2026年6月19日、中国の防衛装備・技術展示会「Defence Information Equipment & Technology Exhibition 2026」が北京で開催されたと報じられた。同展示会は火曜日から3日間の日程で行われ、中国の防衛関連サプライヤーHarbin Xinguang Optic-Electronics Technologyが開発した携行型レーザー兵器「利剣」シリーズが公開された。
利剣シリーズは高エネルギーレーザーでドローンを撃墜し、最大射程は1,200メートルだが、携行型モデルの射程はこれより短い。携行型の利剣IIと利剣IIIは、レーザー発振器、空冷装置、手持ち式操作端末の3部品で構成され、バッグに収納できる。
利剣IIの重量は30kg、利剣IIIは25kg。製造元によれば、利剣IIIは4秒以内にドローンを焼き、次の発射前の冷却は5秒未満だという。
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China showcases portable laser weapons for a single soldier to shoot down drones
【編集部解説】
兵士が背負って運べるレーザー兵器という発想は、長くSF映画の中だけのものでした。それが2026年6月、北京の防衛装備展示会で「製品」として並んだことに、まず時代の節目を感じます。
なぜ今、これを取り上げるのか。背景にあるのは、ウクライナや中東の戦場で一変した「ドローン戦」の現実です。数万円規模の小型ドローンが、桁違いに高価な装備や人命を脅かす。この非対称性こそが、各国に対ドローン技術の開発を急がせている最大の理由です。
レーザーの利点は、まさにこの非対称性をひっくり返す点にあります。1発に数百万円かかるミサイルではなく、電力さえあれば「ほぼ弾切れなし」で迎撃できる。利剣IIIは1機を4秒で焼き、5秒未満で次に備えるとされ、製造元によれば1台あたり約200万元(約29万5000ドル、日本円で約4400万円。2026年6月時点、1ドル=150円換算)とされています。
一方で、報道されたスペックは冷静に読む必要があります。携行型の出力は約2キロワットで、射程は500メートル。展示で目を引く「1,200メートル」は、液冷の大型筐体を要する固定式の利剣10G(出力約10キロワット)の数字です。携行型と固定式の数字を混同すると、能力を過大評価してしまいます。
技術的に注目したいのは、利剣IIIが発振器15kg・空冷10kgの計25kgまで軽量化された点と、レーダーなど外部センサーと連携し、AIが射程に入った目標を識別・捕捉するとされる点です。製品担当者のジャオ・ヤオ氏は、理論上1〜2人が背負って展開できると説明しています。軍事評論家のソン・ジョンピン氏は、分隊・小隊規模の部隊が即席の防空拠点を作れる装備になりうる、と評しています。
ここにはポジティブな面と懸念の両方があります。低コストで部隊を守れる防御技術である一方、AIによる自動的な目標捕捉は、「誰が引き金を引くのか」という自律兵器の論点に直結します。攻撃ではなく迎撃用途とはいえ、人間の判断がどこまで介在するのかは、今後の国際的な規範づくりで避けて通れません。
長い視点で見れば、これは中国だけの動きではありません。米軍は車両搭載型の20キロワット級システムを試験中で、イスラエルは100キロワット級「アイアンビーム」を昨年実戦配備しました。指向性エネルギー兵器は、いま静かに、しかし確実に「研究段階」から「配備段階」へと移りつつあります。
最後に一つ。これらのスペックは、すべて製造元の展示資料と担当者の説明に基づくもので、第三者による独立した検証は経ていません。展示会は受注を狙う場でもあります。期待を寄せつつ、しかし鵜呑みにはしない——それが、未来の入り口に立つ私たちに求められる姿勢だと考えます。
【用語解説】
指向性エネルギー兵器(DEW)
火薬や弾丸ではなく、レーザーやマイクロ波などのエネルギーを目標に直接照射して無力化する兵器の総称である。利剣シリーズはこのうちレーザー方式にあたる。
高エネルギーレーザー
標的を焼き切る、あるいは加熱して破壊するのに十分な出力をもつレーザー。出力はキロワット(kW)で表され、利剣の携行型は約2キロワット、固定式の利剣10Gは約10キロワットとされる。
キロワット(kW)
電力の単位。レーザー兵器では出力の目安となり、数値が大きいほど遠距離・短時間で目標を破壊しやすい。一般に長射程の迎撃には数十キロワット級が必要とされる。
UAV(無人航空機)
無人で飛行する航空機の総称。一般に「ドローン」と呼ばれる機体を含む。近年の戦場では偵察から攻撃まで幅広く使われ、その安価さが対ドローン技術の必要性を高めている。
ピッチ角
照射方向を上下に向ける角度のこと。利剣IIと利剣IIIはいずれも90度を超えるピッチ角を持つとされ、真上に近い角度の目標にも対応できる。
利剣(リジエン)シリーズ
ハルビン・シングアン(哈尔濱新光光電科技)が開発したレーザー兵器群。「鋭い剣」を意味する。携行型の利剣II・利剣III、固定式の利剣10Gなどで構成される。
ジャオ・ヤオ(趙耀)
ハルビン・シングアンの製品担当者。今回の展示会で、携行型の構成・重量・運用方法を説明している。
ソン・ジョンピン(宋忠平)
中国の軍事評論家で、人民解放軍の元教官。携行型レーザーが分隊・小隊規模の即席の防空拠点になりうると評している。
【参考リンク】
哈尔濱新光光電科技股份有限公司 公式サイト(外部)
※海外からのアクセスは制限されているようです。
利剣シリーズを開発した中国の光電子技術企業の公式サイト。2007年設立で本社はハルビン市、レーザー対抗システムなどを手がける上場企業。
【参考記事】
China unveils man-portable anti-drone laser(Tom’s Hardware)(外部)
利剣の重量・出力・価格や、米国・イスラエルの高出力レーザーとの比較を詳述。スペックの一次根拠として最重要の記事。
Chinese firm’s man-portable laser weapon zaps drones(Interesting Engineering)(外部)
携行型レーザーの戦術的意味を解説。重量を機関銃と弾薬に例え、レーザー兵器の電力・冷却の技術的前提に言及している。
China Reveals Two New Laser Weapons(Army Recognition)(外部)
中国の対ドローン・レーザー開発の流れを示す記事。CCTV報道や2025年の北京での配備例を伝え、利剣を潮流に位置づける。
【編集部後記】
正直に言うと、最初にこのニュースを見たとき「いよいよSFが現実になったな」と少しワクワクしてしまいました。でも調べていくうちに、展示で目立つ数字と携行型の実力には差があることや、AIが標的を選ぶという部分の重みに気づかされました。
みなさんは、この「期待」と「不安」のどちらを強く感じましたか。私自身、テクノロジーの最初の窓口として、これからもこうした両面を一緒に見つめていけたらと思っています。












