英国のスタートアップChainergyが、バイオガス発電施設に直結したAIデータセンターの商用化を開始する。
企業概要
– 社名:Chainergy Ltd.
– 設立:2022年1月
– 本社:イギリス・オックスフォード
– CEO:James Behan(ジェームズ・ベハン)氏
プロジェクト詳細
– 2023年後半から2023年第3四半期まで、ヨーク郊外でパイロットプロジェクトを実施
– 2025年第2四半期に最初の商用施設を稼働予定
– 施設規模:400kWのインフラ設備
– 設置場所:納屋内に建設予定
技術的特徴
– 輸送コンテナ型のモジュール式データセンター
– バイオガス発電所の余剰電力を直接利用
– 標準的なリアドア冷却方式を採用
– 将来的に液冷システムを標準装備予定
期待される効果
– 電力コスト:従来比44%削減
– CO2排出量:従来比70%削減
– 稼働率:95%以上を実現
サービス内容
– GPUアズアサービスを提供予定
– 対象顧客:
1. 従量課金型クラウドサービスプロバイダー
2. 専用接続を必要とする企業
英国のバイオガス発電の現状
– 稼働中のバイオガスプラント:730施設
– 送電網接続施設:109施設
– 年間発電容量:2,800MW以上
– バイオメタン生産量:年間32TWh
from:Startup plugs AI datacenters into biogas-powered energy
【編集部解説】
AIブームの急速な拡大に伴い、データセンターの電力需要が爆発的に増加しています。Gartnerの調査によると、2027年までに新規サーバーだけで500テラワット時(TWh)の電力を消費する見込みです。これは実に4,600万世帯分の電力消費量に相当します。
このような状況下で、Chainergyの取り組みは非常に興味深い解決策を提示しています。バイオガス発電所の余剰電力を直接利用するという発想は、送電網への負荷を軽減しながら、持続可能なAIインフラを実現する可能性を秘めています。
特筆すべきは、この方式によって実現される44%のコスト削減と70%のCO2排出量削減です。これは、従来型のデータセンターと比較して驚異的な改善といえます。
しかし、この手法にも課題があります。バイオガス発電所の立地や余剰電力量に依存するため、大規模な展開には制限があるかもしれません。また、光ファイバー網へのアクセスも重要な要件となります。
興味深いのは、世界的な潮流としてAIデータセンターの電力供給方式が多様化していることです。例えば、Microsoftは廃止された原子力発電所を再稼働させ、GoogleはKairos社と500メガワットの原子力発電契約を結んでいます。
さらに、バイデン政権は2025年1月、国防総省とエネルギー省の所有地をAIデータセンター用地として開放する大統領令を発表しました。これは、クリーンエネルギーの導入を条件とする画期的な政策です。
データセンターの電力消費は、2022年時点で世界の電力需要の約1%を占めています。この数字は今後さらに増加すると予測されており、電力インフラへの影響が懸念されています。
実際、Bloomberg の調査では、データセンター周辺の住宅地で電力の品質低下が報告されています。これは家電製品の故障や停電のリスクを高める可能性があります。
このような状況下で、Chainergyのアプローチは、大規模な送電網整備を待たずにAIインフラを展開できる現実的な解決策として注目に値します。特に、日本のような電力インフラの制約が厳しい地域では、参考になるモデルといえるでしょう。