Google Vids のAIアバターが無償提供開始|Slides連携で動画化、月10本まで

「撮影なし、スタジオなし、出演者なし」。それでも、あなたのスライドが、まるで人が語りかけるような動画に変わるとしたら――。Googleが、その入り口を大きく開きました。これまで有料プランの目玉だったGoogle VidsのAIアバターが、無料の個人アカウントにも開放されたのです。まずは米国から、他地域へは今後数か月で順次拡大。日本でもGoogle Vidsと日本語で話すアバター自体はすでに使え、「会議資料が話す動画になる時代」は、もう私たちの目の前まで来ています。


Google Workspace は2026年6月19日、公式X(@GoogleWorkspace)で動画作成ツール「Google Vids」を紹介する投稿を公開した。投稿によれば、Google Vids はスライドを、AIアバターがプレゼンする動画へと変換する。

投稿はデスクトップで無償で試せるとし、遷移先として vids.new を案内している。当該投稿の表示数は3万件である。リンク先の vids.new は Google Vids の作成画面へ移動するURLで、Veoのクリップ生成、画面録画、プレゼンテーションの動画への変換などに対応する。Google Vids は Workspace アカウントまたは個人の Google アカウントで利用できる。

From: 文献リンクGoogle Workspace(@GoogleWorkspace)のポスト「Google Vids turns your slides into engaging videos presented by an AI avatar」

【編集部解説】

今回のポストは一見すると「動画作成ツールの宣伝」に見えますが、その背後には2026年6月17日にGoogleが発表した、より大きな転換があります。米国のGoogleアカウント所有者であれば、誰でもGoogle VidsのAIアバターを無償で試せるようになり、提供は今後数か月をかけて他地域へ拡大していくというものです。ポストの「無償(at no cost)」は、有料のWorkspace契約者だけでなく、無料の個人ユーザーにまで門戸が開かれたことを指しています。

では、具体的に何ができるのでしょうか。中核は「Slidesの動画化」です。Google SlidesとVidsを連携させると、数クリックでプレゼン資料を動画に変換でき、Vidsが内容から自動でストーリーボードを作り、AIアバター用の台本まで生成します。つまり、撮影もスタジオも演者も要らず、スライドさえあれば「話す動画」が完成する、ということです。

無料ユーザーにとっての実際の上限も明確になっています。無料の個人ユーザーには月10本の動画生成枠が付与され、これはアバターとVeoによる動画生成のあいだで配分できるとされています。「無償」という言葉に踊らされず、月10本という枠を念頭に置くことが、現実的な使い方の出発点になります。

技術的な進化も見逃せません。2026年6月後半からは、アバターの「感情」を操作して、伝え方を意図に合わせて微調整できるようになります。さらに、台本さえ用意すれば24言語(アラビア語、ヒンディー語、オランダ語、ベトナム語などを含む)でアバターと音声を生成でき、ピッチをグローバルに展開できます。背景にはVeoやNano Banana 2といった生成モデル群があり、Vidsはそれらを束ねる「業務動画の制作レイヤー」へと位置づけを変えつつあります。

影響範囲は、マーケティングや営業の現場にとどまりません。Google Vidsはすでに月間700万人に使われているツールであり、そこへ無料開放が重なることで、これまで予算や人手の都合で動画制作を諦めていた個人事業主や教育現場にも、一気に裾野が広がる可能性があります。製品デモ、社内研修、採用説明といった「繰り返し使う動画」ほど、効果は大きいでしょう。

一方で、私たちが冷静に見ておくべき点もあります。「人間そっくりに話すアバター」が誰でも無料で作れるということは、なりすましや誤認を誘う動画の量産にもつながりかねません。Google Vidsのアバターは実在の人物を避ける安全・公平性フィルターを通して生成され、生成動画にはAI生成であることを検証できる電子透かし「SynthID」が埋め込まれます。それでも、発信者自身が「これはAIによる生成だ」と明示する誠実さは、これまで以上に問われます。また「無償」は恒久的な保証ではなく、提供条件や上限が今後変わりうる領域である点も、過信は禁物です。

長期的な視点では、この動きは「動画制作が文章を書くのと同じくらい日常的な行為になる」未来を示唆しています。かつてブログが「誰もが文章を発信できる時代」を開いたように、AIアバターは「誰もが顔と声を持った動画を発信できる時代」の入り口かもしれません。問われるのは技術の有無ではなく、その力で何を、どんな誠実さで伝えるか。ここに、私たちが今この記事を書く理由があります。

【用語解説】

AIアバター
台本(スクリプト)を入力するだけで、それを話す「デジタルの話者」を生成する機能。撮影やスタジオ、演者を必要とせず、一貫した顔と声で動画を作れる。Google Vids では実在人物を避ける安全・公平性フィルターが適用され、生成された動画には AI 生成であることを示す電子透かし「SynthID」が埋め込まれる。

Veo(ヴェオ)
Google の動画生成 AI モデル。テキストや画像から短い動画クリップを生成する。Google Vids のアバターや動画生成機能の基盤として組み込まれている。今回の発表時点での世代は Veo 3.1 である。

Nano Banana 2(ナノバナナ2)
Google の画像生成モデル。Google Vids では、独自のカスタムアバターを作成する際の生成エンジンとして用いられる。

ストーリーボード
動画の構成を場面ごとに整理した設計図。Google Vids は、スライドの内容から自動でこのストーリーボードと台本を生成する。

感情のステアリング(emotion steering)
アバターや音声の「伝え方」、つまり感情のこもり方を調整する機能。発信者の意図に合わせて語り口のニュアンスを微調整でき、2026年6月後半からの提供が予告されている。

【参考リンク】

Google Vids(製品ページ)(外部)
Google Vids の機能や用途を紹介する公式の製品ページ。アバターや動画生成、画面録画など全体像を概観できる。

Google Vids AIアバター(機能ページ)(外部)
AIアバター機能の公式ページ。活用例やSynthID透かし、アクセシビリティ対応などの仕様を確認できる。

vids.new(作成ページ)(外部)
Google Vids の新規作成画面へ直行するURL。Workspaceまたは個人Googleアカウントで動画制作をすぐ始められる。

Google Workspace ブログ(公式発表)(外部)
今回の発表の一次情報。米国での無償提供開始やSlides連携、感情ステアリングを製品責任者が解説。

【参考動画】

【参考記事】

AI avatars in Google Vids are now available for free users(9to5Google)(外部)
無料ユーザーは月10本の生成枠を得て、アバターとVeo動画生成に配分できると報道。まず米国、夏に世界展開。

AI Avatars for Business with Google Vids(Google 公式)(外部)
アバターは実在人物を避けるフィルターで生成され、生成動画にSynthID透かしが埋め込まれると明記。

Add avatars when you convert presentations to Vids(Google Workspace Updates)(外部)
Slides変換時にアバターを差し込める機能の告知。7月1日まで上限緩和、その後は利用上限が適用。

Enhanced AI avatar features and capabilities in Google Vids(Google Workspace Updates)(外部)
既定アバターを23種から53種へ拡張し16言語を追加。6月17日からの全面展開を示す告知。

Google Vids updates include high-quality video generation at no cost and more(blog.google)(外部)
Veo 3.1の無償クリップ生成や、AI Ultraが月最大1,000本のVeo動画を生成できる点を整理した公式記事。

Google Vids、AIアバターと画像から動画生成機能を追加 月間ユーザー100万人突破(内部)
本記事の前史にあたる2025年8月の続報元。月間100万人だった当時から700万人へ、進化の軌跡をたどれる。

【関連記事】

GoogleのAI動画生成「Veo 3.1」発表。音声合成・人物固定で「コントロール性」を強化、Sora 2と差別化(内部)
Vidsのアバターを支える動画生成モデルVeoの解説。SynthID透かしへの言及もあり技術的背景を補える。

NoLang、写真1枚でリアルアバター生成機能を搭載──Mavericksが動画制作の新時代を切り拓く(内部)
日本発のAIアバター動画サービス。Google Vidsと比較できる、国内発の対抗軸として読者の視野を広げる。

Gemini Spark登場:Googleが端末オフでも動くAIエージェントを発表、Antigravity基盤と9億ユーザーが武器(内部)
VidsもGeminiとWorkspace連携の一翼。Googleの生成AI戦略の全体像を掴むための補助線になる。

【編集部後記】

正直に言うと、私がまず気になったのも「で、結局どれくらい使えるの?」でした。私はGoogle AI Proを契約しているので、その目線で調べてみました。公式の表によれば、Proなら動画クリップ(Veo)は月50本まで。アバターやボイスオーバー、Slidesの動画化なども一通り使えます。無料の個人アカウントが「月50クレジット」を機能ごとに少しずつ取り崩していくのに対して、Proはもう少し気兼ねなく試せる枠が用意されている、という印象です。月50本と聞くと多いような少ないような微妙な数字ですが、社内説明や商品紹介を「月に数本」作る使い方なら、十分に足りる体感だと思います。

もっとも、これらの上限は変わりうると公式も明記しています。本格的に使う前に一度のぞいてみるのが確実です。私もこれから、手元のスライドを一本「話す動画」にして、その使い心地をまたお伝えできたらと思います。みなさんがどんな動画を作るのか、ぜひ聞かせてください。

Googleで優先するソースとして追加するボタン
投稿者アバター
TaTsu
『デジタルの窓口』代表。名前の通り、テクノロジーに関するあらゆる相談の”最初の窓口”になることが私の役割です。未来技術がもたらす「期待」と、情報セキュリティという「不安」の両方に寄り添い、誰もが安心して新しい一歩を踏み出せるような道しるべを発信します。 ブロックチェーンやスペーステクノロジーといったワクワクする未来の話から、サイバー攻撃から身を守る実践的な知識まで、幅広くカバー。ハイブリッド異業種交流会『クロストーク』のファウンダーとしての顔も持つ。未来を語り合う場を創っていきたいです。