Last Updated on 2025-05-20 14:03 by admin
Metaが所有するInstagramは、TikTokやYouTubeとの競争を強化するため、米国のクリエイター向けに新たな「Referrals(紹介)」プログラムを開始した。
このプログラムでは、クリエイターがInstagram外のプラットフォームでリンクを共有し、新規ユーザー獲得やアプリへのトラフィック増加に貢献した場合、最大2万ドル(約300万円)の報酬を得られる。
招待制のこのテストは5月から6月にかけて6週間実施され、新規ユーザー1人につき100ドル、または1,000回の「適格な訪問」ごとに100ドルを獲得できる仕組みだ。支払いは第三者パートナーのGlimmerを通じて行われる。
この動きは、ソーシャルメディア業界で激化するクリエイター獲得競争の一環であり、TikTokも同様の紹介プログラムを展開している。
References:
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【編集部解説】
Instagramが新たに導入した「Referrals」プログラムは、ソーシャルメディア業界における「クリエイターエコノミー」の重要性を如実に表しています。このプログラムの本質は、単なるユーザー獲得戦略ではなく、プラットフォーム間の「クリエイター争奪戦」の最前線と言えるでしょう。
特に注目すべきは、Instagramがクリエイターに「ライバルプラットフォーム上で自社サービスを宣伝する」という逆転の発想を採用している点です。TikTokやYouTube、Discordなど競合サービス上でInstagramのコンテンツを宣伝させることで、クロスプラットフォームでの影響力拡大を狙っています。
この戦略の背景には、Metaが直面している複数の課題があります。一つは米連邦取引委員会(FTC)による独占禁止法訴訟です。Markザッカーバーグ氏は2025年5月初旬の公聴会における証言で、InstagramとWhatsAppの買収がユーザーにとって有益だったと主張しましたが、FTCはMetaが**「パーソナルソーシャルネットワーキングサービス市場」**で独占状態にあると主張し、訴訟は継続中です。
また、TikTokが提供している「Creator Rewards Program」や「Specialized Rewards Program」など、競合他社も次々とクリエイター向けの報酬プログラムを強化しています。Instagramは2025年初め、TikTokからの移行を促す「Breakthrough Bonus」や、一部の有力クリエイターに月額最大5万ドルの独占コンテンツ契約を提供するなど、複数の施策を展開しています。
このような報酬プログラムの拡大は、ソーシャルメディア企業がユーザーの注目を集めるために、クリエイターの力に依存する度合いが高まっていることを示しています。今後は単なる金銭的インセンティブだけでなく、クリエイターのキャリア構築や長期的な成功をサポートするプラットフォームが優位に立つ可能性があります。
【用語解説】
クリエイターエコノミー:
ソーシャルメディアプラットフォーム上でコンテンツを制作・公開する個人(クリエイター)が収益を得られる経済システム。プラットフォーム提供の収益化機能や企業とのブランド提携などを通じて成立する。
Referrals(紹介)プログラム:
既存ユーザーが新規ユーザーを紹介することで報酬を得られる仕組み。Instagramの場合、クリエイターが自身のリンクを通じて新規ユーザー獲得やアプリ訪問を促進することで報酬を得られる。
FTC(連邦取引委員会):
米国の独立行政機関で、消費者保護と競争促進を目的とする。現在MetaにはInstagramとWhatsAppの買収に関する独占禁止法違反の疑いで訴訟を起こしている。
【参考リンク】
Instagram
Meta社が運営する画像・動画共有に特化したソーシャルメディアプラットフォーム
Meta
旧Facebook社。Instagram、WhatsApp、Facebookなどを運営する世界最大級のソーシャルメディア企業
TikTok
ByteDance社が運営する短尺動画に特化したソーシャルメディアプラットフォーム
Federal Trade Commission
米国の消費者保護と公正な競争を促進する政府機関
【編集部後記】
私たちユーザーにとっては、各プラットフォームがクリエイターの獲得・維持に力を入れることで、より質の高いコンテンツを楽しめるというメリットがあります。一方で、プラットフォーム間の垣根が低くなることで、コンテンツの同質化や、特定のクリエイターへの依存度が高まるリスクもあるでしょう。