nDreams Elevationが、VRアクションアドベンチャー『Reach』を2025年後半にリリースすると発表した。
6月7日のFuture Games Show – Summer Showcaseで発表された『Reach』は、nDreams Elevationのデビュータイトルである。Quest 3/3S、Steam VR、PlayStation VR2で発売予定。
本作は全身認識技術とジェスチャー駆動トラバーサルを特徴とし、地下文明を舞台にしたアクションアドベンチャーゲーム。プレイヤーはグラップリングフック、弓、銃器、盾などの多様なツールを使用して神話的な脅威と戦う。
発表には元Sony Interactive Entertainment indies initiative責任者のシュウヘイ・ヨシダ氏が登場。nDreams Elevationのグレン・ブレイス氏は、プレイヤーが完全にコントロールできるアクションアドベンチャーを目指したと説明している。
詳細情報は6月10日のVR Developer Directで公開予定。現在、各プラットフォームでウィッシュリスト登録が可能。
from:Reach Promises Cinematic VR Action Adventure This Year | UploadVR
【編集部解説】
nDreamsが新設したスタジオnDreams Elevationによる『Reach』の発表は、VR業界にとって重要なマイルストーンとなります。同社は2013年からVR専門デベロッパーとして活動し、『Fracked』(2022年)や『Synapse』(2023年、PSVR2独占)といった高評価作品を手がけてきた実績があり、今回の『Reach』は「最も野心的なタイトル」と位置づけられています。
特に注目すべきは、元Sony Interactive Entertainment indies initiative責任者のシュウヘイ・ヨシダ氏が本作を紹介し、『Synapse』を「史上最高のVRゲーム」と評価している点です。業界の重鎮からのこうした推薦は、VR市場における本作の期待値の高さを物語っています。
技術的な側面では、『Reach』が提示する「全身認識」と「真実に近い相互作用」は、従来のVRゲームが抱えていた没入感の限界を突破する可能性を秘めています。これまでのVRタイトルの多くは手の動きに重点を置いていましたが、本作では全身の動きがゲーム内に反映されることで、プレイヤーの存在感がより一層高まることが期待されます。
ゲームデザインの観点から見ると、パルクールアクションと戦闘システムの融合は、VRならではの体験を追求した結果と言えるでしょう。グラップリングフック、弓、ピストル、盾、ショットガンといった多様なツールを駆使する戦闘は、高度な物理演算エンジンと組み合わさることで、従来のフラットスクリーンゲームでは実現できない直感的な操作感を提供します。
市場への影響という視点では、『Reach』のマルチプラットフォーム展開(Quest 3/3S、Steam VR、PlayStation VR2)は、VRゲーム市場の成熟を示す重要な指標です。これまでVRタイトルはプラットフォーム独占が多く、市場の分散化が課題となっていましたが、主要プラットフォーム同時リリースは業界の健全な発展を促進する動きと捉えられます。
一方で、「高品質なVR体験」を実現するためには、相応のハードウェア性能が要求される点も考慮すべきです。全身認識や高度な物理演算は処理負荷が高く、エントリーレベルのVRヘッドセットでは十分な体験が得られない可能性があります。これは、VR市場の普及において技術的なハードルが依然として存在することを示唆しています。
長期的な視点では、『Reach』のような野心的なタイトルの成功は、VR業界全体の投資環境に大きな影響を与える可能性があります。AppleのVision Proの登場により空間コンピューティングへの注目が高まる中、ゲーム体験の質的向上は、VRが単なるニッチ市場から主流エンターテインメントへと発展する重要な要素となるでしょう。
また、nDreams Elevationが2022年に設立された新スタジオであることも注目に値します。これは、VR市場の成長に対する同社の長期的なコミットメントを示すとともに、専門チームによる集中的な開発体制が高品質なVR体験の創出に不可欠であることを物語っています。
【用語解説】
VR(Virtual Reality):仮想現実技術の略称。ヘッドマウントディスプレイを装着することで、コンピューターが生成した三次元空間に没入できる技術。
全身認識(Full-body Awareness):VRにおいて、プレイヤーの全身の動きをゲーム内に反映する技術。『Reach』では「true-to-life full-body awareness」として実装されている。
ジェスチャー駆動トラバーサル(Gesture-driven Traversal):プレイヤーの身体的なジェスチャーによってゲーム内での移動や操作を行う仕組み。ボタン操作ではなく、実際の動作で制御する。
パルクール:都市環境において、走る、跳ぶ、登るなどの動作を組み合わせて障害物を効率的に移動するスポーツ・技術。
【参考リンク】
nDreams公式サイト(外部)世界最大級のVRゲーム開発・パブリッシング企業。『Synapse』『Fracked』などの代表作を手がけ、2013年からVR専門で活動している。
Meta Quest公式サイト(外部)Meta社が展開するVRヘッドセットQuest シリーズの公式サイト。最新のVRゲーム情報やハードウェア仕様が確認できる。
【参考動画】
【参考記事】
I played Reach and have never felt like more of a parkour king in VR | Creative Bloq
実際に『Reach』のデモをプレイしたライターによる詳細なハンズオンレポート。物理的な1対1モーション、プラットフォーミング、戦闘システムの具体的な操作感を解説。
nDreams Announces VR Action-Adventure ‘Reach’ | Road to VR
VR業界専門メディアによる『Reach』発表の詳細レポート。nDreams Elevationの設立背景や過去作品との関連性を含む包括的な分析。
nDreams Elevation Unveils Debut VR Title, ‘Reach’ | But Why Tho?ゲーム業界メディアによる『Reach』の発表記事。シュウヘイ・ヨシダ氏のコメントやゲームの主要機能について詳細に報告。
【編集部後記】
VR業界を長年追いかけてきた身として、『Reach』の発表には正直、心が躍りました。シュウヘイ・ヨシダ氏が推薦し、nDreamsが「最も野心的なタイトル」と位置づける本作は、発表内容を読む限り、これまでのVRゲームとは一線を画す体験を提供してくれそうです。
特に「全身認識」技術の実装は、VRゲームの没入感を根本的に変える可能性を秘めています。パルクールと戦闘が融合したアクションも、発表映像を見る限り非常に魅力的で、6月11日のVR Developer Directでの詳細発表が待ち遠しい限りです。2025年後半のリリースが楽しみで仕方ありません。