X、収益分配プログラムを9月7日終了|新報酬制度「オリジナルコンテンツ」へ

[最終更新]

Googleで優先するソースとして追加するボタン

投稿がどれだけ見られたかではなく、何を生み出したかで評価する——SNSの収益化モデルが、いま転換点を迎えています。X(旧Twitter)は長年運営してきた収益分配プログラムの新規受付を停止し、新たな報酬制度への切り替えに動き出しました。何が変わり、何が変わらないのか。その中身を見ていきます。


8月8日に明らかになったところによると、Xは収益分配プログラムへの新規申請受付を停止し、9月7日をもって同プログラムを完全に終了する。

後継として立ち上がったのが「オリジナルコンテンツ報酬プログラム」で、自ら執筆・撮影・制作した文章や写真、動画、ミーム等のオリジナルコンテンツが獲得した有効インプレッションに応じて報酬が支払われる。他人の投稿から収益を得る場合は、論評・分析の追加や創造的な編集が条件となり、単なるキャプション付けは対象外となる。参加資格は18歳以上、対象国居住、Premium系サブスクリプションへの加入、認証済みフォロワー500人以上、過去90日間で認証済みユーザーからのホームタイムライン表示50万回以上等である。旧プログラム参加者は、9月8日以降に新プログラムの資格を得た時点で再申請が必要となる。

From: 文献リンクX is replacing revenue sharing with a new original content rewards program

【編集部解説】

なぜ、いま制度を刷新したのか

Xの収益分配プログラムは、広告収益の一部を投稿のインプレッション数に応じて分配する仕組みでした。「見られれば見られるほど稼げる」という単純な報酬構造は、内容の質を問わない投稿を大量に生み出す土壌にもなっていました。他人の動画を無断転載してすかしを付けるだけのアカウント、「リプライした人全員フォローします」といった相互エンゲージメントを煽る投稿など、プログラム開始以来くり返し指摘されてきた副作用です。

X側もこの問題を放置していたわけではありません。5月には転載アカウントの収益資格を剥奪する措置を取り、7月にはプロダクト責任者のニキータ・ビア氏はエンゲージメントを直接要求する投稿を収益プログラムから排除すると表明していました。今回の刷新は、こうした個別対応の延長線上ではなく、報酬の算出方法そのものを組み替える対応と位置づけられます。X側のクリエイタープロダクト担当、アレグラ・ジャッキア氏は自身のポストで、収益分配プログラムは「インセンティブが噛み合わなくなる地点まで来ていた」と説明しています。

もう一点見逃せないのは、報酬の原資となる「有効インプレッション」がPremium会員による閲覧に限定されている点です。これは、クリエイターへの支払い規模が、Xの有料会員基盤の大きさと直接結びつくことを意味します。ここは元記事や公式発表が明言していない部分ですが、「オリジナルコンテンツを書けば稼げる」という制度設計は、同時に「Premium会員を増やすことに力を貸してほしい」というXの経営上の要請とも重なっている、と読むことができそうです。

クリエイターにとっての変化

新プログラムの参加条件は、認証済みフォロワー500人以上、90日で50万インプレッション以上です。フォロワー条件自体は旧プログラムと変わらず500人以上のままですが、インプレッションの数え方は大きく変わりました。旧プログラムは3か月で500万インプレッション以上という、閲覧の出所を問わない合計値だったのに対し、新プログラムは90日で50万インプレッション以上と絶対数は減ったものの、Premium会員によるホームタイムライン上でのユニークな閲覧のみに絞り込まれています。単純な母数としては入りやすくなったように見えても、実際には「稼ぎやすさ」の物差しそのものが変わったと捉えた方が実態に近いでしょう。新旧の条件を整理すると、次のようになります。

項目旧プログラム(収益分配)新プログラム(オリジナルコンテンツ報酬)
フォロワー条件500人以上500人以上(変更なし)
インプレッション条件3か月で500万インプレッション以上(合計)90日で50万インプレッション以上(Premium会員のユニーク閲覧のみ)
収益の原資広告収益の分配Premium会員による「有効インプレッション」
対象コンテンツ制限なし(転載・キャプション付けも収益化可能だった)オリジナルコンテンツのみ(転載・キャプション付けは対象外)

転載や、状況を説明するだけのキャプション付けでは収益化できなくなる点は、独自の取材・分析・創作を続けてきたクリエイターにとって歓迎できる変化のはずです。一方で「他人の投稿に有意な論評・分析を加える」という基準がどこで線引きされるのかは、元記事の時点でも詳細が示されていません。どの程度の付加価値があれば「オリジナル」と認められるのか、実際の運用が始まってみないと分からない部分が残ります。

残る懸念

判定の精度には注意が必要です。現地では収益分配プログラムが数少ない現金収入源の一つだったこともあり、今年2月、ナイジェリアのクリエイターの約8割が、AIモデル「Grok」によってエンゲージメント操作と判定され、収益が凍結される事態が起きています。「エンゲージメント操作かどうか」の判定でさえこの精度だったことを踏まえると、より主観的な線引きを伴う「オリジナルかどうか」の判定が、同種の誤判定を招かないかは注視すべき点です。新プログラムの運用方針がこの懸念にどう応えるかは、この記事の時点では明らかになっていません。

移行のスケジュールにも留意が必要です。旧プログラム参加者への最終支払いは8月14日・8月28日・9月11日に行われる予定で、9月8日以降に新プログラムへ申請した既存クリエイターの初回支払いは9月25日になる見込みです。旧プログラムからの移行がどれだけ滑らかに進むかは、実際に多くのクリエイターが申請してみるまで分かりません。

また、3月に導入された「居住地域のエンゲージメントを重視する」ポリシーが新プログラムに引き継がれるかどうかも、元記事の時点で明らかになっていません。Premium会員という有料の壁を挟むことで、なりすましアカウントによるエンゲージメント操作は一定程度抑制されると考えられますが、それが地域重視ポリシーの代替として十分機能するのかは、今後の運用を見なければ判断できません。

【関連記事】

X Money、米国で始動|送金・利息付き残高・Visaカードを統合、SNSは金融の入口へ
Xはこの数週間、収益化の仕組みだけでなく送金・決済機能でも大きな変更を進めています。

X「x-algorithm」を解説|Grok基盤で変わった推薦設計
有効インプレッションの算出元となるホームタイムラインの表示順は、この推薦アルゴリズムが担っています。

【編集部後記】

「見られること」と「つくること」は、似ているようで違う営みです。今回の変更が示すのは、プラットフォームが評価の軸を後者へ引き戻そうとする動きの一端かもしれません。もっとも、その線引きが実際どう運用されるのかは、まだ見えてこない部分も多くあります。ふだん目にしている投稿のうち、どれが本当に「誰かがつくったもの」なのか。私も、その問いを持ち続けていきたいと思います。


【用語解説】

有効インプレッション(Qualified Impressions)
Premium・Premium+・Premium Businessいずれかの会員が、ホームタイムライン上で投稿の50%以上を画面に表示させた際にカウントされるユニークな閲覧。重複閲覧、広告・プロモーション経由の閲覧、不正な閲覧は除外対象。

エンゲージメントベイト(Engagement Bait)
「いいねした人全員フォローします」等、相互のリアクションを直接要求する投稿。新旧いずれのプログラムでも収益化の対象外。

ホームタイムライン(Home Timeline)
Xアプリの「フォロー中」フィード。新プログラムでは、このフィード上での認証済みユーザーによる閲覧のみが収益算出の対象となる。

認証済みフォロワー(Verified Followers)
Premium系プランへの加入により青い認証マークが付与されたアカウントによるフォロー。新プログラムの「フォロワー500人以上」の条件は、このフォロワー数を指す。

【参考リンク】

Xヘルプセンター「Original Content Rewards」(外部)
新プログラムの参加条件・収益算出方法・禁止行為をまとめた公式ヘルプページ。オリジナルコンテンツの定義や審査プロセスの詳細も掲載。

Xヘルプセンター「Creator Revenue Sharing」(外部)
9月7日に終了する旧・収益分配プログラムの公式解説ページ。新旧プログラムの条件比較に有用。

X Premiumのご案内(外部)
新プログラムの参加要件となるPremium各プランの機能・料金の公式ページ。

X Creators(公式アカウント)(外部)
新プログラムの発表元。今後のアップデートや運用方針の変更が随時発信される。

【参考記事】

X Cracks Down On Accounts That ‘Game The Revenue Share Program’ — Forbes(外部)
旧プログラムのもとで横行していた転載アカウントへの収益資格剥奪の事例を報じる。

X updates its engagement bait detection — Social Media Today(外部)
プロダクト責任者ニキータ・ビア氏による、エンゲージメント誘発投稿の収益プログラムからの排除方針を報じる。

アレグラ・ジャッキア氏(X, Creators Product)本人ポスト(外部)
新プログラム発表にあたっての公式コメント。旧プログラムのインセンティブ設計の問題点に言及。

Nigerian creators are turning to rage-bait to cash in on X — Techpoint Africa(外部)
AIモデルGrokによるエンゲージメント操作判定でナイジェリアのクリエイターの約8割が収益凍結された事例を報じる。判定精度への懸念材料。

X Launches New Original Content Rewards Program: Eligibility — AndroidHeadlines(外部)
移行期の支払いスケジュール(最終支払い日、新プログラム初回支払い日)を詳細に報じる。

Googleで優先するソースとして追加するボタン
投稿者アバター
まお
おしゃべり好きなライターです。趣味は知識をためることとゲームをすること(ソシャゲや音楽ゲームが大好きです)。最近はAIの情勢や地政学の問題を勉強中。時折記者として会見や発表に赴いたり、インタビューを行ったりもしています。

関連記事