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ソフトバンクGら日米21社が『ポーツマスコンソーシアム』発足、米オハイオ州9.2GWガス発電・10GW AIデータセンター案件に参画へ

2026年3月21日、日米のサプライヤーおよび金融機関など21社が「ポーツマスコンソーシアム」を発足した。本コンソーシアムは、米国エネルギー省のポーツマスサイト(オハイオ州パイクトン)での大規模発電所およびAIインフラ建設プロジェクトへの参画を目的とする。

対象プロジェクトは、2026年2月17日に米国政府が発表した世界最大のガス火力プロジェクト「9.2 GWポーツマスパワードランドプロジェクト」である。参加企業は日本12社、米国9社の計21社で、事務局はソフトバンクグループ株式会社が担う。

From: 文献リンク日米政府の戦略的投資イニシアティブにおける「ポーツマスコンソーシアム」発足

【編集部解説】

「なぜ、元ウラン濃縮施設の跡地にAIの心臓部が生まれるのか。」この問いを手がかりに、今回のニュースを読み解いていきます。

オハイオ州パイクトン郊外に位置するポーツマスサイトは、冷戦時代にウラン濃縮工場として稼働していた米国エネルギー省の国有地です。1952年の建設開始から1956年のフル稼働を経て長年休眠状態にあったこの場所が、AIインフラの一大拠点として生まれ変わろうとしています。

タイミングも見逃せません。着工セレモニーが行われた3月20日には孫正義氏が現地に出席し、同氏はトランプ米大統領と高市早苗首相による日米首脳会談の晩餐会にも同席しています。単なる民間投資にとどまらず、日米両政府が国家戦略として後押しする案件であることが、この事実からも見えてきます。

ソフトバンクグループ傘下のSBエナジーが主導するのは、9.2GWの天然ガス発電を中核とした合計10GWの発電施設の建設です。10GWという規模感を理解するには比較が助けになります。日本の電力ピーク需要がおよそ150〜170GW程度であることを考えると、単一プロジェクトで10GWというのは極めて異例の規模です。生成AIの急拡大が、これほどまでに集中した電力需要を生み出しています。

このプロジェクトが「スターゲート」と連動している点も、見逃せないポイントです。スターゲートとは、ソフトバンクグループ・OpenAI・Oracleが参画する総額5,000億ドル規模のAIインフラ整備計画であり、今回のポーツマス開発はその物理的な基盤を構築する動きと位置付けられます。

日本企業12社が名を連ねた点にも注目されます。コンソーシアムには、電線、電子部品、電力・空調設備などに強みを持つ日本企業が参加しています。もっとも、各社が実際にどの領域を担うかは現時点で公表されておらず、今後の協議や案件の具体化に伴って明らかになるとみられます。

ポジティブな側面としては、まず雇用創出が挙げられます。建設段階で1万人超、稼働後も2,000人規模の技術・保守雇用が生まれる見込みで、これは米政府の発表に基づく数字です。日米双方の産業界に波及効果をもたらす、経済安全保障的な意義も持っています。

一方、潜在的なリスクも存在します。9.2GW分の主力電源が天然ガスである点は、脱炭素の流れと逆行するという批判を免れません。AIの電力消費拡大と気候変動対策の両立は、今後の規制議論において避けられない論点になるでしょう。また旧ウラン施設の跡地利用ということで、環境汚染リスクへの対応が適切に行われているかどうかも、引き続き注視が必要です。

長期的な視点で見ると、今回の取り組みは「AIのコンピューティング資源をどの国・企業が握るか」という覇権争いの一幕です。米国政府がエネルギー省の国有地を民間AIインフラに転用するという決断は、インフラの公共的な役割を再定義しているとも言え、今後の各国政策立案にも影響を与える先行事例になり得ます。

【用語解説】

ポーツマスサイト
米国エネルギー省が管理するオハイオ州パイクトンの国有地。1952年に建設開始、1956年にフル稼働したウラン濃縮工場の跡地で、現在はDOEのPortsmouth/Paducah Project Office(PPPO)が除染・廃止措置を管轄している。

GW(ギガワット)
電力の単位。1GW=10億ワット。一般的な家庭用太陽光パネルが数kW(キロワット)規模であることと比較すると、9.2GWはその数百万倍にあたる規模である。

スターゲート(Stargate)
ソフトバンクグループ・OpenAI・Oracleが中心となって推進するAIインフラ整備計画。総額最大5,000億ドルの投資を掲げ、米国内に複数のAIデータセンター拠点を建設することを目的とする。

生成AI
テキスト・画像・動画などのコンテンツを自ら生成できるAI技術の総称。ChatGPTやGeminiなどが代表例。処理に膨大な演算能力と電力を必要とするため、データセンターの大型化・電力需要の急増を招いている。

脱炭素
CO₂をはじめとする温室効果ガスの排出をゼロに近づけることを目指す取り組み。今回のプロジェクトは天然ガス発電が主力であるため、脱炭素の観点からは課題が残る。

経済安全保障
特定の物資・技術・インフラを、特定の国に依存しすぎることなく確保する戦略的な取り組み。日米両国が産業サプライチェーンを共同構築する今回のプロジェクトは、その文脈で語られることが多い。

サプライチェーン
製品が原材料の調達から製造・物流・販売に至るまでの一連の流れ。今回は日本の電線・電子部品・発電設備メーカーが、米国AIインフラのサプライチェーンに組み込まれる点が注目される。

【参考リンク】

ソフトバンクグループ株式会社(外部)
AI・通信・エネルギー投資を軸に展開するグローバルな持株会社。ポーツマスコンソーシアムの事務局として本プロジェクトを主導する。

GE Vernova, Inc.(外部)
GEのエネルギー部門が独立した企業。ガスタービン・電力系統安定化技術を持ち、コンソーシアムの米国側参加企業として参画する。

Bechtel Global Corporation(外部)
米国最大級の建設・エンジニアリング企業。発電所・精製施設などの豊富な建設実績を持ち、プロジェクトの施工面の中核を担うとみられる。

Kinder Morgan, Inc.(外部)
米国最大級の天然ガスパイプライン・ターミナル会社。9.2GW規模の発電所への燃料供給インフラを担う重要プレイヤーとして参画。

米国エネルギー省(DOE)ポーツマスサイト(外部)
旧ウラン濃縮施設の除染・廃止措置を管轄するDOEのプロジェクトオフィス公式ページ。施設の歴史と環境対応状況を確認できる。

【参考動画】

Portsmouth Site 101(米国エネルギー省公式)
米国エネルギー省(DOE)公式チャンネルによるポーツマスサイトの歴史と概要を解説した動画。冷戦時代のウラン濃縮工場としての位置付けと施設規模を視覚的に確認できる。

PPPO Portsmouth Site Virtual Tour(米国エネルギー省公式)
DOEのPortsmouth/Paducah Project Office(PPPO)制作によるバーチャルツアー動画。実際の敷地・建屋の規模感を視覚的に確認できる。

【参考記事】

ソフトバンクGなど日本企業連合、米オハイオ州でAIインフラ5兆円投資(外部)
建設雇用1万人超・10GWの発電規模・スターゲートとの連動など本記事の核心的事実を最も多く確認した国内専門メディアの詳報。

Trump officials announce 10-gigawatt data center, gas plants for former Ohio uranium site(外部)
オハイオ州の旧ウラン濃縮施設跡地に10GWのAIデータセンターとガス火力建設を発表したトランプ政権の動向を詳しく報じるAP通信の記事。

SB Energy Tapped for Proposed 9.2‑GW Ohio Gas Power Plant(外部)
9.2GWのガス発電プロジェクト詳細と日米貿易枠組み5,500億ドルとの関係を解説した専門誌Power Magazineの記事。

U.S. Bets on Natural Gas to Power 10 GW AI Buildout in Ohio(外部)
AIデータセンターの電力確保に天然ガスを選択した背景と、脱炭素目標との矛盾・課題を論じたOilPrice.comの分析記事。

Energy Department Announces Partnership to Power America’s AI(外部)
AIの電力需要確保に向けた米国エネルギー省の政策方針を示す公式発表。今回のプロジェクトの政策的・制度的根拠を確認できる一次資料。

ソフトバンクG孫正義氏、AI投資「オハイオで80兆円」 日米21社(外部)
孫正義氏が「オハイオで80兆円規模のAI投資」と明言した発言の出典。日米21社のコンソーシアム参画を詳報した日本経済新聞の記事。

【関連記事】

【OpenAI×ソフトバンクG】77兆円規模のAIインフラ構築「Stargate」始動(2025年1月)
今回のポーツマス開発が「物理的基盤」として位置付けられるStargateプロジェクト。その誕生の経緯と、OpenAI・ソフトバンクG・Oracleが描いた当初の構想を解説した記事。ポーツマスコンソーシアムを読む前提知識として最適。

5,000億ドルStargate AIプロジェクトが深刻な遅延に直面(2025年9月)
発足から半年以上が経過しても資金調達・拠点整備が滞り、孫正義氏が「遅延を認めた」局面を報じた記事。今回のポーツマスコンソーシアム発足は、この遅延を打開する具体的な一手として読むとさらに深く理解できる。

【編集部後記】

冷戦の遺産だった施設が、AIの電力基地へ。首脳会談の晩餐会の席に孫正義氏が同席していたという事実が、このプロジェクトの「重さ」を物語っています。

「天然ガスでいいのか」「日本企業はここでどう稼ぐのか」—気になることは山ほどありますよね。みなさんはこの動きをどう受け止めていますか?ぜひ、身近な人と話してみてください。

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TaTsu
『デジタルの窓口』代表。名前の通り、テクノロジーに関するあらゆる相談の”最初の窓口”になることが私の役割です。未来技術がもたらす「期待」と、情報セキュリティという「不安」の両方に寄り添い、誰もが安心して新しい一歩を踏み出せるような道しるべを発信します。 ブロックチェーンやスペーステクノロジーといったワクワクする未来の話から、サイバー攻撃から身を守る実践的な知識まで、幅広くカバー。ハイブリッド異業種交流会『クロストーク』のファウンダーとしての顔も持つ。未来を語り合う場を創っていきたいです。

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