AIが常に周囲を観察し、必要と判断した時に自発的に介入するというものです。これは利便性を高める一方で、プライバシーやセキュリティの懸念を新たに生み出す可能性があります。

また、運転中のスマートグラス使用に関する法規制の問題も浮上しています。Googleは運転中のナビゲーション表示機能をテストしていますが、多くの国ではスマートグラス着用での運転が制限または禁止されています。視覚的な情報過多が注意散漫を引き起こす可能性も指摘されています。

興味深いのは、セルゲイ・ブリン氏が「生成AIの登場によって、スマートグラスの機能がより具体的になった」と述べている点です。約10年前のGoogle Glassでは実現できなかった機能が、現在のAI技術の進化によって可能になりつつあるのです。

今後の展望としては、2025年後半から開発者がAndroid XRプラットフォーム向けの開発を開始できるようになり、製品の多くは2025年以降に発売される予定です。特にXrealのProject Auraは、70度の視野角とSnapdragon XRチップセットを搭載した軽量光学シースルーグラスとして注目されています。

スマートグラスは「第三の画面」として、スマートフォンやPCに続く新たなデジタルインターフェースになる可能性を秘めています。しかし、その普及には技術的な課題だけでなく、社会的受容性やプライバシー保護の枠組みも重要になるでしょう。Googleが過去の失敗から学び、より慎重かつ戦略的にこの市場に再参入する姿勢は評価できます。

私たちinnovaTopiaは、テクノロジーが人間の進化を支援するという観点から、このようなウェアラブルデバイスの発展を注視していきます。テクノロジーが「人間を置き換える」のではなく、「人間を拡張する」ツールとなることを期待しています。

【用語解説】

Google Glass:2013年に発売されたGoogleの初代スマートグラス。カメラやディスプレイを搭載し、音声コマンドで操作できたが、プライバシー懸念や高価格などの問題で一般消費者向け製品としては普及しなかった。

Android XR:Googleが開発したXR(拡張現実)デバイス向けのオペレーティングシステム。2024年12月に発表され、VR/AR/MRの各種XRデバイス用のOSとして、装着者の視界に仮想ディスプレイを表示する。

Project Astra:Googleが開発する次世代AIアシスタントプロジェクト。マルチモーダル処理能力を持ち、視覚情報も含めた複数の入力形式を同時に処理し、統合的に理解できる。

Project Aura:GoogleとXrealが共同開発している光学シースルーXRグラス。70度の視野角を持ち、Snapdragon XRチップセットを搭載している。

モノキュラーディスプレイ:片目(通常は右目)にのみ情報を表示するディスプレイ方式。両目に表示するバイノキュラー方式と比べて軽量化やバッテリー寿命の延長が可能。

光学シースルーXR:透明なレンズを通して現実世界を見ながら、その上に仮想コンテンツを重ねて表示する技術。

プロアクティブAI:ユーザーからの指示を待つのではなく、状況を判断して自発的に行動するAI技術。

【参考リンク】

Google(外部)Googleの公式サイト。検索エンジンをはじめ、Gmail、マップ、YouTube、Androidなど多数のサービスを提供している。

Android XR(外部)GoogleのXR(拡張現実)デバイス向けオペレーティングシステムの公式サイト。ヘッドセットやグラスなどのデバイスに対応し、2025年に最初のデバイスが発売予定。

Warby Parker(外部)アメリカ・ニューヨーク発のアイウェアブランド。デザイン性の高い眼鏡を手頃な価格で提供し、オンラインと実店舗の両方で展開している。

Gentle Monster(外部)2011年に韓国で創業したユニセックスのアイウェアブランド。大胆かつ独創的なデザインや鮮やかなカラーグラスなど、前衛的なアイウェアを展開している。

XREAL(外部)ARグラスを開発する中国のテクノロジー企業。以前はNrealとして知られていた。軽量で装着感の良いARグラスを開発し、グローバルに展開している。

Android Developers(外部)Android XRの開発者向け公式ドキュメント。XRアプリケーション開発のためのガイドラインやAPIリファレンスを提供している。

Google Blog(外部)GoogleのAndroid XRとGeminiを搭載したグラスとヘッドセットに関する公式ブログ記事。最新の開発状況や機能について詳しく解説している。

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乗杉 海
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