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Amazonが新AI基盤モデル「Nova Premier」を発表、Bedrockで提供開始 – 最大100万トークン処理のマルチモーダルAI

 - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-05-01 15:58 by admin

Amazonは2025年4月30日、同社のAIモデルファミリー「Nova」の中で最も高性能な基盤モデル「Nova Premier」を発表した。Nova Premierはテキスト、画像、動画のマルチモーダル処理に対応し、音声には対応していない。このモデルはAmazonのAI開発プラットフォーム「Amazon Bedrock」で利用可能となっている。

Nova Premierの大きな特徴は、最大100万トークン(英語で約75万語、日本語ならその半分程度)という非常に長いコンテキスト長を持ち、膨大なテキストやデータを一度に解析できる点である。Amazonは、複雑な文脈理解や多段階の計画、複数ツールやデータソースを横断したタスク実行に強みがあると説明している。

一方で、GoogleのGemini 2.5 Proなど他社のフラッグシップモデルと比べると、コーディングや数学・科学分野の一部ベンチマークでは劣る結果も示されている。しかし、知識検索や視覚的理解の分野では高い評価を得ている。

価格は、入力トークン100万あたり2.50ドル、出力トークン100万あたり12.50ドルと、Google Gemini 2.5 Proとほぼ同等の水準に設定されている。

Nova Premierは、OpenAIやDeepSeekの一部モデルのような追加の計算資源を使った慎重な事実確認(推論特化型)には対応していない。Amazonはこのモデルを、より小型のAIモデルに知識や能力を転移する「蒸留」用途に最適だと位置付けている。

また、AmazonのCEOであるアンディ・ジャシー氏は、同社が1,000以上の生成AIアプリケーションを開発中であり、AI関連事業の売上が前年比で3桁成長し、年間数十億ドル規模に達していると述べている。

from:Amazon launches Nova Premier, its most capable AI model yet

【編集部解説】

Amazonが発表した「Nova Premier」は、同社のAIモデル開発の現状と今後の戦略を象徴するプロダクトです。最大100万トークンという長大なコンテキスト長は、これまでのAIモデルでは難しかった大規模な文書や複雑なデータセットの一括解析を可能にし、法務や研究、エンタープライズ分野などで新たな活用が期待されています。特に、複数のデータソースを横断した文脈理解や多段階のタスク実行に強みを持つ点は、AIによる業務自動化や高度な意思決定支援の可能性を大きく広げるものです。

一方で、Nova PremierはGoogle Gemini 2.5 Proなど一部の競合他社フラッグシップモデルと比較すると、コーディングや数学・科学分野のベンチマークでやや劣る点も明らかになっています。これは、AIモデルの設計思想や学習データの違い、または特定分野への最適化の度合いによるものと考えられます。知識検索や画像・動画を含む視覚的理解の分野では高いパフォーマンスを示しているため、用途ごとにモデルを使い分ける時代が到来しているとも言えるでしょう。

価格設定はGoogle Gemini 2.5 Proとほぼ同等であり、競争が激化する生成AI市場においてコストパフォーマンスも重視されていることがうかがえます。加えて、Nova Premierは「推論」特化型モデルではなく、OpenAIやDeepSeekの一部モデルのような追加の計算資源を使った慎重な事実検証には対応していません。そのため、厳密なファクトチェックが求められる業務では他モデルとの適切な使い分けが必要となります。

Amazonが強調する「蒸留」用途、すなわちこの高性能モデルを教師としてより小型で効率的なモデルに知識や能力を転移させる技術は、今後のAI活用を大きく加速させるでしょう。これにより、企業は自社のニーズに合わせて軽量かつ高精度なAIを短期間で構築できるようになります。

AIの大規模化・多機能化が進む中で、コストやデータプライバシー、倫理的なガバナンスの重要性も高まっています。Nova Premierの登場は、AIの社会実装がより現実的なものとなる一方で、モデルの選択や運用における責任ある判断がこれまで以上に求められる時代の到来を示唆しています。今後は、用途ごとの最適なAIモデルの選定や、信頼性・透明性の確保が大きなテーマとなるでしょう。

 【用語解説】

蒸留(Distillation)
大規模なAIモデル(教師モデル)の知識や能力を、より小型で効率的なモデル(生徒モデル)に転移する技術。これにより、推論速度や運用コストを抑えつつ、高精度なAIサービスの提供が可能となる。

マルチモーダル
AIがテキスト、画像、動画など複数の異なるデータ形式を統合的に処理・理解する能力。現実世界の多様な情報を一括で扱えるため、より高度なタスクに対応できる。

コンテキスト長(Context Length)
AIモデルが一度に処理できる最大の入力データ長。Nova Premierは100万トークンを一度に解析できるため、長大な文書や複雑なデータセットの処理が可能となる。

【参考リンク】

Amazon Nova Premier公式ブログ(外部)
Amazonが2025年4月に発表した最新の大規模AI基盤モデル。テキスト、画像、動画のマルチモーダル処理に対応し、最大100万トークンという非常に長いコンテキスト長を持つ。複雑な文脈理解や多段階のタスク実行に強みがある。

Amazon Bedrock公式ページ(外部)
Amazon Web Services(AWS)が提供する生成AI開発プラットフォーム。複数の大規模AIモデルをAPI経由で利用でき、独自データによるカスタマイズやアプリケーション開発が容易にできる。

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りょうとく
主に生成AIやその権利問題について勉強中。
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