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Google、エージェンティック・コマース向けオープン規格「UCP」発表─AIが購買を代行する時代へ

[更新]2026年1月14日

Google、エージェンティック・コマース向けオープン規格「UCP」発表─AIが購買を代行する時代へ - innovaTopia - (イノベトピア)

「何を買うか」から「何を買わせるか」へ。Googleが発表したUniversal Commerce Protocolは、検索エンジンの概念そのものを覆し、AIエージェントが購買を代行する新時代の幕開けを告げています。


Googleはエージェンティック・コマース向けの新しいオープンスタンダードUniversal Commerce Protocol(UCP)を1月11日に発表した。UCPはShopify、Etsy、Wayfair、Target、Walmartと共同開発され、Adyen、American Express、Best Buy、Flipkart、Macy’s Inc.、Mastercard、Stripe、The Home Depot、Visa、Zalandoなど20以上の企業から支持を得ている。

UCPはSearchのAI ModeとGeminiアプリの対象製品リスティングで新しいチェックアウト機能を提供し、米国の対象小売業者から直接購入が可能になる。決済はGoogle PayとPayPalに対応する。また、ブランドとチャットできるBusiness Agentを12日から開始し、Lowe’s、Michael’s、Poshmark、Reebokなどが参加する。

さらにMerchant Centerに会話型コマース向けの新しいデータ属性を追加し、AI Modeで限定オファーを提示できるDirect Offersパイロットを導入する。Petco、e.l.f. Cosmetics、Samsonite、Rugs USA、Shopifyマーチャントなどが協力している。

From: 文献リンクNew tech and tools for retailers to succeed in an agentic shopping era

【編集部解説】

Googleが発表したこの戦略は、ECの世界を根本から変える可能性を秘めています。エージェンティック・コマースとは、AIエージェントがユーザーの意図を理解し、商品検索から比較、購入、決済までを自律的に実行する仕組みです。これまで消費者が何度もクリックして進めていた購買プロセスを、会話ベースで完結させる未来が現実のものとなります。

注目すべきは、Googleが単独で閉じたエコシステムを作るのではなく、Universal Commerce Protocolというオープンスタンダードを提唱している点です。これはAgent2Agent(A2A)やAgent Payments Protocol(AP2)といった既存プロトコルとも互換性を持ち、異なるプラットフォーム間でAIエージェントが連携できる共通言語を確立します。小売事業者にとっては、個別のエージェントごとに独自の統合を開発する必要がなくなり、開発コストと時間を大幅に削減できるメリットがあります。

Business Agentは、ブランド独自の「声」で顧客対応できる点が革新的です。従来のチャットボットが定型的な応答に留まっていたのに対し、このエージェントは小売事業者が自社データでトレーニングでき、ブランドの個性を保ちながら購買体験を提供します。Merchant Centerから直接カスタマイズできる設計により、中小規模の事業者でも導入障壁が低い点も見逃せません。

Direct Offersは広告の概念を変えようとしています。Google自身の担当者が「標準的な広告というより、営業担当者が代理で商談する仕組み」と表現するように、AIが購買意欲の高いタイミングを判断し、そこで初めて特別割引を提示する仕組みです。従来の表示回数やクリック数ベースの広告から、成約可能性を重視したモデルへのシフトを示唆しています。

一方で、AIが購買判断に深く関与することで生じる課題も存在します。アルゴリズムが特定の小売事業者やブランドを優遇する可能性、消費者の選択の自由度が実質的に狭まるリスク、さらにはデータプライバシーへの懸念などです。Googleは小売事業者が販売者記録を保持し、顧客データを直接管理できる中立的な設計を強調していますが、実際の運用でどこまで透明性が保たれるかは今後の監視が必要でしょう。

この動きは、OpenAIがChatGPTでショッピング機能を強化している流れとも呼応しています。AI企業各社が「広告」ではなく「コマース」を中核機能として位置づけ始めており、検索エンジンの収益モデル自体が変容する転換点に差し掛かっています。今後数年で、消費者の購買行動データを誰が管理し、どのように活用するかをめぐる競争が激化することは間違いありません。

【用語解説】

エージェンティック・コマース
AIエージェントがユーザーに代わって商品検索、比較、購入、決済までを自律的に実行する次世代のEC形態である。従来の人間主導の購買プロセスから、AIが意図を理解して能動的に行動するモデルへの転換を意味する。

Universal Commerce Protocol(UCP)
Googleが発表したエージェンティック・コマース向けのオープンスタンダードである。異なるAIエージェント、小売システム、決済プロバイダー間で共通言語として機能し、個別の統合開発を不要にする。既存のA2A、AP2、MCPといったプロトコルとの互換性を持つ。

Agent2Agent(A2A)
Googleが2025年4月に発表した、異なるAIエージェント同士が相互運用可能になるためのオープンプロトコルである。AIエージェントがタスクを委譲したり、コンテキストを交換したりすることを可能にし、複雑なユーザーリクエストに協力して対応できる仕組みを提供する。

Agent Payments Protocol(AP2)
AIエージェントが主導する決済処理をシームレスかつ安全に実行するためのプロトコルである。エージェンティック・コマースにおいて、人間の介入なしに購買トランザクションを完了させる基盤技術となる。

Model Context Protocol(MCP)
Anthropicが2024年11月に発表し、2025年12月にLinux Foundationに移管したオープンスタンダードである。大規模言語モデルが外部ツールやデータソースと統合する際の標準インターフェースを提供し、OpenAIやGoogle DeepMindなど主要AI企業が採用している。

AI Mode
Google検索における新しい検索体験モードである。従来のリンクリストではなく、AIが質問を理解して統合的な回答を生成し、商品購入などのアクションも直接実行できる対話型インターフェースとなっている。

【参考リンク】

Google Merchant Center(外部)
小売事業者がGoogleに商品情報を登録・管理するための公式プラットフォーム。Business Agentのカスタマイズもここから実行できる。

Agent2Agent Protocol 公式サイト(外部)
GoogleによるA2Aプロトコルの公式ドキュメントサイト。異なるAIエージェント間の安全な通信と協働を可能にするオープンスタンダードの仕様を公開。

Shopify(外部)
カナダ発のEC構築プラットフォームで、世界中の数百万の事業者が利用。UCPの共同開発パートナーとして参画している。

Wayfair(外部)
米国最大級の家具・インテリアのオンライン小売事業者。UCPの共同開発に参画し、家具カテゴリーでのAI主導購買体験の実現を目指す。

【参考記事】

Google announces a new protocol to facilitate commerce using AI agents(外部)
TechCrunchによる報道。Shopify、Target、Walmartなどとの協業体制や、オープンスタンダードとしての位置づけを解説。

Google Brings Deal-Based Ads to AI Search With Direct Offers(外部)
Ad Tech Radarによる詳細分析。Direct OffersをGoogle担当者が「営業担当者が代理で商談する仕組み」と説明している点を紹介。

Under the Hood: Universal Commerce Protocol (UCP)(外部)
Google Developers Blogによる技術解説。UCPの内部アーキテクチャ、既存プロトコルとの互換性、実装方法を開発者向けに詳述。

Google、エージェンティックコマース時代に向けた共通規格「UCP」発表 AIが決済まで代行(外部)
ITmedia Newsによる日本語報道。UCPが小売事業者に販売者記録の保持と顧客データの直接管理を認める中立的設計を強調。

【編集部後記】

AIが商品を選び、購入まで代行する世界がすぐそこまで来ています。innovaTopiaでは昨年から継続的にこの動きに注目してきました。

2025年5月にはVisaの「Intelligent Commerce」PerplexityとPayPalの提携を報じ、そしてGoogleの仮想試着機能も取り上げました。さらについ先日は楽天市場のAI搭載もお伝えしたばかりです。

今回のGoogleによるUCP発表は、これまでの「個別企業の取り組み」から「業界横断的な標準化」へと、明らかにフェーズが変わったことを示しています。便利さの一方で、私たちの選択の自由や、ウィンドウショッピングのような偶発的な出会いは失われてしまうのでしょうか。それとも、面倒な意思決定から解放され、本当に大切なことに時間を使えるようになるのでしょうか。

みなさんは、AIに購買を任せることに抵抗を感じますか。それとも積極的に使ってみたいと思いますか。過去記事も併せて読んでいただき、SNSで率直なご意見をお聞かせいただけると嬉しいです。

投稿者アバター
TaTsu
『デジタルの窓口』代表。名前の通り、テクノロジーに関するあらゆる相談の”最初の窓口”になることが私の役割です。未来技術がもたらす「期待」と、情報セキュリティという「不安」の両方に寄り添い、誰もが安心して新しい一歩を踏み出せるような道しるべを発信します。 ブロックチェーンやスペーステクノロジーといったワクワクする未来の話から、サイバー攻撃から身を守る実践的な知識まで、幅広くカバー。ハイブリッド異業種交流会『クロストーク』のファウンダーとしての顔も持つ。未来を語り合う場を創っていきたいです。

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