GMO SAFE|ヒューマノイドの社会実装に向けた課題へ「答え」と「裏付け」が揃う

[最終更新]

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人型ロボットが空港のグランドハンドリングや工場の現場で働く姿は、もう珍しい光景ではありません。少子高齢化で人手不足が深刻化する日本にとって、ロボティクスの技術的な成熟は追い風です。生成AIの波に出遅れた日本が「フィジカルAI」で巻き返しを賭けようとするとき、避けて通れない論点があります。ネットワークに常時つながり、カメラやマイクを備えたロボットの安全性です。2026年8月7日、GMO AIRが発表した「GMO SAFE」は、この論点に対する一つの答えでした。そして、その答えを出した組織が十分な技術力を備えていることを示す出来事が、わずか3日後に起きています。GMOのホワイトハッカーチームが、世界最高峰のセキュリティ大会で世界一になったのです。


GMOインターネットグループ傘下のGMO AI&ロボティクス商事(GMO AIR)は2026年8月7日、人型ロボットの安全運用を支える新たな仕組み「GMO SAFE」の提供を発表した。

GMO AIRはこれを「ロボットに着せるセキュリティウェア」と表現している。機種ごとのセキュリティリスク評価、評価結果を踏まえた運用環境の設計、運用中のネットワーク通信の監視という3点で構成され、機体内蔵コンピューターの通信設定から接続ネットワークの構成、周辺機器の接続構成までを個別に設計する。

提供はGMOグループ内のサイバーセキュリティ専門会社GMOサイバーセキュリティ byイエラエと連携し、対象はGMO AIRで購入した機体に限られる。今後はジオフェンスや特定条件下での強制停止をオプションとして提供する体制を整えるという。

GMOグループ代表の熊谷正寿氏はフィジカルAIを「少子高齢化で縮む日本産業を救う最大の革命」と位置づけ、GMO AIR社長の内田朋宏氏は「機体を販売する事業者が、同時にその安全を支える」という考えのもとで開発したとコメントしている。

From: 文献リンクGMO AIR、人型ロボット(ヒューマノイド)の安全運用を支える 新たな仕組み「GMO SAFE」の提供を開始

【編集部解説】

人手不足の日本と、遅れて始まったフィジカルAIの賭け

日本は労働力不足と高齢化という構造的な課題を抱えています。一方で、ロボティクスの技術は近年急速に成熟し、人と同じ空間で働けるヒューマノイドが現実の選択肢になりました。生成AIの分野で先行者に後れを取った日本にとって、ロボットと現実世界を結びつける「フィジカルAI」は、巻き返しを賭けられる数少ない領域です。

政府もこれを国策として位置づけています。日本政府は2026年3月、「AIロボティクスに関する関係府省連絡会議」で「AIロボティクスの社会実装に向けた政府の方向性」を決定し、同年5月に改訂しました。自民党のロボット議員連盟(会長:山際大志郎氏)も2026年6月23日、5年間で30万台以上のAIロボットを国内に導入するよう政府に求める提言をまとめ、木原稔官房長官に手渡しています。2026年9月15日には「第4回 GMO大会議・秋・フィジカルAI 2026」が開催され、片山さつき財務大臣をはじめ、デジタル大臣、経済産業省審議官が登壇する予定です。日本のフィジカルAIは、一企業の取り組みというより、国全体の成長戦略として動き出しています。

脆弱性、代理店、そして禁輸——GMO AIRが立っていた場所

この動きの中で、GMO AIRは早くから前線に立ってきました。2026年5月、JALグランドサービスと組んで羽田空港でのヒューマノイド実証実験を始めています。同じ月、私たちは、GMO AIRが扱うUnitree製ロボットに、BLE通信の暗号鍵が機体ごとに変わらない固定値だったという脆弱性「UniPwn」(CVE-2025-35027)が報告されたことを報じました。root権限での遠隔操作を許すだけでなく、周囲の同型ロボットへ自動的に感染を広げるワーム型の性質を持っていたとされ、この脆弱性への根本的な対応は今も明らかになっていません。

そして2026年6月22日、GMO AIRはこのUnitree Roboticsの国内正規代理店になりました。機体を届ける立場と、その機体の脆弱性が指摘される立場を、同時に引き受けたことになります。

この構図に、外側から強い圧力がかかりました。2026年7月28日、米連邦通信委員会(FCC)は「外国製の高度ロボットデバイス」を安全保障上の制限リスト「カバードリスト」に追加しました。特定の国や企業を名指しする措置ではありませんが、世界のヒューマノイド市場でトップシェアを争うUnitree Roboticsへの影響が大きいとみられています。米国は、原産国を理由に新規輸入そのものを制限するという、強い手段を選びました。

GMO SAFEという答え、DEF CONという裏付け

この状況に対してGMO AIRが出した答えが、GMO SAFEです。プレスリリースには、次の一文があります。

「リスクがあることを理由に、ロボットを使わない」という判断は、現場の課題解決につながりません。

GMOインターネットグループ「GMO AIR、人型ロボット(ヒューマノイド)の安全運用を支える 新たな仕組み『GMO SAFE』の提供を開始」(2026年8月7日)

米国が同じ種類のリスクに「輸入を止める」という強制力で応えたのに対し、GMO AIRは「安全に使える環境を整える」という形で応えました。機種ごとにリスクを評価し、その結果を踏まえて運用環境を設計する。評価の対象は機体そのものだけでなく、機体が置かれる環境にまで及びます。GMO AIRが自社で「ロボットに着せるセキュリティウェア」と表現している通り、既製品を配るのではなく、その機体、その現場に合わせて一着ずつ仕立てるという発想です。

この発想を裏づける実例もあります。旭化成の守山製造所・生産技術開発センターでは2026年2月、Unitree G1を用いて、薬液槽に投入する実験フィルム搬送用カゴの把持と歩行搬送を検証しました。空港の駐機場で貨物を運ぶ機体と、工場で薬品の入ったカゴを運ぶ機体では、守るべきものも想定すべき事態も違います。メーカー側から機能安全を作り込むアプローチ(NVIDIAの「Halos for Robotics」など)とは異なり、機体の外側・運用環境の側から安全に近づく設計です。

そして、この答えを出した組織の技術力そのものを裏づける出来事が、わずか3日後に起きました。2026年8月10日、GMOのホワイトハッカーが参加する国際合同チーム「Blue Water」が、世界最高峰のセキュリティ大会「DEF CON 34」のCTF決勝で世界1位を獲得したと発表されました。3年連続世界2位を経ての初優勝です。GMOサイバーセキュリティ byイエラエとGMO Flatt Securityのエンジニアがこのチームに参加しています。答えを出しただけでなく、それを支えるだけの技術力を世界最高峰の舞台で証明してみせた——この巡り合わせが、GMO SAFEという発表に説得力を与えています。

9月、そしてその先へ

運用中のセキュリティ監視の詳細は、2026年9月に案内される予定です。グループ会社GlobalSign byGMOはすでに、ロボット同士の通信にROS2のDDS-Security証明書で身分証を持たせる仕組みを提供しており、9月の案内でこれとGMO SAFEがどう組み合わさるのかも見えてきそうです。同じ9月15日には「第4回 GMO大会議・秋・フィジカルAI 2026」も開催されます。そのプレスリリースは「”すべての人にインターネット”をコーポレートキャッチに事業を展開するGMOインターネットグループ」という一文から始まります。ドメイン、サーバー、電子証明書というインターネットインフラを30年以上支えてきた会社が、ヒューマノイドという新しい領域で同じ役割を担おうとしている——GMO SAFEは、その延長線上にあります。


脆弱性の発覚(5月)、代理店契約(6月)、規制の直撃(7月)、そして答えとその裏付け(8月)——私たちはこの流れを一貫して追いかけてきました。リスクを恐れて社会実装を遅らせるのではなく、リスクに向き合いながら前に進む。人手不足という待ったなしの課題を抱える日本にとって、これは心強い一手だと私たちは考えます。「すべての人にインターネット」というGMOグループの企業理念は、「すべての人にAI、セキュリティ、ロボットを」という射程にまで広がりつつあるようです。

【編集部後記】

GMO SAFEという答えを、私たちは歓迎したいと思います。安全保障を理由に「使わない」という選択を迫る国もある中で、「安全に使い続ける」という道を用意しようとする試みだからです。現状はGMO AIRで購入したロボットに限られますが、この仕組みが他社製品・サービスにも広がっていくことを、一人の生活者として願っています。

【関連記事】

Unitree Go2、BLE経由でroot奪取の脆弱性 — ジョーダン氏が中国サーバーへの通信を動画で指摘

JAL・GMO AIR、羽田空港で国内初のヒューマノイドロボット実証実験へ

なぜGMOがロボット代理店になったのか|プレスリリースの奥にある”信頼設計”の論理

【解説】米FCCが中国製ロボットを輸入禁止へ|日本のGMO AIRも「他人事ではない」理由

Blue Water、DEF CON 34 CTF決勝で世界1位|GMOのホワイトハッカーが活躍

【参考リンク】

GMO AI&ロボティクス商事(GMO AIR)公式サイト(外部)
GMO SAFEの問い合わせ窓口、取扱機種、実証事例を掲載。

GMOサイバーセキュリティ byイエラエ公式サイト(外部)
GMO SAFEと連携するセキュリティ専門会社。200名超のホワイトハッカーが所属。

「GMO SAFE」提供開始(PDF版)(外部)
3つの構成を示した表と代表者コメントを一覧できる。

FACT SHEET: FCC Updates Covered List(PDF)(外部)
7月28日措置の一次情報。domestic end product基準や条件付き承認の枠組みを確認できる。

第4回 GMO大会議・秋・フィジカルAI 2026 特設ページ(外部)
2026年9月15日開催、参加申込受付中。

【用語解説】

フィジカルAI
生成AIなどの知能をロボットやドローン、自動運転など現実世界の機器へ実装する技術の総称。GMOグループは2026年を「ヒューマノイド元年」と位置づけている。

Covered List(カバードリスト)
米国のSecure and Trusted Communications Networks Act of 2019にもとづき、FCCが管理する機器・サービスの一覧。国家安全保障上、容認できないリスクをもたらすと判断されたものが掲載される。

高度ロボットデバイス(Advanced Robotic Devices)
2026年7月28日のCovered List更新で新設された区分。ヒューマノイドや四足歩行ロボットなどの移動型ロボットが該当する。特定の国や企業ではなく、48 CFR §25.101(a)の「domestic end product」に該当するかどうかで線が引かれる。

機器認証(FCC equipment authorization)
電波を発する機器を米国で流通させるために必要なFCCの認証。Covered Listに掲載されると新規に取得できなくなり、輸入・販売が事実上できなくなる。

JC-STAR
経済産業省とIPAが運用する、IoT製品のセキュリティ対応状況を★1から★4で可視化するラベリング制度。輸入や販売を禁止する制度ではないが、一部の電力インフラ機器では技術要件として使われ始めている。

UniPwn(CVE-2025-35027)
2025年9月に公表された、Unitree製ロボットのBluetooth Low Energy通信に存在した脆弱性。固定の暗号鍵により、root権限での遠隔操作と他機体への自動感染(ワーム化)が可能だった。

CTF(Capture The Flag)
用意された環境の脆弱性を突き、隠された文字列の取得を競うセキュリティ競技。DEF CON CTF Finalsは、各チームが自陣を守りながら他チームを攻めるAttack & Defense形式で行われる。

グランドハンドリング
空港で航空機の運航を地上から支える業務の総称。手荷物・貨物の搭降載、機内清掃、特殊車両の操作などを含む。


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