advertisements

ソフトバンクら10社、国内最大級AI基盤モデル開発へ——政府が1兆円支援

ソフトバンクら10社、国内最大級AI基盤モデル開発へ——政府が1兆円支援 - innovaTopia - (イノベトピア)

2025年12月19日、高市早苗総理は人工知能戦略本部で「1兆円超をAI関連施策に投資する」と宣言した。フィジカルAI、国産基盤モデル、AI for Scienceへの集中投資により、世界14位に甘んじてきた日本が「反転攻勢」に打って出る——その壮大な計画が示された瞬間だった。

そして12月21日。政府は5年間で約1兆円(63億4000万ドル)を投じる国産AI開発プロジェクトを正式に発表した。ソフトバンクグループを含む約10社が新会社を設立し、国内最大規模の基盤AIモデルを開発する。総理の言葉は、もはや構想ではなく、動き出したプロジェクトとなった。

日本の逆襲が、いま始まる。


日本政府は2025年12月21日、国産AI開発を目指す新会社に対し、5年間で約1兆円(63億4000万ドル)の支援を行うと発表した。新会社はソフトバンクグループを含む約10社が設立し、官民協力により国内最大規模の基盤AIモデルを開発する。

支援は2026年度から開始される予定である。ソフトバンクとPreferred Networksから約100人のエンジニアが参加する。政府は早期に閣議決定される基本計画において、国産AI開発とデータセンター維持の必要性を強調し、国力強化とデジタル赤字削減を図る。また、技術とロボティクスを融合させたフィジカルAIの開発も重要戦略として含まれている。

From: 文献リンクJapan announces US$6 billion support for home-grown AI development

 - innovaTopia - (イノベトピア)

【編集部解説】

この発表は、日本のAI戦略における大きな転換点を示しています。政府支援の1兆円は氷山の一角に過ぎず、実際のプロジェクト総額は約3兆円規模(約190億ドル)に達するとされており、官民一体での本格的な取り組みとなります。

注目すべきは、開発される基盤AIモデルが1兆パラメータレベルを目指している点です。これは米国や中国の最先端モデルに匹敵する規模であり、単なる追随ではなく対等な競争を視野に入れています。2026年度初年度予算として約3000億円が計上される予定で、来春の新会社設立に向けた動きは既に具体化しています。

このプロジェクトが重視する「フィジカルAI」は、日本の製造業とロボティクスの強みを活かす戦略的選択といえるでしょう。AIとロボット技術の融合により、製造現場、介護、物流、災害対応など実世界での適応能力を高めることを目指しています。日本は産業用ロボット分野で技術的優位性を保持していますが、生成AIのロボティクス応用では米中に遅れをとっているため、この巻き返しが急務となっています。

国家安全保障の観点からも、この動きは重要な意味を持ちます。米中製AIモデルの学習データやプロセスは不透明であり、日本の視点から不適切なデータが学習される懸念が指摘されてきました。国産AIの確立により、データ主権の確保とデジタル赤字の削減を同時に目指す構図が見えてきます。

ただし、半導体調達という課題も浮上しています。最先端AIの開発には大量の高性能半導体が不可欠ですが、グローバルな供給競争は激化しています。政府支援にはこの調達支援も含まれており、技術開発だけでなくサプライチェーン確保も重要な戦略要素となっています。

【用語解説】

基盤AIモデル(Foundation Model)
大規模なデータセットで事前学習された汎用的なAIモデルのこと。特定のタスクに特化せず、様々な用途に応用可能な基礎となるモデルを指す。ChatGPTやGPT-4などが代表例である。

フィジカルAI(Physical AI)
AI技術とロボティクスを融合させた技術領域。デジタル空間での情報処理だけでなく、現実世界で物理的な作業を実行できるAIシステムを意味する。製造、物流、介護などの実世界での応用が期待されている。

デジタル赤字
海外のデジタルサービスやクラウドプラットフォームの利用により、国内から海外へ流出する資金の超過分を指す。日本は米国のクラウドサービスやAIツールへの依存度が高く、この赤字が拡大している。

パラメータ
AIモデルの学習によって調整される内部の変数。パラメータ数が多いほどモデルの表現能力が高くなる傾向があり、最先端のAIモデルは数千億から数兆パラメータを持つ。

【参考リンク】

SoftBank Group Corp.(ソフトバンクグループ株式会社)(外部)
孫正義氏が率いる日本の投資持株会社。通信事業、テクノロジー投資、AIロボティクス事業など幅広い分野で事業を展開している。

Preferred Networks, Inc.(プリファードネットワークス)(外部)
2014年設立の日本のAIスタートアップ企業。独自のAIプロセッサ「MN-Core」を開発し、トヨタ自動車やファナックなど大手企業と共同研究を実施。

SoftBank Robotics(ソフトバンクロボティクス)(外部)
ソフトバンクグループのロボティクス事業会社。感情認識ヒューマノイドロボット「Pepper」などを開発し、世界的なロボティクスソリューションを提供。

【参考記事】

Japan to launch USD 19Bln National AI Project – Daily Excelsior(外部)
総額3兆円規模のプロジェクト全体像を報道。開発される基盤AIモデルは1兆パラメータレベルを目指すことを明記している。

Japan Unveils ¥1 Trillion Push for Home-Grown AI – See News(外部)
政府支援1兆円の詳細を報道。初年度の2026年度に約3000億円を計上予定。国家安全保障とデータ主権確保の観点も解説。

Japan to support domestic AI development with 1 tril. yen funding – Kyodo News(外部)
共同通信による原報。早期に閣議決定する基本計画において、国産AI開発とデータセンター維持の必要性が強調されることを報じている。

Japanese Public, Private Sectors to Partner on ¥3 Tril. Project – The Japan News(外部)
読売新聞の英語版報道。官民合わせて3兆円規模のプロジェクト構造と、SoftBankを中心とする約10社の参画企業構成を詳細に伝える。

Japan Eyes 1-T.-Yen Aid for Domestic AI Development – Nippon.com(外部)
日本国際交流センターによる報道。5年間の支援スキームの詳細と、約100人のエンジニアが参加する人材面での取り組みを報じる。 

【編集部後記】

高市総理が「1兆円超の投資」を宣言したとき、正直なところ「また大きな数字を掲げただけでは」という懐疑的な声もあったかもしれません。

しかし、その言葉は具体的なプロジェクトとして動き出しました。ソフトバンクを中核とする約10社の新会社設立、総額3兆円規模の官民プロジェクト、2026年度からの実行——構想は既に、実行フェーズに入っています。

この「スピード感」こそが、今回の日本のAI戦略で最も注目すべき点かもしれません。従来の日本なら、計画発表から実行まで何年もかかっていたでしょう。しかし今回は違う。危機感が、政府と民間を突き動かしているように見えます。

皆さんは、この2日間の動きをどう感じられたでしょうか。日本が本気で「AI後進国」からの脱却を目指し始めた——そんな歴史の転換点に、私たちは立ち会っているのかもしれません。一緒にこの変化を見守り、考えていきたいと思います。

投稿者アバター
TaTsu
『デジタルの窓口』代表。名前の通り、テクノロジーに関するあらゆる相談の”最初の窓口”になることが私の役割です。未来技術がもたらす「期待」と、情報セキュリティという「不安」の両方に寄り添い、誰もが安心して新しい一歩を踏み出せるような道しるべを発信します。 ブロックチェーンやスペーステクノロジーといったワクワクする未来の話から、サイバー攻撃から身を守る実践的な知識まで、幅広くカバー。ハイブリッド異業種交流会『クロストーク』のファウンダーとしての顔も持つ。未来を語り合う場を創っていきたいです。

読み込み中…

innovaTopia の記事は、紹介・引用・情報収集の一環として自由に活用していただくことを想定しています。

継続的にキャッチアップしたい場合は、以下のいずれかの方法でフォロー・購読をお願いします。