あなたがウェビナーのどこで関心を高め、どこで離脱したか。その一つひとつが、いま100点満点のスコアへと変わり始めています。Jストリームが発表した新ソリューションは、製薬企業がWeb講演会の分析を「自社のデータ環境で完結させる」ための特許技術。専門ベンダー頼みだったデータ活用を内製化し、その先にAIエージェントによる支援まで見据えた、静かながら大きな一歩です。
株式会社Jストリームは、2026年6月16日、製薬企業などが医療従事者向けに実施するWeb講演会の分析の内製化を支援する新ソリューション「WebinarAnalytics for BI」の提供を開始した。本ソリューションは、同社が特許を取得した独自の解析技術とノウハウを、顧客企業が利用するBI環境(Tableau、Power BI等)上で活用可能にするものである。
視聴者の受動的な視聴ログと能動的なリアクションを掛け合わせ、独自のアルゴリズムで総合スコア化する分析基盤を顧客のBI環境上で再現する。SaaS版WebinarAnalyticsと組み合わせた高度な分析や、社内データとの統合も可能である。Jストリームは1997年5月設立、代表取締役社長は石松俊雄。同社は2026年上期中に、SaaS版WebinarAnalyticsでAIエージェントを活用した新サービスのリリースを予定している。
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Jストリーム、Web講演会データ分析をBI環境で実現する『WebinarAnalytics for BI』を提供開始~特許取得の高度な解析技術で“失敗しないデータ活用の内製化”を実現~

【編集部解説】
まず押さえておきたいのは、今回のニュースが単なる「新製品の発売」ではなく、Jストリームが約2か月前に取得した特許を“横展開”するという、戦略的な一手だという点です。同社は2026年4月8日に「講演会解析システム及び講演会解析装置」(特許第7835640号、登録日2026年3月16日)を取得しており、今回の「WebinarAnalytics for BI」は、その中核技術を顧客企業側の環境へ届けるための新パッケージにあたります。
そもそもWeb講演会とは、製薬企業が医師などの医療従事者に向けて、医薬品情報を届けるオンライン講演です。コロナ禍を機に急速に普及し、製薬マーケティングにおける重要なチャネルの一つとなりました。背景には、販売情報提供活動への規律強化やコロナ禍での対面制限などを背景に、対面営業に依存しにくくなった製薬各社がデジタルへ軸足を移してきたという構造変化があると考えられます。
ここで生じていたのが「測定の壁」です。従来の分析は視聴人数や視聴時間の集計どまりで、「どのスライドで医師の関心が高まったか」「どこで離脱したか」までは捉えにくいものでした。Jストリームの特許技術は、受け身の視聴ログと、いいね・質問・アンケートといった能動的リアクションを掛け合わせ、講演の質を100点満点でスコア化する点に新規性があります。視聴を「数える」段階から、関心を「測る」段階へ引き上げた、と言い換えられます。
そのうえで今回の肝は、提供の“置き場所”を変えたことです。従来のSaaS版は、Jストリームのクラウド上でデータを分析する形でした。対して「for BI」は、顧客企業が普段使うTableauやPower BIといったBIツールの中に、同社のKPIモデルとダッシュボードを再現します。分析の主導権を顧客側へ寄せる設計であり、ここに「内製化(インソーシング)」というキーワードが効いてきます。
なぜ内製化が重要なのか。医療や営業に関わるデータは機密性が高く、社外のクラウドに出しづらいという事情があります。自社インフラ内で完結すれば、講演会データを、CRMに蓄積された顧客情報やMRの活動履歴といった社内データと統合・掛け合わせられる。つまり「あの講演で関心を示した医師に、次にどう向き合うか」を一貫して設計しやすくなるわけです。これは製薬業界が長年掲げてきた「オムニチャネル戦略」の、データ面での実装につながる動きと言えます。
一方で、潜在的な論点も見えてきます。医師の視聴行動や反応を個人単位で精緻にスコア化し、営業活動に接続していく場合、医師側から見れば「自分の関心が点数化されうる」状態に近づく面もあります。製薬業界の販促活動は「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」など各種ルールの下にあり、データ活用が高度化するほど、同意取得や透明性の確保といった運用面の慎重さが問われるでしょう。技術の精度向上と、医師との信頼関係の両立が今後の鍵になりそうです。
最後に、将来への布石として見逃せないのが「今後の展開」の一文です。同社は2026年上期中に、SaaS版WebinarAnalyticsへAIエージェントを活用した新たな分析サービスを投入すると予告しています。スコア化(測る)から、AIによる分析支援や示唆提供へ発展する可能性をうかがわせるもので、Jストリーム自身の事業も、CDN・動画配信という土台の上に「データ解析×AI」という付加価値層を積み上げる方向へ進んでいると読み取れます。動画配信企業がデータ解析の領域へ事業の幅を広げていく過渡期の一枚として、注目に値するニュースです。
【用語解説】
Web講演会(医療系Web講演会)
製薬企業が医師などの医療従事者に向けて、医薬品の情報をオンラインで届ける講演会。スタジオや会場での講演を撮影・配信し、視聴者は自宅や病院からPC・スマートフォンで視聴する。コロナ禍を機に普及し、製薬マーケティングで広く活用されるチャネルとなった。
BI(ビジネスインテリジェンス)/BI環境
企業内に蓄積されたデータを集計・可視化し、意思決定に役立てる仕組みや、そのためのツール群を指す。記事に登場するTableauやPower BIが代表的で、グラフやダッシュボードでデータを直感的に把握できる。
ダッシュボード
複数の指標やグラフを一画面にまとめ、状況をひと目で把握できるようにした管理画面。KPIの推移や比較を視覚的に確認するために使われる。
KPI(重要業績評価指標)
目標の達成度合いを測るために設定する具体的な数値指標。Web講演会では視聴時間や反応率などが該当し、施策の良し悪しを定量的に判断する基準となる。
内製化(インソーシング)
外部委託していた業務やシステム運用を、自社内の人材・環境で行えるようにすること。記事では、データ分析を社外クラウドに頼らず自社のBI環境で完結させることを指す。
スコアリング(総合スコア化)
複数のデータを独自の計算ロジックで統合し、一つの点数として評価する手法。本件では視聴ログとリアクションを掛け合わせ、講演の質を100点満点で数値化する。
視聴ログ/リアクション
視聴ログは滞在時間や離脱ポイントなど「受動的」な行動記録を指し、リアクションはいいね・質問・アンケート回答など視聴者が能動的に起こす反応を指す。両者の掛け合わせが特許技術の核となっている。
MR(医薬情報担当者)
製薬企業に所属し、医師など医療従事者に自社医薬品の情報を提供する担当者。記事中の「MR履歴」は、MRの営業活動の記録を意味する。
CRM(顧客管理システム)
顧客情報や接点履歴を一元管理し、関係構築に活用するシステム。Web講演会データと統合することで、より精緻な顧客分析が可能になる。
エンゲージメント
ここでは医師がWeb講演会の内容にどれだけ関心を持ち、深く関与したかという「関与度合い」を指す。従来は把握が難しく、特許技術によって定量的な可視化が可能になった。
AIエージェント
人の指示を待つだけでなく、目的に応じて自律的に判断・実行するAIの仕組み。Jストリームは2026年上期中に、これを活用した新たなWeb講演会分析サービスの投入を予告している。
東証グロース
東京証券取引所の市場区分の一つで、高い成長可能性を持つ企業向けの市場。Jストリームは証券コード4308で上場している。
【参考リンク】
株式会社Jストリーム 公式サイト(外部)
CDNを基盤とした動画配信や、医療・金融など業界別ソリューションを提供する事業者の公式サイト。
Jストリーム 医薬・医療業界向けソリューション(外部)
製薬・医療業界に特化したソリューション一覧。Web講演会支援や関連サービスの全体像を確認できる。
Tableau 公式サイト(日本語)(外部)
本ソリューションが対応するBIツール。データの可視化・分析に強みを持つ。Salesforce傘下で提供されている。
Microsoft Power BI 公式サイト(日本語)(外部)
本ソリューションが対応するBIツール。Microsoftが提供し、Officeとの親和性で企業導入が進む。
【参考記事】
Jストリーム、Web講演会の“医師の反応”を数値化する独自解析技術で特許取得(外部)
本件の根幹となる特許(第7835640号、登録日2026年3月16日)の詳細を伝える一次情報。講演の質を100点満点でスコア化する。
Jストリーム—新サービス「WebinarAnalytics」提供開始(株探ニュース)(外部)
2021年10月の当初リリースを伝える記事。年間2,300件のWeb講演会支援実績を背景に設計されたとする。
製薬企業のWeb講演会を分析する新サービス「WebinarAnalytics」提供開始(外部)
医療系Web講演会の定義と、年間約2,300件の支援規模を伝える一次情報。
製薬業界で進むオムニチャネルマーケティングの背景と重要性(DM白書ラボ)(外部)
MR中心からデジタル統合へ移行する背景を解説。視聴データ連携や行動ログ活用の進展を指摘する。
生成AIで越える製薬オムニチャネルの壁(Medinew)(外部)
MR規制強化、コロナ禍でのWeb講演会台頭、生成AIによるパーソナライゼーションまでの変遷を整理する。
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【編集部後記】
私たちが何気なく動画やセミナーを視聴しているとき、「どこで興味を持ち、どこで離れたか」が静かに数値化されている――そんな時代が、医療の現場から立ち上がりつつあります。今回の技術は製薬業界向けですが、関心を測りスコア化する発想は、私たちの日常にも遠からず広がってくるのかもしれません。
みなさんは、自分の視聴行動が点数になることに、可能性を感じますか。それとも少し戸惑いを覚えるでしょうか。その感覚こそ、これから問われていくテーマだと、私たちも一緒に考えていきたいです。












