Cloudflareは長年、AIクローラーへの対抗策を打ち出し、その代表格としてOpenAIを名指しで批判してきました。今回、その相手と共同でリサーチパイロットを始めると聞いて、驚いた方も多いのではないでしょうか。この提携は、これまでの姿勢とどう両立するのでしょうか。
Cloudflareは2026年7月8日、OpenAIとの共同リサーチパイロットを発表した。Cloudflareのグローバルネットワークが持つシグナルが、AI検索エンジンによるオープンウェブ上のコンテンツの発見・インデックス化にどう役立つかを検証する取り組みで、回答の精度と適時性の改善に重点を置く。
コンテンツの新しさやトラフィックの質、ページの実際の変更といったリアルタイムのネットワークインサイトを用いて、AIによるクローリングとインデックス作成の向上を目指す。Cloudflareのネットワークはウェブの20%以上を支えており、OpenAIは最先端モデルや大規模検索応答システム、実際のユーザーからの問い合わせをテストに活用する。
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Cloudflare、OpenAIとの研究パイロットを発表
【編集部解説】
今回のパイロットで問われているのは、Cloudflareが「コンテンツ制作者を守る側」として打ち出してきた立場と、AI検索最大手であるOpenAIとの技術協業がどう両立するのか、という点です。
Cloudflareは2025年7月1日、「Content Independence Day」と銘打った施策を発表し、対価を支払わないAIクローラーをデフォルトでブロックする方針へ転換しました。このときマシュー・プリンスCEOは、コンテンツ制作者がAIクローラーに採掘され尽くしていると表現し、OpenAIのクローラー経由では従来のGoogle検索と比べてトラフィックの獲得が750倍難しく、Anthropicの場合は3万倍難しいと名指しで指摘していました。
その1年後にあたる2026年7月1日、Cloudflareはこの路線をさらに強化しています。9月15日以降、検索・エージェント・学習の用途が混在した「混在型クローラー」を、広告掲載ページでデフォルトブロックする方針を発表し、Pay Per Crawlも成果連動型の「Pay Per Use」へと移行させています。この発表のわずか1週間後に飛び込んできたのが、今回のOpenAIとの共同リサーチパイロットです。
プレスリリース上では、パイロットの内容はコンテンツの新しさ、トラフィックの質、ページの実際の変更といったCloudflareのリアルタイムなネットワークシグナルを、OpenAIのAI検索が回答の精度と適時性を高めるために活用できるかを検証する、という技術的な実証実験にとどまっています。対価の支払いや収益分配についての言及はありません。これは、Cloudflareがこの1年進めてきた「対価なきクロールは許さない」という収益化路線とは、別の軸で動いている可能性があります。
日本の読者にとっても無関係ではありません。Cloudflareはウェブ全体の20%以上のトラフィックを支えており、日本語サイトの多くもこのネットワークを経由しています。ネットワークシグナルの活用がAI検索エンジンでのコンテンツの見つかりやすさに影響するのであれば、日本語コンテンツがどう扱われるかにも波及しうる話です。
現時点で明らかになっていないのは、このパイロットにパブリッシャーへの対価が組み込まれるのか、対象となるサイトの範囲や期間はどの程度か、そして参加サイトのコンテンツがChatGPTの回答で優遇的に扱われるようになるのか、といった点です。Pay Per Useの提携先として名前が挙がっているのはCeramic.aiとYou.comであり、現時点で公表されている提携先には、OpenAIの名前は含まれていません。
批判の的にしていた相手と、技術面では手を組む。この構図をどう読むかは、パイロットの詳細が明らかになるにつれて変わってくるはずです。
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2025年7月のデフォルトブロック転換とPay Per Crawlベータの経緯を扱った記事。今回のOpenAIパイロットの前史にあたる。
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ボットトラフィックが人間を上回った現状に対するCloudflareの別の対応策。同社が進めるAI時代のインフラ再設計という文脈を共有する。
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Pay Per Useを支える決済基盤「x402」に言及。今回のパイロットが将来的に収益化と接続する可能性を考える上での技術的背景。
【編集部後記】
AIクローラーへの対抗を掲げてきた企業が、その対抗相手であったOpenAIと手を組みました。矛盾のようにも見えますが、対立と協業は必ずしも相反しないのかもしれません。この提携がコンテンツを作る側にとって公正な仕組みにつながるのか、既存の力関係が形を変えて続くだけなのか、現時点では判断がつきません。パブリッシャーへの対価という論点に、今回の提携がどう接続していくのかも見えていません。私たちは、この先の展開を注意深く見届けていきます。
【用語解説】
Pay Per Crawl/Pay Per Use
Cloudflareが2025年に導入した、AIクローラーによるコンテンツアクセスへの課金の仕組み。当初はクロール1件ごとの課金だったが、2026年7月からコンテンツが実際にAIの回答に使われた際に対価が発生する「Pay Per Use」へ移行。
混在型クローラー(mixed-use crawler)
検索・エージェント動作・学習という複数用途を1つのボットで兼ねるAIクローラーの分類。Cloudflareは2026年9月15日から、広告掲載ページでこの種のクローラーをデフォルトブロックする方針。
Content Independence Day
Cloudflareが2025年7月1日に掲げた標語。対価を伴わないAIクローラーのアクセスをデフォルトで拒否する方針転換を指す。2026年も同日付で第2弾の施策を発表。
【参考リンク】
Cloudflare(外部)
CDN・DDoS防御・ウェブセキュリティを手がける米テクノロジー企業。世界のウェブトラフィックの約20%を処理する。
OpenAI(外部)
ChatGPTを開発する米AI企業。今回のパイロットでは検索応答システムと実ユーザーの問い合わせデータを提供する。
【参考記事】
Content Independence Day: no AI crawl without compensation!|Cloudflare公式ブログ(外部)
2025年7月、Cloudflareが対価なきAIクローラーのアクセスをデフォルト拒否する方針へ転換した際の公式発表。OpenAI・Anthropicへの名指し批判の初出。
Cloudflare’s new policy pushes AI companies to pay for publishers’ content|TechCrunch(外部)
2026年7月、混在型クローラーの広告ページ上デフォルトブロックとPay Per Useへの移行を報じた記事。
Cloudflare will filter out web crawlers that serve AI companies|Engadget(外部)
同方針の報道。GoogleのAI学習兼用クローラーへの批判的文脈とともに、Pay Per Useの提携先を伝えている。












