ーTech for Human Evolutionー

Vision Pro、visionOS 26でPSVR 2コントローラーとロジテック・ミューズ対応—空間コンピューティングが本格実用化

 - innovaTopia - (イノベトピア)

Appleが6月9日(現地時間、日本時間6月10日)のWWDC 2025で発表したvisionOS 26において、『Vision Pro』がPSVR 2センスコントローラーとロジテック・ミューズスタイラスの公式サポートを開始することが明らかになった。

Appleは6月9日(現地時間、日本時間6月10日)に開催されたWWDC 2025において、『Vision Pro』向けの次期大型アップデートであるvisionOS 26を発表した。この発表により、Appleは従来の方針を転換し、VR入力デバイスの公式サポートを開始することが判明した。

visionOS 26では、ソニーのPSVR 2センスコントローラーがネイティブサポートされる。このコントローラーは6DOF(6自由度)ポジショントラッキング、静電容量式フィンガータッチ検出、バイブレーション機能を提供する。Appleはこの機能により「新しいクラスのゲーム」が『Vision Pro』に登場すると説明している。

同時に、ロジテック・ミューズという新しい空間入力デバイスのサポートも発表された。ロジテックはミューズを「ユーザーの作業、創作、コラボレーションの方法を向上させるデジタルペンシル」と位置づけている。このデバイスは6DOFトラッキング、物理ボタン、ハプティクス、ジェスチャー認識機能を備え、圧力感知チップにより空間内および表面上での描画や注釈が可能だ。

visionOS 26の主要な新機能には、空間ウィジェット、Look to Scrollによる視線スクロール機能、大幅に改善されたPersonas、AI駆動の空間シーン機能、ハンドトラッキングの90Hz対応、フォルダー機能付きHome View、再設計されたControl Center、iPhone通話リレー機能などが含まれる。

visionOS 26は今年後半にリリース予定で、開発者向けベータ版は6月9日(現地時間、日本時間6月10日)から提供開始されている。Appleは新しい年号ベースの命名規則を採用し、従来のvisionOS 3ではなくvisionOS 26という名称を使用している。

ロジテック・ミューズの価格や対応アプリの詳細情報は今年後半に発表予定で、ロジテックとAppleの両方を通じて販売される予定だ。

from:
 - innovaTopia - (イノベトピア)Vision Pro is Getting Official Support for PSVR 2 Motion Controllers and New Logitech Stylus | Road to VR

【編集部解説】

今回のWWDC 2025における発表は、Appleがこれまで貫いてきた「ハンドトラッキング至上主義」から大きく方向転換した歴史的な転換点として捉える必要があります。2023年にティム・クックCEOが「Vision ProにはVRコントローラーは不要」と明言していたことを考えると、わずか2年でこの方針転換が実現したことは、市場からの強いフィードバックと実用性への配慮が背景にあることを物語っています。

PSVR 2センスコントローラーのサポートが実現する背景には、Vision Proのゲーミング体験における明確な課題がありました。ハンドトラッキングは確かに革新的な技術ですが、精密な操作や長時間のゲームプレイにおいては物理的なフィードバックと操作性の限界が露呈していたのが実情です。特に、既存のVRゲームエコシステムからのコンテンツ移植において、コントローラー操作を前提とした設計のゲームをハンドトラッキングのみで再現することは技術的にも体験的にも困難でした。

今回の発表で特に注目すべきは、90Hzハンドトラッキングの実現です。これまでのハンドトラッキングよりも大幅に応答性が向上し、より自然な操作感を実現します。これにより、コントローラーと併用することで、状況に応じた最適な入力方法を選択できる柔軟性が生まれます。

ロジテック・ミューズの登場は、Vision Proが単なるエンターテインメントデバイスから本格的な業務用ツールへと進化していることを示しています。6DOFトラッキングと圧力感知機能を備えたこのスタイラスは、3D空間での精密な作業を可能にし、建築設計、工業デザイン、医療分野での活用が期待されます。特に、空間内での寸法測定や注釈機能は、従来のCADソフトウェアでは実現困難だった直感的な3D設計体験を提供する可能性があります。

空間ウィジェット機能の導入も重要な進歩です。ユーザーが物理空間の特定の場所にウィジェットを固定できることで、日常的なワークフローとの統合が大幅に改善されます。時計、天気、写真、音楽などのウィジェットが空間に定着することで、より自然で効率的な情報アクセスが可能になります。

Look to Scroll機能は、アクセシビリティの観点からも画期的な進歩です。視線だけでコンテンツをスクロールできることで、身体的な制約があるユーザーにとってもより使いやすいデバイスとなります。また、開発者向けAPIの提供により、サードパーティアプリでもこの機能を活用できるようになります。

この技術革新がもたらす最も重要な変化は、空間コンピューティングの実用化加速です。これまでVision Proは「未来的だが実用性に欠ける」という評価を受けることが多かったものの、物理的な入力デバイスのサポートと90Hzハンドトラッキングの組み合わせにより、既存のワークフローとの親和性が大幅に向上します。

技術的な観点から見ると、異なるメーカーのハードウェア間の互換性確保は複雑な課題です。ソニーのコントローラーとAppleのvisionOSとの間で、レイテンシーや精度、バッテリー管理などの最適化がどの程度実現されるかは、実際のリリース後の検証が必要でしょう。

Protected Content APIの導入は、企業向け市場での本格的な展開を示唆しています。医療記録やビジネス予測などの機密情報を安全に扱える環境が整うことで、Vision Proの業務利用が大幅に拡大する可能性があります。

長期的な視点では、この動きは空間コンピューティング市場全体の成熟を促進する触媒となる可能性があります。Appleがオープンな姿勢を示すことで、他のVR/ARメーカーも相互互換性の向上に取り組む可能性が高まります。これは最終的に、消費者にとってより柔軟で選択肢の多い空間コンピューティング環境の実現につながるでしょう。

また、visionOS 26の年号ベースの命名規則採用は、AppleのOS戦略の統一化を示しており、Vision Proが同社の主力プラットフォームとして本格的に位置づけられていることを物語っています。これは、今後のハードウェア展開や価格戦略にも大きな影響を与える可能性があります。

【用語解説】

6DOF(6自由度):Six Degrees of Freedomの略で、3次元空間における物体の位置と回転を表す6つの自由度(前後・左右・上下の移動3軸と、ピッチ・ヨー・ロールの回転3軸)を指す。VR/ARデバイスにおいて、より自然で精密な空間認識と操作を可能にする技術。

ハプティクス:触覚フィードバック技術の総称。振動や抵抗感、質感などの触覚情報をユーザーに伝える技術で、VRコントローラーやスマートフォンなどで物理的な感覚を再現する際に使用される。

空間コンピューティング:物理空間とデジタル情報を融合させたコンピューティング環境。AR/MR技術により、現実空間にデジタルオブジェクトを配置し、直感的な操作を可能にする次世代のユーザーインターフェース概念。

Look to Scroll:visionOS 26で導入された視線追跡によるスクロール機能。ユーザーが視線を移動させるだけでコンテンツをスクロールでき、スクロール速度のカスタマイズも可能。

空間ウィジェット:visionOS 26で導入された機能で、時計、天気、音楽、写真などのウィジェットを3D空間の特定の場所に固定配置できる。ユーザーがVision Proを装着するたびに同じ場所に表示される。

Protected Content API:企業向けに提供される新しいAPI。医療記録やビジネス予測などの機密情報へのアクセス制御、コピー防止、スクリーンショット禁止、画面共有防止機能を提供する。

【参考リンク】

Apple(日本)(外部)アップルの日本公式サイト。Vision ProやvisionOSをはじめとする同社製品の最新情報、技術仕様、購入情報を提供している。

Apple Newsroom – visionOS 26発表(外部)visionOS 26の公式発表記事。空間ウィジェット、改良されたPersonas、新しい企業向けAPIなどの詳細な技術仕様と機能説明を掲載。

PlayStation VR2 – Wikipedia(外部)ソニーのVRヘッドセット「PlayStation VR2」の詳細な技術仕様、開発経緯、販売実績などを網羅した百科事典記事。

【編集部後記】

AppleがvisionOS 26でPSVR 2コントローラーやロジテック・ミューズのサポートを発表したことで、Vision Proの使い方に新しい選択肢が加わりました。コントローラーのフィードバックや空間スタイラスの操作性は、ゲームやクリエイティブな作業の幅を広げてくれます。Apple独自の美学と他社デバイスの組み合わせが今後どんな体験を生み出すのか、実際の利用シーンを見守りたいと思います。テクノロジーの進化が、日常の中でどんな変化をもたらすのか楽しみです。

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乗杉 海
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