AIとの会話が自然になるほど、重要になるのは回答の賢さだけではありません。周囲の音声や映像から、誰がAIに話しかけているのかを見分けるSeedRealtimeは、リアルタイム対話AIの評価軸をどこまで変えるのでしょうか。
ByteDance Seedは2026年8月5日、ネイティブな音声映像フルデュプレックスLLM「SeedRealtime」を発表した。音声、映像、時間情報を共同で理解し、対話の対象とユーザーの意図を識別することで、「見る・聞く・話す」体験を提供するモデルである。
連続的に変化するマルチモーダル情報を扱い、周囲に複数の人物や音声が存在する状況でも、AIへ向けられた対話を識別することを目指す。モデル規模、処理遅延、対応言語、API、料金、日本からの利用条件などは、確認できた公式情報では明らかにされていない。
From:
SeedRealtime Audio-Visual Full-Duplex LLM Released: Toward Omni-Modal Natural Interaction
【編集部解説】
SeedRealtimeの位置づけを理解するには、ByteDance Seedが2026年4月に発表した音声モデル「Seeduplex」と比較する必要があります。
Seeduplexは、ユーザーの音声を聞きながらAIが話せるネイティブな全二重音声モデルです。音響情報と会話の文脈を組み合わせ、ユーザーが話し終えたのか、考えながら一時的に止まっているのか、AIへの呼びかけではない会話なのかを判断します。ByteDance Seedは、従来の半二重モデルと比べて、複雑な場面でAIが早く話し始める割合を40%減らしたと説明しています。
同社はSeeduplexの発表時点で、音声とテキストに映像入力を加え、「聞く・見る・話す」を連携させる方向を示していました。SeedRealtimeは、こうした技術的な流れの先に位置するモデルと捉えられます。公式説明によると、音声、映像、時間情報を共同で理解し、対話対象とユーザーの意図を識別するとされています。
映像を読み取れるAI自体は新しいものではありません。SeedRealtimeで注目すべき点は、単一の画像を質問後に解析するだけでなく、音声と映像が変化する時間の流れを含めて扱い、対話の対象を識別しようとしていることです。
複数の人がいる環境では、周囲の音声をすべてAIへの指示として扱うわけにはいきません。SeedRealtimeが掲げる「interaction target」の識別は、音声と映像を組み合わせ、現在の対話がAIへ向けられたものかを判断する考え方だと解釈できます。
これは、AIの評価軸が回答内容の正確さだけでは足りなくなることを意味します。内容が正しくても、無関係な会話へ反応すれば、日常空間で使いやすいアシスタントにはなりません。誰に応答するか、現在の発話がAIへの呼びかけかという判断も、リアルタイムAIの性能を左右します。
スマートグラス、車載システム、家庭用ロボットなど、利用者が画面へ向かって明確な命令を入力しない機器では、この能力が特に重要になると考えられます。ただし、これらはSeedRealtimeの機能から考えられる活用例であり、現時点で公式に導入製品として発表されたものではありません。
現時点のSeedRealtime公式ページと公式モデル一覧では、モデル規模、処理遅延、対応言語、評価用ベンチマークなどの詳細な数値は確認できません。APIの提供方法、利用料金、開発者向けドキュメント、日本から利用できるかどうかについても明示されていません。
従来の対話AIは、ユーザーが明確な質問を入力して初めて処理を始める形式が中心でした。SeedRealtimeが示しているのは、周囲の音声と映像を時間の流れとともに扱い、誰がAIへ話しかけているのかを識別する方向です。対話AIが日常空間へ入るほど、回答生成以外の状況理解が重要になることを示す発表といえます。
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【編集部後記】
ライブ音声モデルが発展していけば、AIとの会話はさらに自然になっていきそうです。その変化によって、スマートグラスを使う場面も今より増えていくのではないでしょうか。目の前の状況を見ながら、その場で音声によるサポートを受けられる体験は魅力的です。これまで一部の用途に限られていたスマートグラスが、日常的なデバイスへ近づく可能性も感じます。
実際の製品へどのように組み込まれていくのか、今後の展開に注目したいです。
【用語解説】
フルデュプレックス(全二重)
入力と出力を同時に行える通信・対話方式。音声AIでは、ユーザーの声を聞きながら応答し、割り込みにも対応する仕組み。
マルチモーダルAI
テキスト、音声、画像、映像など、種類の異なる情報を組み合わせて理解・生成するAI。SeedRealtimeでは音声、映像、時間情報を共同で扱う構成。
時間情報(Temporal Information)
単一の画像や発話だけでなく、映像や音声が時間とともにどう変化したかを示す情報。動作や会話の流れを把握するための要素。
インタラクションターゲット(Interaction Target)
AIが応答すべき人物や対象。SeedRealtimeは、音声、映像、時間情報を使って対話対象を識別すると説明されている。
エンドポイント検出
ユーザーの発話が終了したか、一時的に言葉を止めただけかを判定する処理。AIが早すぎるタイミングで話し始めることを防ぐための技術。
【参考リンク】
ByteDance Seed(外部)
ByteDanceの基盤モデル研究チーム。大規模言語モデル、音声、映像、世界モデル、ロボティクスなどの研究・モデル情報を公開。
Seed Models(外部)
SeedRealtime、Seeduplex、Seedanceなど、ByteDance Seedが開発するAIモデルの公式一覧。SeedRealtimeの基本的な位置づけも掲載。
Seeduplex(外部)
ネイティブ全二重音声LLMの公式プロジェクトページ。音声の干渉抑制や発話終了判定を扱うモデル。
ByteDance Seed Speech Team(外部)
音声理解、音声生成、リアルタイム対話などを研究するByteDance Seedの音声チーム紹介ページ。
【参考記事】
Introducing Seed Full-Duplex Speech LLM|ByteDance Seed(外部)
ネイティブ全二重音声モデルSeeduplexの構造、干渉抑制、会話のタイミング制御を説明した公式発表。SeedRealtimeとの技術的な連続性を確認できる一次情報。
Doubao Realtime Voice Model|ByteDance Seed(外部)
ByteDanceのリアルタイム音声モデルにおける音声理解・生成の統合と、音声対話技術の開発方針を説明した公式記事。
Seed LiveInterpret 2.0 Released|ByteDance Seed(外部)
全二重音声理解・生成フレームワークを利用した同時通訳モデルの公式発表。ByteDanceがリアルタイム音声処理を実製品へ展開する事例。


















