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Smart Cards:PayPal支援のRaise社、ギフトカードをブロックチェーンで革新 – 6300万ドルの資金調達で「プログラマブル小売通貨」へ

PayPal支援のRaise社、ギフトカードをブロックチェーンで革新 - 6300万ドルの資金調達で「プログラマブル小売通貨」へ - innovaTopia - (イノベトピア)

Last Updated on 2025-02-28 11:40 by 荒木 啓介

PayPal支援のデジタルギフトカード企業Raise社が、Haun Venturesが主導する6300万ドル(約94億円)の資金調達を2025年2月27日に発表した。この調達により、同社の累計資金調達額は2億2000万ドル(約330億円)を超えた。Amber Group、Anagram、GSRなども今回の資金調達に参加している。

シカゴを拠点とするRaise社は、この資金をブロックチェーン技術を活用した「Smart Cards」プログラムの開発と、グローバルなギフトカードネットワークの近代化を目指す非営利団体Retail Alliance Foundationの拡大に使用する予定だ。同社はギフトカードを「プログラマブルな小売通貨」に変革し、ブランドロイヤルティを強化することを目指している。

創業者兼CEOのジョージ・ブーシス氏は、この取り組みが「市場トレンドへの反応ではなく、長年の投資、研究、インフラ構築の結果」だと述べている。

また、同社は元暗号通貨取引所KrakenのCLOマルコ・サントリ氏、PayPalに買収されたHoneyの共同創業者ジョージ・ルアン氏、フードデリバリーサービスGrubHubの創業者マット・マロニー氏、Parity TechnologiesのCEOビョルン・ワグナー氏を含む新しい取締役会も発表した。

from:PayPal-Backed Raise Secures $63M to Expand Blockchain-Based Gift Card System

【編集部解説】

Raise社の今回の資金調達は、ブロックチェーン技術の実用的な応用例として非常に興味深いものです。ギフトカード市場は数兆ドル規模の巨大産業ですが、従来のシステムでは様々な課題を抱えていました。

Raise社は2013年の創業以来、デジタルギフトカード市場で活動し、これまでに50億ドル(約7,500億円)以上の取引を処理し、約700万人のユーザーと1,000以上の小売パートナーシップを構築してきました。今回の資金調達は、同社がこれまで10年以上かけて開発してきたブロックチェーン技術の本格的な実用化に向けた大きな一歩と言えるでしょう。

従来のギフトカードは、紛失や盗難のリスク、不正利用の可能性、使い忘れによる価値の喪失など、多くの問題がありました。Raise社が開発する「Smart Cards」は、これらの課題をブロックチェーン技術で解決しようとしています。

具体的には、Raise社のモデルではステーブルコイン(米ドルに連動した暗号通貨)を使用して、ギフトカードが使用されるまで消費者の資金をエスクローで保持する仕組みを採用しています。これにより、取引の透明性と安全性が大幅に向上します。

また、ブロックチェーン上でギフトカードを「プログラマブルな小売通貨」として機能させることで、小売業者はより柔軟で創造的なロイヤルティプログラムを設計できるようになります。例えば、特定の条件を満たした場合にのみ使用可能になるギフトカードや、使用状況に応じて追加特典が得られるような仕組みなど、従来のギフトカードでは不可能だった機能が実現可能になるのです。

Raise社はすでに、DOT Walletとの統合を通じてPolkadot Community Foundationとのパートナーシップを結んでいます。さらに2024年8月にはWalletConnectとのパートナーシップを通じて、MetaMask、Phantom、Coinbase Walletなどの主要なデジタルウォレットとの連携も実現しています。これにより、ブロックチェーンベースのギフトカードの利便性と普及が加速する可能性があります。

今回の資金調達には、暗号通貨業界の主要プレイヤーであるHaun Ventures、Amber Group、Web3 Foundationなどが参加していることも注目に値します。これは、Raise社の取り組みが暗号通貨コミュニティからも高く評価されていることを示しています。

一方で、ブロックチェーン技術の導入には課題もあります。消費者の理解と受容、規制環境の整備、既存の決済システムとの互換性など、乗り越えるべきハードルはまだ多く存在します。しかし、PayPalなどの大手決済企業が支援していることからも、この取り組みが単なる実験的プロジェクトではなく、実用化を見据えた本格的な事業展開であることがうかがえます。

ブーシスCEOが述べているように、「暗号通貨業界は今、これまで以上に実用性を必要としている」時代です。Raise社の取り組みは、ブロックチェーン技術の実用的な応用例として、今後の展開が大いに注目されるでしょう。

日本においても、ギフトカードやポイントカードは広く普及していますが、ブロックチェーン技術を活用した革新的なシステムはまだ少ない状況です。Raise社の成功事例は、日本の小売業界やフィンテック企業にとっても参考になる可能性があります。

テクノロジーの進化は私たちの「お金」や「価値」に対する概念そのものを変えていくかもしれません。innovaTopiaでは、今後もこうした革新的な取り組みに注目していきたいと思います。

【用語解説】

  • ブロックチェーン技術
    デジタル情報を分散型のネットワークで管理・記録する技術です。銀行のような中央管理者がいなくても、取引の記録が改ざんできない形で保存されます。
  • プログラマブルな小売通貨
    条件や使用方法をプログラムで設定できる通貨のことです。例えば「特定の店でしか使えない」「一定期間内のみ有効」「使うと自動的にポイントが付与される」などの条件を組み込めます。従来のギフトカードが単なる「使い切り型の前払い券」なら、これは「賢くなったギフトカード」と言えるでしょう。
  • スマートコントラクト
    ブロックチェーン上で自動的に実行される契約プログラムです。「もしAという条件が満たされたら、自動的にBという処理を行う」というルールを設定できます。例えば「商品が届いたら自動的に支払いが行われる」といった仕組みが可能になります。
  • オンチェーン
    取引や情報がブロックチェーン上に直接記録されている状態を指します。オンチェーンのギフトカードは、その発行から使用までの全履歴がブロックチェーン上に透明に記録されます。

【参考リンク】

  • Raise(外部)
    デジタルギフトカードの購入・販売・交換プラットフォームを提供し、ブロックチェーン技術を活用したSmart Cardsを開発しています。
  • Haun Ventures(外部)
    Web3とブロックチェーン技術に特化した投資を行うベンチャーキャピタル。15億ドルの資金を運用しています。
  • Retail Alliance Foundation(外部)
    小売業者、ブランド、開発者、技術者を結集し、イノベーションの推進、価値の提供、不正行為との戦いを目指しています。
  • PayPal(外部)
    世界中で利用されているオンライン決済サービス。近年はブロックチェーンや暗号通貨関連の企業にも投資しています。

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TaTsu
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