innovaTopia

ーTech for Human Evolutionー

Quest 3向け『スライムラボ』、触れるVR体験と流体シミュレーションが切り開く新たなゲーム体験

 - innovaTopia - (イノベトピア)

VRインディーゲーム開発者のレトロセルが、液体物理演算を活用したVRシミュレーター『スライムラボ』を発表し、Quest 3とSteamVRヘッドセット向けに開発中であることを6月3日(現地時間、日本時間6月4日)に明らかにした。

レトロセルは『スライムラボ』について、プレイヤーが様々なスライムを直接手で触れることができる液体物理演算シミュレーターであると説明している。本作品はQuestシリーズとSteamVRヘッドセットをターゲットプラットフォームとして開発されている。

ゲームの内容として、プレイヤーは単純にスライムを作って楽しむだけでなく、カスタムオーダーを受けて特定のスライムを製作し、それをボトルに詰めて販売することで収益を得るシステムが実装される。また、研究室の運営要素も含まれており、物資の注文、ツールのアップグレード、新しい材料のアンロックを通じて、より多様なスライム創作が可能になる仕組みとなっている。

技術的な特徴として、ゲームには多様なチャーム、グロー効果、可変粘着レベルが搭載される予定である。さらに、作成したスライムを溶かしたり、新しい形状に凍らせたりする機能も提供される。

『スライムラボ』は特にQuest 3向けに最適化されており、同プラットフォームでは「より良いグラフィックスとより高度な物理シミュレーション」が実現されるとレトロセルは述べている。

現時点でリリース日は発表されていないが、Quest 2以上のデバイス向けにはHorizon Storeで、PC VRヘッドセット向けにはSteamでウィッシュリストへの追加が可能となっている。

from:
 - innovaTopia - (イノベトピア)Upcoming ‘Slime Lab’ Lets Players Go Hands-on with Liquid Physics on Quest 3 & SteamVR – Trailer | Road to VR

【編集部解説】

VR業界において液体物理演算を活用したゲームは、これまで技術的な制約から限定的な表現に留まっていました。今回発表された『スライムラボ』は、この分野における新たな挑戦として注目に値します。

開発元のレトロセルは比較的小規模なインディーデベロッパーですが、リアルタイム流体シミュレーションという高度な技術をVRプラットフォームで実現しようとしている点で技術力の高さを示しています。特にQuest 3での最適化に言及していることから、モバイルVRプラットフォームでの物理演算処理に相当な工夫を凝らしていることが推測されます。

このゲームが示す重要な側面は、単なる物理シミュレーションを超えた経営要素の統合です。カスタムオーダーの受注や販売システムは、VRにおけるビジネスシミュレーションゲームの新しい可能性を示唆しています。従来のVRゲームが体験重視だったのに対し、継続的なゲームプレイとモチベーション維持を図る設計となっています。

技術的な観点では、Quest 3での「より良いグラフィックスとより高度な物理シミュレーション」という表現が興味深いポイントです。Quest 3のSnapdragon XR2 Gen 2プロセッサーの処理能力を活用した最適化により、従来のモバイルVRでは困難だった複雑な流体計算をリアルタイムで実行している可能性があります。

実際のゲーム体験では、プレイヤーが材料を組み合わせてゼロからスライムを作成する実験的な要素が含まれており、これは単純な娯楽を超えた創造的な学習体験を提供するでしょう。化学実験のような要素をVRで再現することで、教育分野への応用も期待できるでしょう。

一方で、このような物理演算集約的なアプリケーションは、長時間のプレイにおけるデバイスの発熱や電池消耗といった課題も抱えています。また、流体の触覚フィードバックをどの程度再現できるかは、現在のVRハプティクス技術の限界を考慮すると、視覚的な満足感に依存する部分が大きいと考えられます。

『スライムラボ』のようなニッチなシミュレーションゲームの成功は、VR市場の成熟度を測る指標としても機能します。メインストリームのアクションゲームやフィットネスアプリ以外のジャンルが受け入れられることで、VRプラットフォームの多様性と持続可能性が証明されることになるでしょう。

【用語解説】

液体物理演算(流体シミュレーション):コンピューター上で液体の動きや性質をリアルタイムで計算・再現する技術である。粘度、表面張力、重力などの物理法則に基づいて、液体が流れる様子や形状変化を数学的にシミュレートする。

Quest 3:Meta(旧Facebook)が2023年に発売したスタンドアロン型VRヘッドセットである。前世代のQuest 2から大幅に性能が向上し、より高解像度のディスプレイとSnapdragon XR2 Gen 2プロセッサーを搭載している。

リアルタイム流体シミュレーションシステム:液体の動きや変形をリアルタイムで計算し、視覚的に表現するシステムである。従来は事前に計算された結果を再生していたが、リアルタイム処理により、ユーザーの操作に即座に反応する動的な液体表現が可能になる。

【参考リンク】

Meta Quest(外部)Meta社が展開するVRヘッドセットQuest シリーズの公式サイト。製品情報、対応ゲーム、購入方法などを提供している。

Slime Lab – Steam(外部)
レトロセル開発のVRゲーム『スライムラボ』のSteam配信ページ。ゲームの詳細情報、システム要件、ウィッシュリスト登録が可能。

【編集部後記】

VRゲームの世界で、ついに「触れる」体験が新たな次元に到達しようとしています。『スライムラボ』が示すリアルタイム流体シミュレーションは、単なる技術デモを超えて、私たちの想像力を刺激する創造的な遊び場を提供してくれそうです。

個人的には、子供の頃に理科の実験で初めて片栗粉と水を混ぜた時のあの感動を思い出します。VRの中で、現実では試せないような色とりどりの材料を自由に組み合わせて、物理法則に従って変化していく様子を眺めるだけでも、きっと時間を忘れて没頭してしまうでしょう。Quest 3の処理能力を活かした最適化により、どこまでリアルな流体表現が実現されるのか、リリースが待ち遠しい一作です。VRの未来は、こうした一見シンプルでありながら奥深い体験の積み重ねによって築かれていくのかもしれません。

VR/ARニュースをinnovaTopiaでもっと読む

投稿者アバター
乗杉 海
新しいものが大好きなゲーマー系ライターです!
ホーム » VR/AR » VR/ARニュース » Quest 3向け『スライムラボ』、触れるVR体験と流体シミュレーションが切り開く新たなゲーム体験