Adobe「Agentic Sites」構想|AIがWebページを1秒台で再構成、固定ページから変わるWeb体験

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Webサイトは、誰に対しても同じページを見せるものではなくなるかもしれません。AdobeのPrincipal Scientist、Carlos Sanchez氏による技術デモでは、AIがユーザーの意図に応じてページ構成そのものをリアルタイムで組み替えました。固定ページ中心だったWeb体験は、どこまで変わるのでしょうか。


2026年8月30日、AdobeのPrincipal Scientist、Carlos Sanchez氏は、LLMを用いてユーザーの意図や閲覧行動に応じてWebページをリアルタイムに再構成する「Agentic Sites」の技術デモを公開した。

Cerebrasを使った評価では平均1.1秒の生成時間を記録し、Gemma 4を使ったライブデモではページ生成を1.64秒で完了。既存サイトをRAGの情報源として活用し、商品一覧やナビゲーションなどのブロックを動的に組み替える。一方、一般提供時期や料金は明らかになっておらず、大規模運用時の推論コストも課題として残る。

From: 文献リンクAgentic Sitesに関するBigGo Financeの記事

【編集部解説】

今回の実演で重要なのは、AIが文章を書くだけではなく、Webページを構成する単位そのものをユーザーの意図に応じて選び直していることです。Carlos Sanchez氏のデモでは、閲覧ページや滞在時間などからユーザーの状態を推定し、ヒーロー領域、商品、記事、ナビゲーションといったブロックを動的に組み替えています。

従来のWebサイトでもパーソナライズは可能です。例えばAdobe Commerceでは、Real-Time CDPのオーディエンス情報などを利用して動的コンテンツやプロモーションを出し分ける仕組みが用意されています。これに対して今回のAgentic Sitesのデモでは、さらにユーザーの意図をLLMへの入力として、表示するブロックやページ構成をその場で決める方向が示されています。

つまりWeb制作で事前に決める対象が、「完成したページ」から「AIが使えるコンテンツとブロック、そして組み立てる際のルール」へ一部移る可能性があります。これは今回の実演から読み取れる設計上の変化です。

ただし、ページ全体をAIに自由生成させているわけではありません。Sanchez氏は既存サイト全体をRAGの情報源として利用し、その内容に基づいて特定のブロックを生成・配置する構成を説明しています。ブランドガイドラインから外れた表現や、商品情報のハルシネーションを抑えることが目的です。

この考え方はAEMの現在の構成とも相性があります。Adobeの公式資料では、Edge Delivery ServicesはAEMの一部として提供され、HTML、CSS、JavaScriptを使った構成や、エッジ側での高速配信を前提としています。

そのため今回のデモは、AIに「サイトを一から作らせる」というより、企業側が管理する既存コンテンツを材料に、表示するページをリアルタイムで再構成する仕組みと考えた方が実態に近いでしょう。

この仕組みを成立させるうえで重要になるのが推論速度です。Cerebrasを使った評価では平均1.1秒が記録されました。さらに、Gemma 4をCerebras上で動かしたライブデモでは、検索からページ生成までを1.64秒で完了し、約2,300トークン/秒の推論速度が示されています。

Gemma 4はGoogle DeepMindが2026年4月に発表したオープンモデル群で、Googleはエージェント用途や高い「intelligence-per-parameter」を特徴として挙げています。またCerebrasはGemma 4 31Bについて、同社の推論基盤で1,800トークン/秒超を記録したと6月に発表しています。

ポイントは、最大級のモデルを使うことではありません。Sanchez氏は、文章生成やブロック配置では巨大モデルが必須ではないとの考えを示しており、デモではPromptfooを使ってモデルや推論プロバイダーを速度と精度の両面から評価しています。

Webページという待ち時間に敏感なインターフェースでは、「最も賢いモデル」よりも、必要な精度を満たしながら短時間で返せるモデルを選ぶという設計が重要になってきます。

一方で、今回示されたAgentic Sitesを、すでにAdobe Experience Managerで一般提供されている完成機能として捉えるのは早計です。今回確認したAdobeのAEM公式資料ではEdge Delivery Services自体は正式に提供されていますが、Sanchez氏が実演したAgentic Sitesについて、一般提供時期や利用料金、対応プランなどは示されていません。

さらに、ユーザー操作に合わせてLLMを呼び出すほど推論回数は増えます。Sanchez氏の説明でも1リクエストあたりの具体的な費用は示されておらず、大規模なECサイトなどでユーザーごとにページを生成した場合の採算性はまだ判断できません。

それでも今回の実演が示した変化は明確です。これまでWebサイトは「企業がページを作り、ユーザーがそこから目的の情報を探す」ことを前提としていました。Agentic Sitesが示す方向では、ユーザーが目的を示すと、サイト側が必要な情報を選び、その人向けのページをその場で組み立てます。

固定されたページを大量に制作するWebから、コンテンツを部品として管理し、AIが利用者ごとにインターフェースを構成するWebへ。今回のAdobeのデモは、その変化が少なくとも技術実演として動作する段階に入っていることを示しています。

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今回使われたGemma 4は、Google DeepMindが2026年4月に公開したオープンモデル群です。モデルそのものの特徴やApache 2.0へのライセンス変更については、こちらの記事で詳しく解説しています。

【編集部後記】

AIが文章や画像を作るだけでなく、Webサイトそのものを組み替えるところまで来たのは面白いですね。欲しい情報を探して何ページも移動する手間が減るなら、かなり便利になりそうです。一方で、人によって表示されるページが違うとなると、「同じサイトを見る」という感覚も変わっていくのでしょうか。
個人的には、自分向けに最適化されすぎて、思いがけない情報と出会う機会が減らないかも少し気になります。それでも、Webサイトが固定されたものではなくなるという変化はかなり大きそうです。
数年後には、今のWebサイトの形のほうが古く感じられているのかもしれません。


【参考リンク】

Adobe Experience Manager(外部)
Adobeの企業向けコンテンツ管理・デジタル体験プラットフォーム。Webサイトやデジタルコンテンツの制作、管理、配信を支援する製品。

Adobe Experience Manager Edge Delivery Services(外部)
高速なWebサイト構築・配信を目的としたEdge Delivery Servicesの公式ドキュメント。AEMとの関係やアーキテクチャを確認できる。

Google Gemma(外部)
Googleのオープンモデル「Gemma」シリーズの開発者向け公式ページ。モデル、ドキュメント、利用方法などを掲載。

Cerebras Systems(外部)
ウェハースケールプロセッサと高速AI推論基盤を開発するCerebras Systemsの公式サイト。

Promptfoo(外部)
LLMアプリの評価やレッドチーミングに利用できるオープンソースツールの公式サイト。

【参考記事】

AEM Sites and Edge Delivery Services|Adobe Experience League(外部)
AEM SitesとEdge Delivery Servicesの関係、Webサイトの開発・公開方式についてAdobeが解説する公式ドキュメント。

Gemma 4: Byte for byte, the most capable open models|Google(外部)
Google DeepMindによるGemma 4の公式発表。モデルの設計思想、エージェント用途、Apache 2.0ライセンスなどを解説。

Gemma 4 on Cerebras—The Fastest Inference is Now Multimodal|Cerebras(外部)
Gemma 4 31BをCerebras Inferenceで実行した際の推論速度やリアルタイム用途について紹介する公式記事。

Getting started|Promptfoo(外部)
複数のモデルやプロンプトを同じテスト条件で比較・評価するPromptfooの基本的な利用方法を説明する公式ドキュメント。

【用語解説】

Agentic Sites(エージェント型サイト)
Carlos Sanchez氏の実演で示された、ユーザーの検索内容や閲覧行動などを基に、AIがWebページの構成を動的に決める考え方。現時点でAdobeの一般提供製品名として確認できるものではなく、本記事では技術デモ・コンセプトとして扱う。

Adobe Experience Manager(AEM)
Adobeが提供する企業向けコンテンツ管理・デジタル体験管理プラットフォーム。Webサイトのコンテンツ制作、管理、配信などに利用される。

Edge Delivery Services
Adobe Experience Managerの一部として提供されるWebコンテンツ配信基盤。コンテンツの作成・公開と高速なWeb配信を重視した構成で、AEM Sitesとの併用も可能。

RAG(Retrieval-Augmented Generation/検索拡張生成)
LLMが回答やコンテンツを生成する際、外部の文書やデータを検索して、その情報を参照させる仕組み。今回のデモでは既存サイトの情報を生成の材料として利用し、モデルの記憶だけに依存しない構成が示されている。

Gemma 4
Google DeepMindが2026年4月2日に発表したオープンモデル群。高度な推論やエージェント型ワークフローを想定して設計され、Apache 2.0ライセンスで公開されている。

Cerebras Inference
Cerebras Systemsが提供するAI推論基盤。同社によればGemma 4 31Bでは1,800トークン/秒を超える推論速度を記録しており、高速なインタラクティブAI処理を用途の一つとしている。

Promptfoo
LLMアプリケーションの出力を評価・比較するためのオープンソースツール。複数モデルやプロンプトを同じテスト条件で実行し、精度や期待する出力への適合性などを検証できる。

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乗杉 海
SF小説やゲームカルチャーをきっかけに、エンターテインメントとテクノロジーが交わる領域を探究しているライターです。 SF作品が描く未来社会や、ビデオゲームが生み出すメタフィクション的な世界観に刺激を受けてきました。現在は、AI生成コンテンツやVR/AR、インタラクティブメディアの進化といったテーマを幅広く取り上げています。 デジタルエンターテインメントの未来が、人の認知や感情にどのように働きかけるのかを分析しながら、テクノロジーが切り開く新しい可能性を追いかけています。

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