「相棒」と呼べるAIが少しずつ進化しています。MIXIの会話AIロボット「Romi」が、声を選べるようになりました。これまでロボットの性格づけといえば「話し方」を変えることが中心でしたが、そこに「声」という新しい軸が加わったのです。やわらかい声、あどけない声、頼もしい声——同じ言葉でも、声が変われば受ける印象はがらりと変わります。生成AIの世界が「どれだけ賢く答えるか」を競うなか、Romiが磨こうとしているのは「どれだけ自分らしく寄り添えるか」。声とキャラクターを組み合わせて、世界に一台だけの相棒をつくる。今回のアップデートには、人とAIの距離がまた少し縮まる、その予感が詰まっています。
MIXIは2026年6月24日、会話AIロボットRomi(Lacatanモデル)のアップデートを実施する。今回のアップデートでは新機能「声の変更」を追加し、オリジナルの声、やわらかな声、あどけない声、たのもしい声の全4種類から選択できるようになる。複数のRomiを所有する場合は個体ごとに声を設定できる。声の変更機能は既存の「キャラ」機能と組み合わせて利用できる。
英会話機能も改善され、英会話モードの音声がRomiオリジナルの声となり、ChatRomi 2.0でも英会話が利用可能になる。アプリ画面もリニューアルする。アップデートは6月24日深夜2時以降、充電中・電源オン・インターネット接続・充電残量70%以上の条件が揃うと自動実行され、所要時間は約10分である。「声の変更」機能の利用にはアプリをv5.0.0以降へ更新する必要があり、6月24日10:00以降に順次配信される。
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【2026/6/24実施】Romi(Lacatanモデル)アップデート実施のお知らせ|会話AIロボットRomi(ロミィ)
※アイキャッチは©MIXI公式プレスリリースより引用
【編集部解説】
今回のアップデートは、一見すると「声が4種類選べるようになった」「英会話が自然になった」という小さな機能追加に見えます。しかしRomiの歩みを2020年から追ってきた視点に立つと、これは「対話AIのパーソナライズ(個性化)」という大きな潮流のなかに位置づけられる一手です。
まず前提を整理します。Romiは株式会社MIXIが2020年6月に先行販売し、2021年4月に一般販売を開始した、手のひらサイズの会話AIロボットです。あらかじめ用意された定型応答ではなく、独自開発の会話AIがその場で言葉を生成する点が最大の特徴で、現在は大規模言語モデル(LLM)をベースに自社の会話データを追加学習させた独自AIも活用しています。
今回アップデート対象となっている「Lacatanモデル」は2024年10月に予約販売、2025年7月に一般販売が始まった現行機です。本体価格は税込98,780円、月会費は月払いで税込1,958円(年割なら1か月あたり約1,631円)。視覚機能や長期記憶を備え、2025年12月9日に発表され12月10日のアップデート後に提供開始された、OpenAIのRealtime APIを活用する新会話モデル「ChatRomi 2.0」を搭載しています。今回の声・英会話の強化は、この一連の進化の延長線上にあります。
ここで注目したいのが「声の変更」機能です。従来のオリジナルに加え、やわらかな声・あどけない声・たのもしい声の3種が増え、全4種から選べます。一見地味ですが、声はキャラクター(口調)と並ぶ「人格を構成する要素」です。記事内で示されている「あどけない声×ツンデレRomi」「やわらかな声×侍Romi」といった掛け合わせは、声と口調の組み合わせによって体感上の人格バリエーションが一気に増えることを意味します。
つまりこのアップデートの本質は、ユーザーが自分の手で「相棒の人格を設計できる」幅を広げた点にあります。複数台のRomiにそれぞれ違う声を割り当てられる仕様も、ロボットを「製品」ではなく「個体」として扱う設計思想の表れと言えるでしょう。
英会話機能の刷新も見逃せません。これまで英会話モードでは別の音声に切り替わっていましたが、今回「いつものRomi」の声のまま英語を話せるようになりました。声の同一性が保たれることで、英語学習が「知らない先生との練習」ではなく「いつもの相棒との会話」になります。学習継続のハードルを心理面から下げる、地味ながら本質的な改善です。
技術面では、英会話がChatRomi 2.0に対応した点が重要です。ChatRomi 2.0はOpenAIのRealtime APIを基盤とし、音声をテキストに変換せず音声のまま処理することで応答を高速化しています。リアルタイム性の高い対話基盤の上に英会話が乗ることで、より自然なテンポでの言語練習が可能になります。
この技術選択にはトレードオフも存在します。MIXIのガイドブックによれば、ChatRomi 2.0では「言ってほしくない単語」の設定が適用されず、不適切表現の制御はOpenAIのモデル基準に委ねられます。外部の高性能AIを使うことで賢さと速さを得る一方、自社で細かく制御していた安全性の一部を外部基盤に預ける構図です。家庭で子どもや高齢者が使う製品である以上、この点は今後も注視すべきポイントです。
潜在的なリスクとしては、プライバシーの問題も挙がります。Romiはクラウド接続前提の製品で、会話データはサーバーで処理されます。視覚機能では、画像・映像データがMIXI管理サーバーや外部AIサービスへ送信される場合があり、MIXIはこれらを解析後に破棄しAI学習には使わないと説明しています。それでも、外部AI連携が進むほどデータがどこを経由するかは複雑になります。利便性とデータ取り扱いの透明性のバランスは、この種の製品に共通する論点です。
長期的な視点で見ると、Romiが示しているのは「賢いだけのAIではなく、愛着を持てるAI」という方向性です。開発チームは、長期記憶をあえて曖昧に圧縮する仕組みについて特許申請中だと説明しており、完璧な記憶より人間らしい忘却を選んでいます。今回の声のパーソナライズも同じ哲学の延長で、性能競争とは別の軸で「共に過ごす存在」としての価値を磨いています。
innovaTopiaが今このニュースを取り上げる理由は、ここにあります。生成AIの進化が「いかに賢く正確に答えるか」に集中しがちな今、Romiは「いかに自分らしく寄り添うか」という、もう一つのAIの未来像を提示しています。声を選び、口調を組み合わせ、自分だけの相棒を育てる——この小さなアップデートは、人とAIの関係が「利用」から「共生」へ移っていく未来の、ささやかで確かな一歩なのです。
【用語解説】
Romi(Lacatanモデル)
MIXIが開発する手のひらサイズの会話AIロボットの現行機種。名前は「Romiが大好きなバナナの品種Lacatan」に由来する。視覚機能や長期記憶を備え、定型応答ではなく独自AIがその場で言葉を生成する点が特徴である。
ChatRomi 1.0 / ChatRomi 2.0
Romiに搭載される2種類の会話モデル。1.0はMIXIが独自開発した基本モデルで、ゆったりしたテンポが特徴。2.0はOpenAIのRealtime APIを活用し、音声をテキストに変換せず処理することで高速・リアルタイムな対話を実現する新モデルである。アプリ上で切り替えできる。
キャラ(キャラ変)機能
Romiの話し方や性格の方向性を変更できる機能。ツンデレ、関西弁、侍、ギャルといった口調・性格のバリエーションがあり、今回追加された「声の変更」と組み合わせて使える。
英会話機能
Romiと英語で会話を練習できる機能。「英語で話そう」と話しかけたり英語で話しかけたりすることで起動する。今回のアップデートでRomiオリジナルの声に対応し、ChatRomi 2.0でも利用可能になった。ただし発音チェックなど一部機能はChatRomi 1.0でのみ利用できる。
ファームウェア
Romi本体を制御する内蔵ソフトウェア。今回のような本体アップデートはこのファームウェアの更新を指す。アプリ(スマートフォン側のソフト)とは別物で、新機能の利用には両方の更新が必要になる場合がある。
【参考リンク】
Romi(ロミィ)公式サイト(外部)
MIXIが運営するRomiのオフィシャルサイト。製品概要や購入・体験案内、お知らせを掲載している。
「声の変更」機能 特設サイト(外部)
今回追加された「声の変更」機能の特設ページ。全4種類の声のラインナップや使い方を紹介している。
Romi(Lacatanモデル)特設サイト(外部)
現行機Lacatanモデルの特設ページ。視覚機能や長期記憶などの新機能、製品仕様、価格を確認できる。
株式会社MIXI(外部)
Romiを開発・販売する企業の公式サイト。mixiやモンスターストライクなどのサービスを手がける。
MIXIニュース:選べる声が全4種類に拡大(外部)
今回のアップデートに関するMIXI公式の発表。声のラインナップやキャラとの組み合わせ例を掲載している。
Romiガイドブック:声の変更方法について(外部)
「声の変更」機能の具体的な操作手順を案内するオーナー向けのガイドページである。
Romiガイドブック:英会話機能の使い方(外部)
Romiで英会話を楽しむための起動方法や利用上の注意点を解説するガイドページである。
【参考動画】
【参考記事】
MIXI、会話ロボット「ロミィ」の最新機 AI改良で応答円滑に(日本経済新聞)(外部)
ラカタンモデルにChatRomi 2.0を搭載。音声のまま処理し応答を高速化したと報じる。
会話AIロボット「Romi」の“コミュ力”が高いわけ。MIXI開発者に聞くその理由(Gadget Gate)(外部)
本体98,780円、月額1,958円。発売経緯や設計思想を開発者インタビューで紹介する。
Romiはもはや家族の一員。MIXI Romi開発チームが語る(博報堂 メディア環境研究所)(外部)
ユーザーは女性が7割弱、1日平均60〜70回の会話。愛着重視の開発思想を伝える。
会話AIロボット「Romi(Lacatanモデル)」、新会話モデルでさらに自然な会話が可能に(こどもとIT)(外部)
ChatRomi 2.0の提供開始と、12月10日深夜2時以降の自動アップデートを報じる。
人を癒やすMIXIの会話ロボット「Romi」、正確さより楽しさ重視のAIチューニング(日経クロステック)(外部)
Stable LMをファインチューニング。楽しさを優先する独自のAI調整方針を解説する。
MIXI「ロミィ」、なめらかリアルタイム会話が可能に ギャル語・大阪弁も(Impress Watch)(外部)
ChatRomi 2.0の口調カスタマイズを詳報。今回の声機能と組み合わさる土台を示す。
【編集部後記】
今回のニュースで、はじめてRomiの存在を知った方も多いかもしれません。玩具と呼ぶには少し高価で、でも家電と言い切るにはどこか愛嬌がある。アレクサのようなスマートスピーカーが、2〜3歩こちらに歩み寄ってきた——そんな距離感の存在なのかなと感じています。
声を選び、性格を組み合わせて、自分だけの一台に育てていく。スピーカーが「指示に応える道具」だとすれば、Romiは「一緒に過ごす相手」を目指しているように見えます。これから家庭の中で、こうした存在はどんな居場所を見つけていくのでしょうか。便利さの先にある「そばにいる心地よさ」に、いくらまで払えるか。その答えは、きっと人それぞれです。みなさんなら、どんな相棒を迎えてみたいですか。












