Last Updated on 2025-05-06 12:06 by admin
Visaは2025年4月30日、サンフランシスコで開催された同社のGlobal Product Dropイベントにおいて、AIエージェントがユーザーに代わって商品を購入できる新プラットフォーム「Visa Intelligent Commerce」を発表した。このシステムは、AIアシスタントが商品を推奨するだけでなく、取引を完了することも可能にする。
主な特徴と機能
- AIエージェントが商品の検索から購入までを一貫して行うことができる
- 従来のカード情報をトークン化されたデジタル認証情報に置き換え、セキュリティを強化
- ユーザーは支出制限や加盟店カテゴリーなどの特定のパラメータを設定可能
- 取引はリアルタイムでVisaと共有され、同社が取引管理を実施
利用例
- 500ドル以下のカンクン行きの航空券予約
- 週間の食料品注文
- 家族へのギフト選び
パートナーシップ
Visaはこの取り組みのために、Anthropic、IBM、Microsoft、Mistral AI、OpenAI、Perplexity、Samsung、Stripeなど20社以上の企業と提携している。
セキュリティ対策
AIエージェントによる取引はトークン化され、カード詳細が置き換えられる
データリクエストはデータトークンを通じて管理され、消費者による同意管理と制御を可能にする
Visaの詐欺検出システムは昨年だけで約400億ドルの詐欺を阻止した実績がある
展開予定
開発者は既にAPIの実装を開始でき、パイロットプログラムは今後数ヶ月で開始される予定である。一部の情報源によれば、2025年後半にヨーロッパでのローンチが計画されているとのことだ。Visaはこの技術を、実店舗からオンライン、オンラインからモバイルへの移行に続く、コマースの次なる大きな進化と位置づけている。
from:Visa launches ‘Intelligent Commerce’ platform, letting AI agents swipe your card—safely, it says
【編集部解説】
Visaが発表した「Intelligent Commerce」プラットフォームは、AIエージェントとeコマースの融合における重要な一歩と言えるでしょう。この技術は単なる決済の自動化ではなく、消費者の購買行動そのものを変革する可能性を秘めています。
複数の情報源を確認したところ、Visaはこの取り組みを実店舗からオンライン、そしてモバイルへの移行に続く「コマースの次なる大きな進化」と位置づけていることが分かります。これは決して誇張ではなく、AIが消費者の代理として完全な購買プロセスを担うという点で、確かに革命的な変化と言えるでしょう。
特筆すべきは、このシステムが単にAIに決済機能を付与するだけでなく、消費者が設定した条件内でAIが最適な選択を行うという点です。例えば「500ドル以下のカンクン行き航空券を予約して」という指示に対し、AIが複数のサイトを横断して最適な選択肢を見つけ出し、決済まで完了させることができます。
セキュリティ面では、トークン化技術を活用して従来のカード情報を保護する仕組みが採用されています。Visaの詐欺検出システムは昨年だけで約400億ドルの不正を防いだ実績があり、この技術基盤がAIコマースにも応用されることで、新たな脆弱性の発生を最小限に抑える狙いがあると考えられます。
一方で、AIに決済権限を委ねることへの消費者の心理的ハードルは依然として高いでしょう。Visaはこの点を考慮し、小規模な取引から始められる仕組みや、リアルタイム承認の要求など、段階的な導入を可能にする機能を用意しています。
このプラットフォームが普及すれば、オンラインショッピングにおけるカート放棄率の低減や、消費者の時間節約など、多くのメリットが期待できます。特に複雑な比較検討が必要な旅行予約や、定期的に行う食料品の購入などで、その効果は顕著になるでしょう。
しかし、AIによる自動購入が一般化すると、消費者の衝動買いを抑制する「考える時間」が減少する可能性も懸念されます。また、AIが提案する商品に偏りが生じれば、特定のブランドや商品カテゴリーが不当に優遇・不利益を被るリスクも考えられます。
規制の観点では、AIによる自動決済が既存の消費者保護法や金融規制とどう整合性を取るかという課題も浮上するでしょう。特に日本では、金融庁や消費者庁がこうした新技術にどのような規制枠組みを適用するか、注目される点です。
長期的には、この技術が普及することで、私たちの「買い物」という行為の本質が変わる可能性があります。商品を選ぶ喜びや発見の楽しさといった買い物の感情的側面と、AIによる効率化のバランスをどう取るかが、今後の課題となるでしょう。
Visaは2025年後半にヨーロッパでのローンチを計画していますが、日本市場への導入時期は明らかにされていません。日本特有の決済習慣や消費者心理を考慮した展開が期待されます。
私たちinnovaTopiaは、この技術の進展を引き続き注視し、最新情報をお届けしていきます。
【用語解説】
AIエージェント:
複数のAI技術を組み合わせ、ユーザーの代わりに特定のタスクを自律的に実行するシステム。単なる質問応答だけでなく、実際の行動(今回の場合は購入)まで行える。
トークン化(Tokenization):
クレジットカード番号などの機密情報を、無意味な別の文字列(トークン)に置き換える技術。情報漏洩が起きても実際のカード情報は保護される。
エージェンティック・コマース:
AIエージェントが消費者に代わって商品検索から購入までを行う新しい商取引形態。従来のeコマースの次の進化形と位置づけられている。
【参考リンク】
Visa(公式サイト)(外部)
世界最大の決済ネットワークを運営する企業。Intelligent Commerceを開発。
Anthropic(外部)
OpenAI出身者が設立したAI企業。対話型AI「Claude」を開発し、Visaのパートナー企業。
IBM(外部)
世界的なIT企業。AI技術「watsonx」を持ち、Visaのパートナー企業として参画。
【参考動画】
【編集部後記】
AIがあなたの買い物を代行する時代がすぐそこに来ています。もし、AIアシスタントに「5万円以内で東京-大阪の往復航空券を予約して」と指示するだけで全てが完了する世界があったら、どんな場面で活用したいですか?日常の買い物から特別な贈り物の選定まで、AIに任せても良いと思える範囲はどこまでですか?VisaのIntelligent Commerceが実現する未来について、皆さんのご意見をSNSでぜひ教えてください。