Blue Water、DEF CON 34 CTF決勝で世界1位|GMOのホワイトハッカーが活躍

[最終更新]

Googleで優先するソースとして追加するボタン

Maple Mallard Magistratesは、DEF CON CTF Finalsで4年続けて優勝していました。その連覇の次に頂点へ立ったのが、3年連続で2位に甘んじてきたBlue Waterです。GMOインターネットグループが8月10日、世界1位を正式に発表しました。小池悠生氏にとっては、9度目の決勝でした。


GMOインターネットグループは2026年8月10日、同グループのホワイトハッカーが参加する国際合同チーム「Blue Water」が「DEF CON 34」のDEF CON CTF Finalsで世界1位を獲得したと発表した。DEF CON 34は8月6日から9日まで米ラスベガスで開催された。

Blue Waterはperfect blueとWater Paddlerの合同チームに、GMOサイバーセキュリティ byイエラエとGMO Flatt Security所属のエンジニアを含むundef1nedが参戦したチームで、2025年まで3年連続2位だった。同グループからは6チームが出場した。

From: 文献リンクGMOインターネットグループのホワイトハッカーが参画する「Blue Water」、世界最高峰「DEF CON 34 CTF Finals」で悲願の世界1位

【編集部解説】

3年連続2位から、4年目の頂点へ

DEF CON CTF Finalsの過去3年の最終スコアを並べると、Blue Waterがどこにいたかがはっきりします。

Maple Mallard MagistratesはDEF CON 30から4年続けて頂点にいました。あと一歩で優勝を逃してきたため、今年こそ何としても頂点に立ちたいという強い思いで挑んだ——GMOサイバーセキュリティ byイエラエ執行役員/CTOの小池悠生氏は、正式発表のコメントでそう振り返っています。

ただし、この優勝を「前年王者を破って連覇を止めた」と読むことはできません。4連覇したMaple Mallard Magistratesを構成していたPlaid Parliament of Pwning、Maple Bacon、The Duckのうち、UBCとカーネギーメロン大学のメンバーの一部は、2026年からは運営側に回っています。UBCの発表によれば、両大学の学生・卒業生30名超がBenevolent Bureau of Birdsとして、4年の任期で予選と決勝の設計を担うことになりました。Blue Waterの初優勝は、4年続いた連覇の次の大会で頂点に立ったものです。

今年のBlue Waterは、予選を9位で通過しました。予選上位12チームが決勝に進む仕組みなので、滑り込みに近い位置からの決勝進出です。

DEF CON CTF Finalsは、Attack & Defense形式で行われます。各チームが自陣のサービスを運用・防御しながら、同時に他チームのサービスを攻める。予選はJeopardy型の問題を中心に、King of the HillやLiveCTFなども含む構成でした。形式が異なる以上、予選9位という順位だけから決勝での実力を判断することはできません。

「人間が主導する」というルールが引かれた予選と、見えない決勝

DEF CONのCTFアーカイブによれば、DEF CON 33のCTFで、Blue Waterのメンバーは自分たちのエージェントツールが問題を解き終えていたことを審判に知らされて初めて気づきました。主催者はこれを「刺激的な目新しさ」と位置づけ、2026年3月の告知で「今年はそれが常態になると見込む」と書いています。

DEF CON 34からCTFの運営を担うのがBenevolent Bureau of Birdsです。2022年から2025年までを担ったNautilus Instituteからの交代初年度でした。

その予選ルールには、人間が主導することが条件として書き込まれました。完全に、あるいは主として自律的なチームの参加は認められず、違反は失格の対象になりうる。人間はLLMベースを含むどんな道具を使ってもかまわないが、AIエージェントの問いかけに「はい」と答え続けるだけでは、人間が道具を使ったとは認めない。主催者はこの方針を、コミュニティとその価値観を映したものだと説明しています。

ここで慎重になる必要があります。この方針が書かれているのは、予選の規則です。同じ文書は、決勝の正式な規則とポリシーは予選のあとに配布すると記しており、その決勝用ルールは公開が確認できていません。予選と同じ条件が決勝にも適用されたのかどうかを、いまの公開資料から判断することはできません。

したがって、Blue Waterが決勝でAIをどこまで使い、最終判断をどのように人間が担ったのかも、現時点では分かりません。分かっているのは、この競技を運営する側が、予選の段階で「人間が主導する」という線を明示的に引いたという事実です。

小池氏は「AIの急速な進展でCTFが大きな転換点を迎える中、競技中は一瞬の遅れが大きな差につながる緊張感がありました」と振り返っています。7月の時点では「今の形で仲間と優勝を目指せる機会は、今年が最後かもしれない」とも書いていました。その「今の形」が何を指すのかは明示されていません。ただ、競技の形そのものが変わりつつあるという認識は、当事者の言葉から読み取れます。

自律エージェントは、どこまで来ているのか

線の向こう側の数字も、今年の予選から出ています。

カリフォルニア大学サンタバーバラ校とカリフォルニア大学バークレー校の研究チームが開発した自律エージェント「SageCTF」は、48時間の予選課題に単独で取り組み、15課題に挑んで7課題を解き、8つのフラグを取得しました。ただし、大会が完全自動のボットによるフラグ提出を認めていなかったため、開発チームはこれらを提出していません。競技と、その文化を妨げないためだと説明しています。

得点換算すると1,743点。686の得点チームの順位表に当てはめた場合、上位5%相当になります。さらにこの得点は、No AIまたはLow AIと自己申告した計175チームすべてを上回る計算です。完全解答までに要した時間は、1課題あたり平均5時間でした。

課題の難しさも数字で出ています。SageCTFが解いた7課題のうち6課題は、正答率が10%を下回っていました。

そして開発チーム自身が、こう書き添えています。最良の人間チームは依然として強く、CTFは審美眼と創造性、深いセキュリティの直観に支えられた人間の技芸であると。

自律エージェントが上位5%相当まで届いた年に、人間が主導する予選を勝ち上がったチームが、4年続いた連覇のあとの頂点に立った。この二つは、どちらも2026年の出来事です。

6チームが残した結果

GMOインターネットグループからは、今年6チームが出場しました。DEF CON CTF Finalsの世界1位に加え、IoT Village CTFで2位、Game Hacking Village CTFで3位、Blue Team Village CTFとHardware Hacking Village CTFで4位、Cloud Village CTFで9位という結果です。

Cloud Village CTFは3年連続の世界1位から一転して9位となり、4連覇はなりませんでした。事前には全問正答の実績を挙げて4連覇を目標に掲げていたチームです。一方で、SOCやデジタルフォレンジックを担う実務者が出場したBlue Team Village CTFは、初参戦で4位に入っています。

日本にとっての意味

ひとつ注意が要ります。Blue Waterは日本のチームではありません。perfect blueとWater Paddlerの合同チームに、日本人チームのundef1nedが参戦した国際チームです。GMOサイバーセキュリティ byイエラエとGMO Flatt Securityのエンジニアは、そのundef1nedに所属するメンバーとして加わっています。

「日本が世界一になった」という物語に回収すると、事実から離れます。正確には、国境をまたいだチームに日本のホワイトハッカーが合流し、その挑戦を国内企業が支えたという構図です。

とはいえ、その構図自体が新しい。GMOインターネットグループは2023年からDEF CONに参加し、出場者が競技に専念できる体制づくりを支援してきました。攻撃側だけでなく、守りの実務者を世界の舞台に送り出す動きも始まっています。

この年に起きたこととして、記録に残る

CTFで磨かれる攻撃と防御の知見は、脆弱性診断やセキュリティ研究といった実務と接点を持っています。

4年続いた連覇のあとに、3年連続2位のチームが頂点へ立ったこと。その直前に当事者が「今の形は今年が最後かもしれない」と言い残していたこと。主催者が「自律エージェントが常態になる」と見込みながら、同時に予選では「人間が主導すること」をルールとして残したこと。

この三つが同じ年に重なったこと自体が、技術史の記録に値します。来年、同じ形の優勝がありうるのかどうかは、まだ誰にも分かりません。

【関連記事】

GMOイエラエと韓国LIG D&Aが提携、AI脆弱性自動修復を共同研究へ
DEF CON 34の開催前に公開した記事。宇宙システムへのAI自動修復の適用と、AIxCCの決勝結果までを扱っている。

Linuxカーネルに19年間のtype confusion─GMOイエラエとAIが解き明かした「見えないバグ」の全容
ホワイトハッカーとAIの協働により、19年間見過ごされていたLinuxカーネルの脆弱性を発見した事例を追った記事である。

GMOとAnthropicの戦略的パートナーシップ締結|Claude Enterprise全社導入、サイバー攻撃対策、フィジカルAI活用などの全容
GMOグループのAI活用方針と、セキュリティ領域への展開を整理した記事。用語解説の項で、CTFの定義そのものにも触れている。

【編集部後記】

小池悠生氏は今回のコメントで、2014年から挑戦を続け、今回が9度目の決勝だったと書いています。12年です。

昨年の敗戦のあと、Blue Waterのメンバーは防御用インフラの改善など課題が明確になったと語っていました。Attack & Defenseは、攻めながら守る形式です。9回目でようやく届いたチームが、最後に何を変えたのか。決勝の内訳が公表されるとすれば、そこが最も読み応えのある部分になります。


【用語解説】

CTF(Capture The Flag)
用意された環境の脆弱性を突き、隠された文字列(フラグ)の取得を競うセキュリティ競技。DEF CONのCTFは1996年のDEF CON 4に始まる。

Attack & Defense形式
DEF CON CTF Finalsが採用する形式。各チームが自陣のサービスを運用・防御しながら、同時に他チームのサービスを攻める。予選で用いられるJeopardy形式(出題を個別に解いて得点を積む形式)とは競技性が異なる。

Blue Water
perfect blueとWater Paddlerの共同チーム名。「💦」の絵文字をチームの識別子として用いる。DEF CON 34では日本人チームundef1nedが参戦した。

Maple Mallard Magistrates
Plaid Parliament of Pwning、Maple Bacon、The Duckの合同チーム。DEF CON 30(2022年)からDEF CON 33(2025年)まで、DEF CON CTF Finalsを4年連続で制していた。

自律エージェント
人間の逐次的な指示を受けずに、環境を観測して自ら次の行動を決めるAIシステム。DEF CON CTFの予選ルールでは、完全に、あるいは主として自律的なチームの参加は認められていない。

LLM(Large Language Model)
大量のテキストを学習し、文章の生成や理解を行う大規模言語モデル。DEF CON CTFの予選ルールでは、LLMベースのツールを人間が使うこと自体は制限されていない。

ホワイトハッカー
攻撃者と同じ技術を用いながら、脆弱性の発見と防御のためにその技術を使う技術者。

SOC(Security Operations Center)
監視対象のシステムやネットワークを継続的に監視し、検知した脅威に対応するセキュリティ組織や機能。

デジタルフォレンジック
侵害の痕跡をログやディスクイメージから収集・解析し、何が起きたかを再構成する調査手法。

フェルミ推定
限られた手がかりから概算値を導く推定手法。厳密な悉皆調査ではないため、算出根拠と時点の明示が前提となる。

【参考リンク】

DEF CON(外部)
1993年から米ラスベガスで毎年開催される世界最大級のハッカー会議。DEF CON 34は2026年8月6日から9日まで開催された。

Benevolent Bureau of Birds(外部)
DEF CON 34からDEF CON CTFの運営を担う主催者。予選は2026年5月22日から24日にオンラインで実施された。

DEF CON CTF Quals 2026 ルール(外部)
DEF CON CTF予選の公式ルール。完全に自律したチームの禁止、AI利用度の任意申告、上位12チームが決勝に進む規定を掲載している。

GMOサイバーセキュリティ byイエラエ株式会社(外部)
200名超のホワイトハッカーが所属すると公表するセキュリティ企業。「ホワイトハッカー数No.1」はフェルミ推定による自社調べである。

GMO Flatt Security株式会社(外部)
セキュリティエンジニアによる診断と、AIエージェント「Takumi byGMO」を提供する日本発の企業。Blue Waterに参加している。

ネットのセキュリティもGMO|ハッキングコンテスト国際成績(外部)
GMOインターネットグループ各社のCTF戦績をまとめた公式ページ。年度別の順位と大会名、参加チーム名を一覧で確認できる。

CTFtime|💦(Blue Water)(外部)
Blue WaterのCTFtime上のチームページ。年度別の世界ランキングと、これまでに参加した大会の履歴が確認できる。

【参考記事】

DEF CON Hacking Conference – Capture the Flag Archive(外部)
DEF CON CTFの歴代結果を集約した公式アーカイブ。DEF CON 31から33までの決勝12チーム分の最終スコアを掲載する。

SageCTF: The Most Capable AI Agent for The Most Challenging CTF(外部)
自律エージェントSageCTFが予選課題を解いた記録。フラグを提出していない旨と、得点換算の内訳を明記している。

DEF CON CTF QUALS 2026 RULES(外部)
主催者が公開した予選規則のPDF。決勝の正式な規則とポリシーは予選後に配布すると明記されている。

UBC competitive hacking team to organize this year’s top-tier cybersecurity competition(外部)
UBCの発表。4連覇を経た両大学の学生・卒業生30名超が、4年の任期で運営を担うと説明している。

GMOインターネットグループ、世界最高峰のサイバーセキュリティ競技「DEF CON 34」CTFにグループ横断で挑戦(外部)
2026年7月23日の事前リリース。チーム構成、予選9位での決勝進出、出場前のコメントを掲載している。

GMOインターネットグループのホワイトハッカーチーム「GMOイエラエ」世界最大級のサイバーセキュリティイベント「DEF CON 33」CTF「Cloud Village CTF」世界1位獲得3連覇達成(外部)
2025年8月26日のリリース。前年の決勝が攻防戦形式であること、防御用インフラに課題が残ったことに触れている。

【後編】「DEF CON 33」CTFの舞台裏|GMOサイバーセキュリティ byイエラエが語る、技術と連携でつかんだ世界トップの景色(外部)
GMO Developersによる出場者インタビュー。前年の決勝で何が起き、どこに不足があったかを当事者が語っている。

Googleで優先するソースとして追加するボタン
投稿者アバター
山本 達也 代表社員
合同会社デジタルの窓口 代表。ウェブ解析士。生成AI・サイバーセキュリティ・ 宇宙開発領域を中心に執筆。

関連記事