「動く」から「働く」へ|GMO、空港ヒューマノイドの実証現場をJapan Drone 2026で公開

[更新]2026年5月26日

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空を飛ぶことへの興奮が、少しずつ「空を使いこなすこと」への問いに変わり始めています。ドローンや空飛ぶクルマが日常の風景に近づくほど、浮かび上がってくるのは技術の限界ではなく、地上側の現実——人手、安全、運用コストという、どこか地味で切実な課題です。今年のJapan Droneで何が起きているのかを追うと、「空の未来」が思っていた場所とは少し違う地点に差し掛かっているのが見えてきます。


GMOインターネットグループは2026年6月3日〜5日、幕張メッセで開催される「Japan Drone/次世代エアモビリティEXPO 2026」にPlatinum Sponsorとして出展する。

2022年の初出展から5年目を迎え、今年のテーマは「『動く』から『働く』」。目玉は、GMO AI&ロボティクス商事とJALグランドサービスの共同実証によるヒューマノイドロボットのグランドハンドリングデモで、Unitree Robotics「G1」(4台)、UBTECH「Walker E」(1台)、Booster Robotics「K1」(2台)、Engine AI「PM01」(1台)の計8台が展示される。

GMOグローバルサイン・ホールディングスが開発したドローン操縦VRシミュレーター「GMOフィールドXR」の体験、SkyDriveとのeVTOL共同展示、「空×サイバーセキュリティ」をテーマにした国際コンファレンスも実施予定だ。

From: 文献リンクGMOインターネットグループ、「Japan Drone/次世代エアモビリティEXPO 2026」にトップスポンサーとして出展

【編集部解説】

羽田で「今まさに動いている」ロボットを、展示会で見られる

ドローン展示会にヒューマノイドロボットが登場することへの違和感は、少し考えれば解けます。空を飛ぶ乗り物を社会に定着させるための最大の障壁が、空そのものではなく、地上にあるからです。

グランドハンドリングとは、航空機の到着から出発までの地上作業全般、たとえば手荷物の搭降載、貨物の積み替え、機内清掃、機体の誘導などを指します。目立ちませんが、一便のフライトを成立させるために不可欠な仕事で、現在はほぼ人力に依存しています。インバウンド旅客6,000万人という政府目標と、着実に進む労働人口の減少が同時に進行する中、この現場に静かな危機が迫っています。

公式プレスリリースより引用

なぜ「ヒューマノイド」でなければならないのか

自動化の試みは以前から行われてきましたが、グランドハンドリングの現場は既存のロボットに手ごわい環境です。航空機の直下という限られたスペースで、サイズも形状もバラバラな特殊車両(GSE)を人間と混在して扱う必要があり、固定式の自動化設備では対応できません。

ヒューマノイドが選ばれた最大の理由は、「人間のために作られた環境をそのまま使える」点にあります。空港の施設も設備も機体構造も、人間の手と身体を前提として設計されています。ヒューマノイドならば、それらを大規模改修なしに使い回せます。理屈のうえでは、1台が手荷物の積み込みから機内清掃、GSEの操作まで担える汎用性もあります。

実証が始まって、見えてきたこと

2026年4月27日、JALグランドサービス(JGS)とGMO AI&ロボティクス商事(GMO AIR)は「国内初の空港ヒューマノイド実証実験」の開始を発表し、5月から羽田空港で実際の試みが始まりました。

約1ヶ月が経ち、Japan Drone 2026が開かれる今、実証は走り始めています。

ただし、現場担当のJGS吉岡智也氏が記者会見で述べたことは、技術的な楽観論とは距離を置いていました。「現場はスタート段階。実証実験を開始してすぐに輸送作業ができるわけではない」。

最初の3年間で取り組む作業は、グランドハンドリング全体ではなく、コンテナ移送の一部動作だけです。具体的には、ドーリー(台車)のストッパーを解除し、コンテナを回転させ、ハイリフトローダーへ押し込む、という一連の動作。この3つの動きをまず個別に開発し、2027年下期ごろから統合して一連の作業として動けるかを検証する計画です。実用化の目標は2029年以降とされています。

操縦者不足という、もう一つの地上課題

ヒューマノイドが「現場の人手」という課題に向き合う一方、同じブースにはまったく異なる角度から空の社会実装を支える展示もあります。GMOグローバルサイン・ホールディングスが開発した「GMOフィールドXR」は、ドローンの飛行環境をVRで再現し、実際のプロポ(送信機)を使って操縦訓練やインフラ点検業務のシミュレーションができるシステムです。

ドローンの社会実装が進むにつれ、操縦者の育成とライセンス取得が新たなボトルネックになりつつあります。実機を飛ばすには場所・天候・安全確保のコストがかかり、訓練機会を量産することは容易ではありません。VRシミュレーターはその制約をある程度取り除き、反復訓練を低コストで実現できる可能性があります。ヒューマノイドが「人の代わりに働く」ための技術であるとすれば、VRシミュレーターは「人がより適切に働くため」の技術、アプローチは対照的ですが、向いている方向は同じです。

公式プレスリリースより引用

展示会が持つ意味

Japan Drone 2026のGMOブースに登場するヒューマノイドは、コンセプトモデルではありません。羽田で実際に試行が進んでいる機体(Unitree G1、UBTECH Walker E)と同型機を含む、稼働中のプロジェクトに接続されたロボットです。デモを見るという体験が、「未来の想像」ではなく「現在進行形の課題観察」になっているのが、今回の展示のユニークな点です。

GMO AIR滝澤照太氏は「いきなり完全自律を目指すのではなく、模倣学習や強化学習などから段階的に進める」と述べています。プログラムの更新や機体の見直しも随時行う方針で、「進展著しい分野だけに、良いものを都度選んでいく」という姿勢が見えます。

空の移動が日常化する未来は、地上の仕事をどう成立させるかという問いと不可分です。そのことを最もリアルに体感できる場が、今年のJapan Droneかもしれません。

【用語解説】

eVTOL(イーブイトール)
Electric Vertical Take-Off and Landing の略。電動で垂直に離着陸する航空機の総称。いわゆる「空飛ぶクルマ」のこと。滑走路を必要とせず、都市部での運用を想定した次世代エアモビリティとして開発が進む。

グランドハンドリング(グラハン)
航空機が空港に到着してから再出発するまでの地上作業全般。手荷物・貨物の搭降載、機内清掃、給油、機体の牽引・誘導、ブリッジ操作など多岐にわたる。高度な専門知識と人手を要する一方、自動化が遅れてきた領域。

GSE(Ground Support Equipment)
空港地上支援機器の総称。ハイリフトローダー、ドーリー(台車)、牽引車など、グランドハンドリングに使用する特殊車両・機器類を指す。航空機周辺で使用するため、安全規格が厳しく設定されている。

ULD(Unit Load Device)
ユニットロードデバイス。航空機の貨物室に搭載するための規格化されたコンテナやパレット。貨物を効率よく積み込み・積み降ろしするために使用する。今回の実証実験でヒューマノイドが取り扱う対象となっている。

プロポ(送信機)
ドローンを操縦するためのリモートコントローラーの総称。無線でドローンに操作信号を送る機器で、機体の姿勢・速度・方向を制御する。GMOフィールドXRでは、実際の操縦で使用するプロポをVR環境に接続し、実機に近い操作感での訓練を実現している。

【参考リンク】

GMOグローバルサイン・ホールディングス(外部)
電子認証・印鑑事業、クラウドインフラ事業、DX事業を手がけるGMOグループの中核会社(東証プライム:3788)。GMOフィールドXRの開発元。

GMO AI&ロボティクス商事(GMO AIR)(外部)
AI活用導入支援およびロボット・ドローン導入・活用支援を行うGMOインターネットグループの事業会社。ヒューマノイド派遣サービスを展開し、今回の羽田空港実証実験を技術面で担う。

GMO AI&ロボティクス商事 Japan Drone 2026 特設ページ(外部)
今回の出展内容・ブース情報・事前登録フォームをまとめた特設サイト。

JAL企業サイト|国内初・空港ヒューマノイドロボット実証実験プレスリリース(外部)
2026年4月27日付の一次発表。実証期間・対象業務・実用化目標の公式情報を確認できる。

GMOサイバーセキュリティ by イエラエ(外部)
脆弱性診断・ペネトレーションテスト・IoT診断・自動車セキュリティ診断などを手がけるGMOグループのセキュリティ専門会社。今回のパネルディスカッション「空×サイバーセキュリティ」に登壇。

SkyDrive(外部)
国産空飛ぶクルマの開発・製造メーカー。今回の展示でGMOと共同出展し、eVTOLを展示する。

Japan Drone/次世代エアモビリティEXPO 2026(外部)
ドローン・eVTOLに特化した国内最大規模の専門展示会。一般社団法人JUIDA主催。2026年6月3〜5日、幕張メッセにて開催。

【参考動画】

空港の地上業務で人型ロボット活用の実証実験 来月から JALグループ(NHK)|NHKニュースによる報道映像。「人間の手作業を前提とした環境」へのヒューマノイド導入という文脈をわかりやすく解説。

【参考記事】

JALとGMO、羽田空港でのヒューマノイドロボット活用の実証実験 — Impress Watch(外部)
4月27日の記者会見を詳報。JGS吉岡氏・GMO AIR滝澤氏の発言、開発ロードマップ、GMO AIR選定理由など、編集部解説の主要根拠となった記事。

JALとGMO/羽田空港で貨物の搭降載などヒューマノイド活用を実証実験 — LNEWS(外部)
物流専門メディアによる報道。初期段階では「業務の可視化・分析」から始め、安全に作業できる領域を特定するプロセスを詳述。

JALとGMO、グラハン作業を担うヒューマノイドロボット開発に着手。ルール作りも — AIRLINE web(外部)
航空専門メディアによる詳報。現場担当者の発言「現場はスタート段階」と実用化に向けたルール整備への言及を収録。

GMO AIR、ドローン展示会でヒューマノイドや四足ロボット、VRシミュレーターなど展示 — ロボスタ(外部)
2025年のJapan Drone出展時のレポート。GMOフィールドXRの展示内容として「国家資格試験コース」「インフラ点検業務のリアルな体験」を詳述。今回2026年版との比較文脈として参照可能。

【関連記事】

【編集部後記】

空の未来を語るとき、私たちはつい「飛ぶこと」の側から想像してしまいます。でも現場を追うと、今まさに格闘しているのはレバーの操作やコンテナの押し方という、地味で具体的な作業です。「動く」と「働く」のあいだにある距離を、私たちはまだ正確には知りません。その距離が、今年のJapan Droneで少し見えてくるかもしれません。

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りょうとく
趣味でデジタルイラスト、Live2Dモデル、3Dモデル、動画編集などの経験があります。最近は文章生成AIからインスピレーションを得るために毎日のようにネタを投げかけたり、画像生成AIをお絵描きに都合よく利用できないかを模索中。AIがどれだけ人の生活を豊かにするかに期待しながら、その未来のために人が守らなけらばならない法律や倫理、AI時代の創作の在り方に注目しています。